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秋雨
〔2003年〕 |
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ロマン・スロコンブ著 |
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SM/ボンデージ、帝銀事件
731部隊 |
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ガリマール社 (パリ)
叢書 セリ・ノワール 2691番 |
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Averse d'automne / Romain Slocombe
-Paris : Editions Gallimard.
-(Série Noire; 2691).
-508p. -12.5 x 19cm. -2003. |
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【あらすじ】 |
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96年秋。金曜日。写真家ウッドブルックは久し振りに日本の土を踏んだ。目的は借金返済。「インタヴュー」誌が企画したルポ記事(AV監督インタビュー)を完成させなくてはならなかった。新宿、赤坂近辺にたむろしている旧友と連絡を取る。死とセックスに魅せられた日本人少女の話に耳を傾けていく。 |
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土曜日。アエラにも寄稿している仏人ジャーナリスト、ビロリから電話が入った。原宿で待ち合わせ、男は「帝銀事件を知ってるか?」と訊ねてきた。1948年1月。衛生局の指示を装った男が銀行員12人を毒殺。20万円近い現金と小切手を奪って逃走。7ヵ月後、道警による平沢逮捕の後も謎は残されていた。ビロリに案内されたウッドブルック。多摩墓苑に到着。指示された通りビデオで墓石を撮っていく。供えられた花束。731部隊の生き残りが出資した「生魂塔」だった。 |
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ビロリと共に千葉へ向かう。ハバロフクス裁判で重要な証言を残した医者、浜本が静かに余生を送っていた。「国内では情報を公開しない」の約束でインタビューを取りつける。イペリットガスの実験を指揮していた曽我三郎の姿が浮かび上がってくる。問題はこの戦争犯罪人が生き延びていたことだった。GHQとの取引きで… |
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【講評】 |
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02年発表『霧の酒』が作家スロコンブにとって転回点になったようです。右翼、オウム事件を題材とした後、歴史という厚みを前に作風が変化してきています。一方に黒髪の少女、そのエロスとタナトスに魅せられた主人公。このウッドブルックの繊細で不器用な行動が大きな物語をかたどっていきます。合間には帝銀事件、731部隊関連の膨大な歴史考証。旧作で強調されていた不夜城東京の観察は良い具合に背景化しており、良質の社会派ポラールとしての完成度を高めました。名刺を使ったトリッキーな脅迫劇(第2部5章)など小技の利かせ方も良いですよ。 |
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【最終更新】 2009-06-16 |
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