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Alain Dubrieu

アラン・デュブリュー
 〔1947 - 2006〕

     【本名】 アラン・ヴァレ 〔Alain Vallé〕
     【活動叢書】 ファイヤール・ノワール
アングルナージュ(第1期)、ラ・ノワール
 

【略歴】
本名アラン・ヴァレ。1947年生まれ。青年時代に起こした強盗事件の罪を問われ収監。刑務所で待遇改善を訴える互助組織の結成に尽力、減刑措置を受けることが出来ず十年の禁固刑を全うしています。出獄後、詩人ピーエル・トレイユに声をかけられ書店経営を引き受ける形で南仏モンペリエに家族(奥さんと娘さん)と共に移住してきました。  
監獄小説と呼ぶに相応しい処女作『イグアナの砂漠』が話題を呼び当時TVにも出演。この後は元監獄囚を主人公とした三部作に取りかかり、ネオ・ポラール最重要作家の一人となっていきます。特にエルヴェ・プリュドンと仲が良く、ギャング誌にも一緒にエッセイを寄稿していました。80年代中盤はデュブリュー名義を封印、ゴーストライターや別名義のエロ小説で生計を立てていきます。
90年代初頭に再評価の機運が高まるも時流に乗ることなく06年に病没。遺作は政治パンフレットの『忘却要塞』。他にも漫画コラボレーション(リベル・ニゲル)用に短編を完成させた記録が残っています。実体験を元にしたドキュメンタリー小説ではなく、ランボーやアルトーに影響を受けた詩人肌の作風。言葉にこめた怒りは今でも空気を振るわせています。

【諸データ】
[...] アクションの合間合間に散りばめられた血みどろの修羅場・エロ場面と全く関係なく、結末のどんでん返しに至るまで、優しい一幕や詩心溢れる描写があちらこちらに散りばめられている。まるで謝罪代わりとでも言うかのように。豊かな文才を謝る必要など何処にもないのにね。
 『誘拐』講評
ミシェル・ルブラン
『犯罪小説年鑑』1980年版、304ページ

乾き果てた入り江に巨大な死の船、ある種のコンクリート製平底船が錨を下ろしていて、石灰の仕切り板、ごつごつした岩の城壁に取り囲まれていた。あれを最初に見たときは死の印象が強烈に襲ってきた。余りの衝撃で恐ろしい疑いが沸き起こってくる。裁判の判決一つで4年をこの場所で過ごしていく。生きて出たとしても正気を失わずにいられるだろうか。取り返しがつかないほど心を病んだ危険人物にならないでいられるだろうか。
良く考えてみるとこれだけの長旅(「死者は壁の中であなたに挨拶する(Morituri te salutant intra muros)」)を経た後、自分の精神が今健康だという自信はなかったりする。私は抗っていた。戦いを続けてきた。そして血塗れとなった。屈することなく独房を生き延びていくのである […]。
 
『忘却要塞』、29ページ
アラン・デュブリュ−

【長編小説】

イグアナの砂漠

アラン・デュブリュー著


[初版] 1979年
ラムゼイ社 (パリ)

Le Désert de l'iguane / Alain Dubrieu
-Paris : Editions Ramsay.
-310p. -20cm. -1979.


誘拐

アラン・デュブリュー著


[初版] 1979年
ジャン・グジョン社 (パリ)
叢書 アングルナージュ 2番

Rapt / Alain D'Ubrieu (Dubrieu)
-Paris : Editions Jean Goujon. -(Engenage ; 2).
-190p. -11 × 18cm. -1979.


ある反逆者の季節

アラン・デュブリュー著


[初版] 1980年
ジャン・グジョン社 (パリ)

La Saison d'un rebelle / Alain Dubrieu
-Paris : Editions Jean Goujon.
-249p. -1980.


ありふれた憎しみ

アラン・デュブリュー著


[初版] 1981年
アルテーム・ファイヤール社 (パリ)
叢書 ファイヤール・ノワール 5番

Haine Comme Normal / Alain Dubrieu
-Paris : La librairie Arthème Fayard.
-(Fayard/Noir; 5).
-189p. -12 × 19cm. -1981.


尾に櫓を付けて生きてみる

アラン・デュブリュー著


[初版] 1991年
エルム社 (パリ)

Une vie à la godille / Alain Dubrieu
-Paris : Editions Herme.
-préface : Erik Orsenna
-355p. -1991.


【選集】

黒=三部作

アラン・デュブリュー著


[初版] 1993年
LGP社 (マルセイユ)
叢書 ミュルティベスト
(『誘拐』、『ある反逆者の季節』、
『ありふれた憎しみ』収録)

Noir Triptyque / Alain Dubrieu
-Marseille : Editions L.G.P. (Livres Grand Public).
-(Multibest). -préface : Erik Orsenna
-423p. -13 × 20cm. -1993.


【政治評論/エッセイ】

忘却要塞

アラン・デュブリュー著


[初版] 1999年
アンソムニアーク社 (モントルィユ)
叢書「抜き身の刀」

Citadelles de L'oubli / Alain Dubrieu
-Montreuil : Editions de L'insomniaque.
-(A Couteaux Tirés).
-64p. -10 × 15cm. -1999.


※デュブリュー名義作品のみ。他に80年代を中心にゴーストライターとして、あるいは他名義で書かれた作品が残されています。最も有名なペンネームが「アンドレ・ナヴァリス(André Navalis)」、この名義では官能/エロ小説を執筆していました。
 

【最終更新】 2009-06-12
Photo : "Un Témoin dans la ville" / Edouard Molinaro, 1959
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010