COLORS




「…射場さん?」

「お、悪い。ボーっとしとった。じゃあ、いただこうかの」

「はい」










第4話*紅い華-後編-







両手を合わせて"いただきます"をする射場に、勇音は少し驚いたが、さらに驚いたのは、射場の食べっぷりだ。


「うまいのぅ。この味付けはどうやっとるんじゃ?」


「このだしは鰹か?それとも他のもん使うとるんか?」


「このヌルヌルしとる葉っぱはなんちゅう名前じゃ?モロヘイヤ??ふぅーん…案外といけるのぅ」


射場は勇音の作ったもの一つ一つにあれやこれやと訊いてきて、勇音がそれに丁寧にが答えてやると、また次、といった具合で。

最初は社交辞令なのかな?と思っていたのだが、話を聞いているうちに、意外なことに射場が食事に関しては自分なりのコダワリがあるということがわかった。

自分で作ったりはしない代わりに、あそこの店は何がおいしいとか、そんなことも良く知っていて。


それに、この家の食事といえば、マシンガンのように次から次へと喋りまくる清音の話に勇音がうんうんと相槌をうつのが大抵であったので、勇音にとっては誰かとあれこれしゃべりながらの食事というのは久しぶりで。



気がつくとすっかり意気投合して、二人で縁側でのんびりお茶なんかをすすっていた……。



■□■□■



「ここは…あんた一人で住んどるんか?」


少し中をうろついただけでも一人で住むには広すぎるとわかる家。

けれど、勇音の他に人の気配は感じられない。


「妹と二人暮しです。ここは、両親が残してくれた家なんです」


…ということは、勇音は流魂街の出ではないということになる。


下級貴族…か、今は没落してしまったがそれなりの家の生まれということか。

「ふぅん」

射場が相槌を打ったのと同時に、庭から"ニャー"と猫の鳴き声が聞こえた。

その方へ目をやると、いつも間にやって来たのか、きれいな黒猫が長い尻尾を振りながらちょこんと縁側に座っている。

そして、その足元には紅い華が一輪。

「あ、ちょっと待ってね」

勇音が立ち上がって、予め用意していたらしいエサを盛った皿を出してやると黒猫がもしゃもしゃと嬉しそうに食べ始める。

「かわいらしいのぅ。ここの飼い猫なんか?」

射場の問いに勇音は首を横に振る。

「私は飼ってあげたいんですけど、清音が猫苦手なんです。…この子、うちに来る時はいつもお花を持ってきてくれるんですよ。エサ代のつもりなのかもしれないんですけどね」

「ほぅ、かしこい猫なんじゃの」

などと、射場と勇音が言葉を交わしている間にエサを平らげた黒猫は、今度は勇音の足元にじゃれつくと、ぴょん、と勇音の胸に飛びこんだ。

そのまま勇音に抱き上げられて、身体を預けて甘える猫の喉を射場が指で撫でてやるとゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らす。

自分の隣で猫に優しく笑いかける勇音の横顔に少しドキリとして思わず視線を泳がせた時、射場は猫の金色の瞳がじっと自分を見つめているのに気づいた。

まるで、射場を観察するかのような、品定めをするようなそんな表情に見えるのは気のせいか。

そんな射場の様子に気づいたのか---猫が自分に向かってニヤリと人の悪い笑みを浮かべたふうに見えて、射場はなにやら居心地が悪くなり、思わず手を引っ込める。

「射場さん…?」

勇音がどうかしたんですかと不思議そうな顔で射場を見上げる、上目遣いの瞳に思わずドキリ。

「あ…いや」

なんでもない、と射場が続けようとした時、不意に遠くでかぁん、かぁん、鐘をならす音が聞こえたので、はっと顔をあげる。

「…ありゃー何の音じゃ?」

「時間を知らせてるんです。えっと…多分、8時半だと思いますけど」

「8時半?!」

射場は大声で叫ぶと、慌てた様子で立ち上がった。

「まずい!!わしゃー今日朝イチで十一番隊に行くんじゃった!!!世話になりっぱなしで悪いのぅ。今日はこれでおいとまするけんど、この礼は必ずするけぇ。じゃあ、ご馳走さん」

軽く勇音に頭を下げると、射場は慌てて玄関へと走りだそうとするが―――


「射場さん!忘れ物です」

勇音の声に振り向けば、射場の斬魄刀を抱えている勇音の姿が目に映る。



「…じゃあ、行ってらっしゃい」

「おう……それじゃあ」



射場は勇音から斬魄刀を受け取ると、一目散に瀞霊廷の方向へと駆け出していった。

走りながら、自分の顔が徐々に火照ってくるのを射場は感じていた。




"いってらっしゃい"なんて言われたのは何年ぶりじゃ?




…でも、こういうのもいいかもしれない、なんて考えてしまって。


そして、どんなに打ち消そうとしても、頭の中に浮かぶのは別れ際のやわらかに微笑む勇音の顔ばかり。



…一体わしはどうしてしもうたんじゃ〜〜!!!


そんな射場の心の叫びに答えてくれる者が有るはずもなかった。






凪:2話目後編アップですvvv
鉄:今回はわしの視点じゃの。
凪:その辺はあまり意識してないです。話によって色々と変わります
鉄:次回はどーなるんじゃ?
凪:実は次の回は後でとってつけたので、脳内ではだいたいできあがってるんですが、まだカタチにはなってません!!(汗)
鉄:オーイ!!!
凪:とにかくがんばります☆
鉄:死ぬ気でガンバるんじゃ!!
凪:・・・・・・(T_T)

20070316up

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