第二十四章
「犬さんの
実力」
(記:じおす)
「グオオオオオオオオオオ!」
こいつは、一体――? 犬さんは、犬(犬ではない。確実に。狼にしてもでかすぎる)
に変身した。ふいに、俺の体が宙に舞った。
『バリバリバリ!』
奴さんの頭がすぐに天井につき、いやもう既に突き破っていた。コンクリートのかけらやら、支柱の残骸やらが降ってきた。
「というか、ここにいたら危なくない――?」
犬さんはもう一度吠えた。今度は、低気味に。ダッシュで右側の窪みにもぐりこんだ。その途端、ズシン。
危うく踏み潰される所だったぜ――とにかく、ここは奴さんに任せるしかないだろう。まだ自分の能力が分からない。
能力の使える奴はいいが、俺みたいに使えない奴はただの非力な一般人だ。あっという間に銃の餌食になるだろう。
『撃て、撃て〜〜〜〜〜!』
上官らしき奴が命令している。目だし帽で、顔はよく分からないが。
ガガガガガガガガガガガガガガ
十人位で、一斉に射撃してきやがった。畜生。ここにまで火の粉が飛んできたら厄介だぞ。
しかし――犬さんには効いていなかった。確かに銃弾は当たっているが。
『グオッ!』
犬さんはまず鋭く尖った爪をガリガリと砥いだ。
もしもこの時、襲撃者が逃げ出していれば、即死は避けられたに違いない。
『瞬速爪雷』
「ビッシャァァァァァ!」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。だが――遠くに見えたのは、赤い
塊だけだった。死んだのだ。大型の自動拳銃がポッキーなみに細切れになっていた。
「つ、強ぇぇ……」
俺の能力覚醒が、早々に来ることを改めて実感した。