第十一章「後悔」
(記:文矢さん)
いつの間にか、また研究所の跡地に来ていた。どうしてだろう。嫌な思い出が思い出す筈なのに。
どうしてこんな所にまたやって来るのだろう。そう、疑問に思った。
頭の中には、あの少女の眼が焼きついていた。僕が悪者に思えた。漫画やドラマとかでの悪の組織の悪者。
人々を助けもせず、逃げた。最悪だ。自分に対する嫌悪感が広がる。
あの街は今頃、どうなっているのであろうか。暴れているのは俺達がこの研究所で作ったほぼ完成品の
「アルティメットシイング」であろう。兵器としては最高の「アルティメットシイング」だ。
感情など無く、ただ人を殺しまくる殺戮兵器。体力は尽きないようにできている。その「アルティメットシイング」を完成品として
僕達は裏の世界で発表した。だが、実はそれは偽りだ。その「アルティメットシイング」は制御が効かない。止める方法などない。
この研究所で抑える為に使っていた檻もあいつの前ではほとんど意味が無い。あいつが攻撃を続ければ、
たった一週間で壊れてしまうからだ。あんなのを完成品などいえない。
また嫌悪感が広がっていく。僕は最低だ。最低だ。あいつらと同じで、最低だ。体が重くなったような気がした。
僕は無意識に研究所の破片の後へと歩いて行った。何も発見など無い。そんな事はとっくのとうに分かっている。
ただ、少し何かを探してみたいだけ。
「アルティメットシイング」の檻があった所には、一つ死体が転がっていた。銃がそいつの近くに落ちているという事は
こいつがこの研究所の中で撃ちまくったのだろう。こいつが一番始めに来たように見えた。顔がグチャグチャだったので
誰の死体か判断できなかった。
次に、研究室。そこには死体が三つ転がっていた。多分、研究を始めようと入ってきた時、奴にやられたのであろう。
こいつらも顔がグチャグチャで誰か分からない。
そして研究所の廊下にも十人分、死体が転がっていた。そして、僕とあいつが襲われたのが玄関。研究所に入ろうとした瞬間、
やられたのだ。幸い、僕はかすり傷ですんだがあいつは……
余計、気分が暗くなった。ここに戻ってくるんじゃなかった。
結局、あいつも「アルティメットシイング」に襲われて死んだに違いない。この研究所での生き残りは僕だけだ。
僕が、全ての罪を償わなければならない。
気分はもちろん、憂鬱だった。