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狼と吼える |
リリアン・バテロ著 |
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〔初版〕 1998年 クリマ社(カステルノ・ル・レ)
叢書ソンブル・クリマ 10番
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Avec les loups / Lilian Bathelot
-Castelnau-le-Lez: Editions Climats.
-(Sombres Climats ; 10).
-180p. -21 × 14cm. 1998. |
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二日酔いで目を覚ます。 |
ポケットに小銭と煙草の箱が残っていた。記憶の底を探っていく。車の後部座席で女と戯れていたのは覚えてる。人差し指と中指が汚れていた。目を近づけてみる。茶色の汚れは血のようだった。 |
朝、部屋でベースを弾いていると警官がやってきた。署まで呼び出された。女の話は伏せておいた。警察署から出てから事件を知った。ラジオが沼に浮かんだ死体の話をしていた。ナイフの一突き。シャツに付着していた血痕、「殺人犯は自分ではないのか」、ふとそんな気がした。 |
女から電話があった。名前はシュー・エレン。「昨日殺人犯と夜を過ごしたなんてありえない」、鼻で笑われてしまった。女の脇腹に小さな傷が一つ。昨日の晩に爪で引っかいたらしい。血痕はその時のものだった。 |
だが…警察がもう一度やってくる。逮捕の後で女は供述を変えた。全ては自分を殺人犯に仕立てるための茶番劇だった。署を脱走、シュー・エレンに連絡をいれた。女もまた母親の薬物売買でゆすられていた被害者。陰謀劇は逃避行に変わっていく… |
冒頭部分、ファムファタル風の展開にチャールズ・ウィリアムズを思い出しました。映画的な疾走感を備えた良作で、結末の悲劇まで心地のよい緊張感が続いていきます。「脱線が多すぎる」の批判(メスプレッド)もありましたが、その部分も含めて面白い語り口になっているのではないかと思います。08年、ジガル社より目出度く復刊、再発見されるべき書物です。 |
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