第四十八章
「瑞西【スイス】」
(記:ケイジさん)
ここは独逸である。
そして、その独逸のある研究所。ここでは、もちろん「兵器」が開発されていた。そして、ここにも悩む人間が一人……
「所長、こいつらもう2000人こえましたぜ。これならもう、速攻でアメリカなんか……」
「五月蠅い! 黙っていろ!」
彼は、この言葉に驚きそれ以上声をかけることはなかった。
「何故だ。何故私はこんなに悩んでいるのだ。「兵器」の製造は好調で、わが国独逸も全ての面で潤っていて、私自身も裕福な
生活を送っている。私は、喜ぶべきではないのだろうか」
彼の頭の中でいろいろな考えが際限なく放出される。私はどうすればいいんだ? 喜べばいいのか? 苦しまないといけないのか?
私にはわからない。
所長は頭を抱え込み、さらに考え続けている。自分はどうすればいいのかを。解けるはずの無い問題を。「兵器」を作るより難しい問題を。
考えている間にも、「兵器」は生み出されていく。
「くそっ!」
ここで思いっきり所長は叫んだ。
「すまんが、君達全員この部屋から立ち去ってくれないか?」
そして、誰もいなくなったのを確認すると、おもむろに喋りだした。
「この「兵器」を作り上げる中で一番重要かつ難解な部分を担当し成功したのは私…… 逆に私さえいなければ「兵器」は
完成しなかったことになるが言っ……いや、それでは、アメリカに対抗できなくなり、負けるか。そもそも、アメリカと独逸が今潤っているのは、
自分達の技術を他の国に分けるとたからだ。「兵器」のことぐらいなら、どこの国もほぼ知っている。発展途上国の末端の様な国でも
噂ぐらいはしたことがあるだろう。」
さらに所長は続ける。
「そして、先進国は「兵器」欲しさにそれに釣られてやって来た。アメリカ、独逸、両方が提示した条件、「この国を保護せよ」という条件にも
簡単にサインした。だが、両国とも「端子」の部分だけは絶対に教えず、他の国は「兵器」を完成させてはいない」
「だが……」
所長がさらに続けようとすると、自動ドアから男が入ってきて、語り始めた。
「だが、この条件を飲まなかった国がある。それはスイス。スイスは世界で最も近代的で高度な武装を誇る軍の一つで、
さらに永世中立を宣言した国であるから、条件を飲まなかったのは最初は何も思わなかった。だが、良く考えるとあの「兵器」には
何も通じないそしてスイスも馬鹿ではない。そこに恐ろしい何かを感じた……」
そこまで話すとその男は口を閉じた。
当然、所長は怒った。そして、後ろを振り向いたが、そこで彼の言葉は止まってしまった。
「……君か」
こいつは、そうだな。私が唯一信頼できる人間とでも言っておこう。
「こんにちは、コールさん」
「所長と呼びたまえ」
「すいません、所長」
二人は、黙ってしまった。その静寂は、何時間も続くかのように思われた。だが。
字で表すことが出来ない様な、そんなとてつもなく巨大な爆発が起こった。
「やはり……スイス!」
コールは、それを確信したのだった。