第四十六章
「勃発濃厚」
(記:じおす)
それにしても、なぜハワードは完成方法を知っていたのだろうか……。
元々この不完全人間戦闘兵器『アルティメットシイング』は、我々アメリカが第二次世界大戦終結のための
最終兵器だったのだ。原子爆弾を投下しても、日本が降伏しなければ、9月1日に東京の6000メートルの上空
から降下させるつもりだった(しかし、これで降伏したのは本当に正しい選択だった。もし降伏しなければ、
今のジャパンは無かったし、昔のように平和に貿易摩擦の問題で揉めることもなかったに違いないが)。
平和――そう、大分昔のような気がした。
まあ、それはともかく、だ。
製造方法なら、どこの国でもスパイが手に入れただろうに、なぜ現在世界二カ国しか生産できていないのか
?それにはこんな訳がある。実は、アルティメットシイングを動かすには、ある『秘密』の端子をつなぐ必要が
あるのだ。それは――
『どうかされましたか?』
部下が心配そうに院長の顔を覗き込んでいた。
あわてて返事を返す。
「ああ、大丈夫だ。ちょっと最近寝て無くてな、ついうとうとと」
「えぇ? 前は『サソリ珠を飲んでからグッスリ眠れるようになった』って言ってたじゃないですか。
なのにどうしてまた睡眠不足になったんですか?」
院長は少しばかり焦った。そうだ。私はなんとしてでも独逸に勝たねばならないのだ。――ただし、これは立て前の
考えであり、彼自身は正直なぜ人を救うはずの自分が人を殺すような実験を重ねて、直来る戦争の片棒を
かつがなければならないのか。
「ああ、冗談だよ冗談。もうすぐ妻の誕生日でね。プレゼントについて考えてたんだよ」
「アハハ!なぁ〜んだ、そんな事なら早く言えばいいじゃないですか! で、いつなんですか?それは?」
しつこい。馴れ馴れしい。向こうへ行け!
「……だから、一人にしてくれないか」
「わ、分かりました……」
いささかこの語調にはびっくりしたらしく、部屋から出て行った。
やれやれ。さて、現在の稼働状況でも確認するか。
その頃。 ここはその、独逸だった。封じられた軍備を三度復活させてしまった、ファシズム国家だった。
総統の誕生――ハヒル・ヒトラーが復活したのだ。
『数はどうだ?』
「ハッ!既に七百を超えております、総統!」
『我々が進出するのも近い……!』