こんな天気の日にはさ
04 太陽と雨が出会う昼下がり
「まど、俺の顔見られない?・・・そう、わかった」
なるべく静かに聞こえるようにと意識して言うと、円花はちょっと震えた。
何を思ったんだろう、わからないけれど。いいんだ、何であれ放っておけないんだから。
嫌われるかな、と俺自身内心は震えていたかもしれないけれど、どうしても放っておけないんだから仕方ない。
口を切る前には、俺もちょっと息を呑んだ。
「素直になれるまで、たっぷり痛い思いして泣くんだな」
え?とちいさな叫び声が聞こえたような聞こえなかったような。
俺はわざと少し乱暴に、円花の腕をぎゅっと引いて彼女を膝の上にうつ伏せにした。
「え?うそ」
今度ははっきり聞こえたけど、返事はしない。
膝の上の彼女のお尻にぱあんと平手を落とす。
「やだ、やめてよ」
か細い声での抗議には「やめないよ」とつれなく返した。
ぱぁん!
「自分がしてること、十分わかってるだろ?ちょっと泣けよ、悪い娘は」
ぱぁん!ぱぁん!
泣いた方が、楽になれるだろ。
何もかもわかってて苦しんでて、そのせいで余計にかたくなになってて。
固く閉じた扉の向こう。感情のままに何もかも吐き出したら、きっと素直な円花が出てくるから。
とはいえ、彼女は手強かった。
「やだったらぁ・・・。泣いたりしないもの、痛くなんかないんだから」
そういう意地の張り方するか。
自分は悪くない、って言えなかったんだろうけど。
「はいはい、じゃあもっと痛くしてやるから心配するな」
「え、ちょっと!」
裸のお尻を叩くつもりなんて、最初はなかったのに。
ぱちぃぃん!と、いままでとはだいぶ違う音がして。
「う・・・」
円花が奥歯を噛んでいる。
「我慢しなくていいから、泣いとけよ」
ぱちぃぃん!
泣いてくれないと、ここまでしてる意味ないからな。その扉、絶対開けてやるから。
ぱちぃん!ぱちぃぃん!
「や、もぉ、いたぁい・・!」
泣いてみんな洗い流したら、きっと謝ってそして笑える。
降ったあとにはまた陽が出るんだ。
ぱちぃぃん!
雨降って地固まるって諺に胸の中で縋りつつ、俺は円花を泣かせたのだ。
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