第二十七章「快感」
(記:ケイジさん)
あれ……? そうだ、俺は能力を使えるようになってあの犬にぶっとばされて気絶してそれから……?何だっけ。
まあ、そんな事はどうでもいい。俺は念願の能力を使えるようになったんだ。あの天気さんに見せてやりたいぜ。
「しかし……、わけがわからねえ」
とりあえず状況を整理しよう。俺は今この牢屋の中にいる。そして犬さんはいない。そして鍵はぶっ壊れてる。
「……外に出てみるか」
理由は無い。ただ、そうしたかったからするだけだ。
牢屋内は、血の臭いが充満していた。だが、俺はこんな臭いで吐きはしない。むしろ、この臭いで殺したときの事を
思い出し快感に浸る。
「裁かれる人間じゃ無い……いや、……俺は人間じゃない」
そう、俺は人間ではない。強いて言うなら、殺人マシーンと化した人間か、怪物と化した人間だな。ま、どちらでもいいけど。
俺はしばらくして外に出た。ふう、空気がうまい。
「kkl;wにをぴvんうぃp;lふぃふじこッぢぴぴvpヴィr有為うおグ!」
よく分からんが敵兵らしき男が変な声を上げていた。たぶん、逃げてきて隠れてたのだろう。
俺はそこいらに落ちていたナイフを何も考えず、ただ拾った。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
敵兵は殺される事が分かって、絶叫する。よく見ると、ナイフを持っていた。だが、持っている手は震えて今にも落としそうだ。
敵兵が叫ぶ。
「貴様、人を殺したら裁かれるんだぞ!! 神にだ! 神の裁きだ! この人間のくず!! 貴様、絶対に殺されるぞ!!
神に! 神に! 神にィィィィィ!!」
こいつ、誰かと同じような事を言いやがる。そうか、犬だ。あの犬だ。馬鹿馬鹿しい。神などいない。あの犬も馬鹿だ。
大体、貴様も人を殺したことがあるだろう。
そして俺はナイフを構える。俺はくずでもいい。
「狙いは心臓」
敵兵はナイフを落とす。
「ウワアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「死ねよ」
その瞬間だった。
「ぐわっ!」
俺の振り上げたナイフに電撃が落ちた。
「何だ一体……」
だが、考える暇は彼には無かった。
「瞬速爪雷」
「この声は……」
その瞬間、彼の体の赤いものが再び輝きだす。
「お、これはさっきの能力か!」
数秒後……
「ぐ、ぐうう、ぐわあああああああああ! くっ……、速い……」
そこには、倒れたジェルミーと、天気さんこと天野照子と、犬さんことバベンスキーがいた。