COLORS



「あ〜もう、遅くなっちゃったな〜…」









第1話*白い月-前編-





ふと空を見上げて、虎徹勇音はぼつりと呟いた。

頭上には満天の星がこうこうと輝いて、その光が誰もいない夜道をほのかに照らしている。




先ほどまで"女性死神協会"の定例会があった。


メンバーは隊長・副隊長、席官クラスの女性死神で、会の目的はなかなか交流の持つことの少ない女性死神同士の親睦を図る、というものだけれど、それは建前。


要は、「女同士でぱーっと遊んじゃおう!!」というのが会の主な主旨だ。


女の死神というのは、男に比べて圧倒的に数が少ない。


席官以上となればその実力は皆の認めるところではあるが、やはり少数派なので、何かと苦労することも多い。


それに、女性死神ならではの悩み等もある。


また勇音のように"副隊長"ともなれば、配下の隊員に悩みを打ち明けるワケにもいかないし、かといって、隊長に甘えるのも吝かではない。


そうなると、頼れるのは同じ立場の女性死神…になるのだが、お互い仕事が忙しいこともあって、なかなか他の隊の死神と仲良くなる機会に恵まれなかった。


しかし、松本乱菊の計らいで半ば強引に会が発足し、なんだかんだと月に2〜3回、会合がもたれるようになった。


始めは何を話したものかとお互いギクシャクしていたが、誰に対しても屈託のない乱菊や、無邪気なやちるのおかげで今は皆、集まれば和気藹々という雰囲気になっており、勇音は会合の日が楽しみなくらいになっていた。



そして今日は食事会と称した飲み会。


勇音は決して酒に弱い方ではないが、好き、というほどでもないので、いつもどおり世間話に興じながら雰囲気を楽しんでいた。



■□■□■


「ねぇねぇ、勇音はいいな〜って思う男いないのぉ〜〜???」


「はぁ?」


がば、と肩に腕を回され声をした方に顔を向けると、至近距離に松本乱菊の顔があった。


目元がほのかに赤く染まり、蒼い瞳が魅惑的に揺らめいて、勇音を見つめる。


その風情は女である勇音ですら、いささかドキリとしてしまうくらい色っぽい。



「誰か意中の男、いるんじゃないの〜〜???ねぇねぇ、お姉さんに吐いちゃいなさ〜い」

「え……そんな人、いませんって」

「じゃあさぁ、いいな〜〜って思う男くらいいるでしょ〜???勇音ってどんな男が好みなわけ?ね、教えて〜〜お・ね・が・いvvv」

「あ、あの………/////」



酔っている。明らかに酔っている。


あらゆる意味で"最強"である乱菊に迫られても、意中の人も好みの男もコレといっていない勇音には「そんな人いませんッ!!」と繰り返すほかないのだが、それで既に素面でない乱菊が納得するわけはない。


はぐらかそうとしている勇音を逃すまいとますますムキになって迫ってくる。




ど〜しよう…誰でもいいからテキトーに名前を言わない限り乱菊さんは離してくれないだろうし…



でも迂闊に誰かの名を出せば


『よし!じゃあお姉さんが仲をとりもってあげましょう!!!』


などと言い出しかねない。



「…乱菊さん、いいかげんにしてください。勇音が困ってるじゃないですか」



勇音が乱菊の扱いにほとほと困り果てていたところへ助け舟を出したのは、八番隊副隊長の伊勢七緒だった。



七緒の口調は乱菊を諌めるというよりは、咎めるような、いささかきつめに聞こえた。が、当の乱菊は全く意に介した風もなく。


「はぁ〜?…七緒、あんたこそどうなのよ。京楽隊長とはうまくいってるの〜???」


「なっ……!!!なんでそこに京楽隊長が出てくるんですかッ!!!?」



うろたえている七緒の隙をついて乱菊は背後から抱きつき、羽交い絞めにしながら迫る。



「隠すな隠すな〜★こらっ、神妙に白状しろっ!!」



乱菊の矛先が七緒に移ったことにほっと溜息をつきながら、勇音はごめん、と心の中で七緒に謝った。



「え〜〜なになに〜〜???やちるも聞く〜〜!!!」



騒ぎを聞きつけたやちるがやってきて、それまでそれぞれに楽しんでいた女性死神たちの視線が一斉に七緒たちの方へと向けられる。


「…もぅ〜〜!!!皆なに期待してるんですかっ?!京楽隊長とは何もありません!!!」


七緒が真っ赤になって皆に一喝すると


「え〜そうなの〜〜?そりゃ残念だなぁ」


という呑気な声。


背後からぬっと顔を出したのは当の京楽本人だったから、七緒はもちろん周囲の者たちもも驚きを隠せない。


「な〜んか盛り上がってるねぇ。混ぜてくれる?」


「もちろんvvv…で?七緒はこう言ってますけど、実のところどうなんですか〜京楽隊長?」


「ん〜〜。ボクは七緒ちゃんが"イイ"って言ってくれたら、いつでもオッケーなんだけどね〜。七緒ちゃん、素直じゃないから」


ねっ、と京楽が七緒に同意を求めるかのように、ニッと笑った次の瞬間、七緒の一本背負いがきれいに決まり、京楽があざやかに宙を舞っていた。


「すごーい!!!ななちゃん!!!」


あまりの早業に、おお〜ッと周囲に居る客たちからも感嘆の声があがる。


「アイテテテ……う〜〜こりゃ油断したね。にしてもひどいよ〜七緒ちゅわ〜ん」


「隊長の自業自得です!…もう、早く立ってください。みっともない」



座り込んでいる京楽を見かねて七緒が手を貸して立たせてやっていると、その後ろから




「おいおい、京楽、何やってんだ?一体…」



と、呆れたような声。



「あら、浮竹隊長!!!」




「お、皆こんなところにいたのか。なんだ、盛り上がってるみたいだな」



浮竹はいつもの屈託のない笑みを皆に向けた。





凪:二人の出会いからカップル成立までをお題にそって書いていく予定ですvv
乱:…にしては、メインの二人の出番がほとんどないんじゃないの?射場サンは?
凪:ははは…前置き長いんですよ、ワタシ(^^;)展開はこれからッス!!
乱:アタシの活躍にも期待してね!!
凪:(えっ……?!)

20070214up

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