リレー小説
序章『ある研究者の叫び』
記:文矢さん
少し、話をしようじゃないか。
科学というのはどういう物だと思う? 生活を良くする物。世界の全てを作っている物。色々な意見がある。
それでは、それについての真実を教えようか。
科学とは、「人を滅ぼす物」だ。それ以外の何ものでもないと私は思う。他に的を射た答えがあると思うか?
それではそろそろ幕を開けよう。一秒たりとも見逃さないように――
怪物 序章「ある研究者の叫び」
いつもは気にしない心臓の音が、今はハッキリと聞こえた。集中しているからであろうか。それとも俺が死んでもおかしくない
状況下にいるからであろうか。多分、その両方だ。
ここは研究所だ。都会からは隔離されている研究所。ここで、俺は日夜働いていた。同僚と一緒に。ずっと。そして、その研究の
成果はとんでもないものだった。その研究の成果は目の前にいる。「怪物」だ。
目の前にいる「怪物」を睨みつけた。睨みつけても、状況は何も変わらないのに。おかしな事だ。だが、一分間程俺は奴を
睨み続けた。頬を冷や汗が伝った。
周りの光景が、閉じていくように感じた。この世界に存在しているのはあの「怪物」と俺の二つだけのようにも感じた。
時間さえも、経っていないかのように感じた。
先に動いたのは、「怪物」だった。奴の叫び声が頭に響き、その間に俺の体に激痛が走った。床に俺の血が大量に垂れたのを
確認できた。やばい。
手に持っている熱戦銃を奴へと向ける。だが、それも無駄な行為だった。向けた瞬間、奴は俺の視界から消え去った。
何処にいるのかも分からない内に、今度は背中に激痛が走った。
意識が朦朧としてくる。奴は何処にいるのか。俺の周りの何処にいるのか。何もかもが分からなかった。目で周りを見るのすら、
痛みを感じてきた。痛い。痛い。痛い。
怪物の鳴き声が聞こえてくる。「ガオー」とかそんな優しい鳴き声じゃない。人の悲鳴よりも何倍もタチの悪い鳴き声だ。
痛みを感じる中、俺はその鳴き声の方向へと熱戦銃を向けて引き金を引いた。だが、怪物の叫び声は聞こえなかった。
――外した。いや、外してしまった。
そして、また激痛が走った。怪物に、やられた。
幾つもの出来事が頭の中を駆け巡った。怪物。龍。特殊。熱戦銃。同僚。死。お袋。血。赤。痛み。嘘。開発。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
目から涙がこぼれた。俺がこんなものを作らなければ良かったんだ。俺がこんなのを作るから、こんな事になってしまったんだ。
「ああああああ!」
わけ分からない事を叫びながら、熱戦銃を撃ちまくった。もう体中から力が抜けていっている途中だった。もう死んでいく途中だった。
でも、最後の力を振り絞って撃ちまくった。
怪物に当たるわけがない。そう思いながらも、撃ちまくった。研究所が壊れていくのが分かった。この研究所の思い出も
俺の頭の中を駆け巡った。
コンクリートが俺の体に当たった。痛さすら感じない。俺が死ぬ事は間違いないだろう。生きる方法なんてこの状況だともう無い。
俺は倒れていった。血がダボダボと垂れていく――
第一章「真紅の血液」 | 抹消さん | 第二章「第二のアルティメットシイング」 | ケイジさん |
第三章「傷跡」 | すずらんさん | 第四章「顔の形」 | ミサイル研究所さん |
第五章「焦燥」 | じおす | 第六章「医師」 | 文矢さん |
第七章「天気予報」 | 抹消さん | 第八章「謎の団体」 | ケイジさん |
第九章「暴走」 | すずらんさん | 第十章「幸運」 | じおす |
第十一章「後悔」 | 文矢さん | 第十二章「コードネーム・ケーブル」 | 抹消さん |
第十三章「もう戻れない」 | ケイジさん | 第十四章「未来への架け橋」 | ミサイル研究所さん |
第十五章「潜入」 | じおす | 第十六章「近藤さん」 | 文矢さん |
第十七章「クロックタワー」 | 抹消さん | 第十八章「協力者」 | ケイジさん |
第十九章「精巧な罠」 | ミサイル研究所さん | 第二十章「能力」 | 文矢さん |
第二十一章「監獄」 | 抹消さん | 第二十二章「襲撃」 | ケイジさん |
第二十三章「鈎十字の悪夢」 | ミサイル研究所さん | 第二十四章「犬さんの実力」 | じおす |
第二十五章「能力2」 | 文矢さん | 第二十六章「人をさばかば」 | 抹消さん |
第二十七章「快感」 | ケイジさん | 第二十八章「疑問」 | ミサイル研究所さん |
第二十九章「悪夢」 | 文矢さん | 第三十章「アマデウス」 | 抹消さん |
第三十一章「作戦開始」 | ミサイル研究所さん | 第三十二章「神よ神」 | じおす |
第三十三章「終わりと始まり」 | 文矢さん | 第三十四章「本当の始まり」 | 抹消さん |
第三十五章「カオス」 | ケイジさん | 第三十六章「カオスの渦」 | ミサイル研究所さん |
第三十七章「取乱」 | じおす | 第三十八章「果物酒」 | 文矢さん |
第三十九章「フレイム・オートライター」 | 抹消さん | 第四十章「ミレニアム」 | ケイジさん |
第四十一章「再戦」 | ミサイル研究所さん | 第四十ニ章「失敗作」 | じおす |
第四十三章「哲也」 | 文矢さん | 第四十四章「冷戦時代」 | 抹消さん |
第四十五章「暗躍の影」 | ミサイル研究所さん | 第四十六章「勃発濃厚」 | じおす |
第四十七章「ルーツオブアルティメットシイング」」 | 抹消さん | 第四十八章「瑞西【スイス】」 | ケイジさん |
第四十九章「AGE OF EMPIRE」 | ミサイル研究所さん | 第五十章 | 作者名 |