「え、ちょっと、祥ちゃん、まだ起きてたの?!」
「わ、修ちゃん!えっと、起きたの?・・・・・・・・。」
「「起きたの?」じゃないでしょ?!今何時だと思ってるの
」
「・・・・・、えっと・・・・・」
「何時なの?」
やだやだ、修ちゃん、怖い!
時刻はただいま午前3時。そりゃ叱られるのも避けがたいけど、自分でも早く寝なくちゃって思ってたけど。けどけど。
パソコンに向かってお話書いてたら止まらなくって、それとそれだけじゃなくってちょっとゲームなんかもしちゃったりして明日の朝眠いのはあたしだなんてことももちろん分かってるんだけど。
けどだって、止められなかったんだもん。
答えられないまま修ちゃんをちょっと上目遣いに見上げると、厳しい目で見つめ返された。うわぁ、怒ってる・・・。
そりゃあね、体にも悪いし良くないことだってのも分かってるし、・・・まあその、修ちゃんをいちばん怒らせるパターンなわけで。
「祥ちゃん、口が利けなくなったの?まあいいけど、言い訳も聞かないから。
ほら、おいで」
ふぇ。修ちゃんにぎゅっと手を引かれて、こんな状況でもちろん言い訳も反抗もできるはずない。や、お説教がない時点で、修ちゃんほんとに怒ってるってびしびし伝わってくるんだよね。
ソファーの横まで来て修ちゃんはあたしの手を離し、自分はどさっとソファーに深く沈み込んだ。
「おいで?」
うわ、修ちゃん、意地悪!
自分でおいで、ってことだってのは分かってるけど。叱られるようなことしたのも分かってるけど。修ちゃんこういうことめったにしないのに。
どうしても固まっちゃったあたしをつい、と見て、そして修ちゃんは目を閉じちゃった。何も言わずに、ただ待ってる。
うわ。
あたしだってこんなところで修ちゃんと根競べなんかしたくない。っていうか修ちゃんは、折れない!
仕方ない。あたしはあきらめておずおずと、修ちゃんの膝の上に乗った。
お膝の上ですぐに下着は下げられちゃって。
修ちゃんの手があたしのお尻の上に置かれる。
ぱしぃぃん!
もう最初っから、あたしは大泣きだった。
ぱしぃぃん!
ぱしぃぃん!ぱぁぁぁん!ぱしぃぃん!
「いたぁいぃ!ごめんなさぁいぃ!」
ぱしぃぃん!ぱしぃぃん!
「いやぁ!もう夜更かししないから!」
ぱしぃぃん!
「修ちゃん、ごめんなさい!!」
ぱしぃぃん!
ぱしぃぃん!
「ごめんなさいはたっぷり痛い思いをしてもらってから聞くからね」
ひぇぇ。「やぁぁ!ごめんなさいってばぁ!」
ぱぁぁぁん!ぱぁぁん!
「だって夜更かしがいけないなんて、祥ちゃんちゃんとわかってたでしょ?!
それも3時までなんて。僕が起きてこなきゃいつ寝るつもりだったの?」
ぱしぃぃん!ぱぁぁん!
「うわぁん!ごめんなさぁい!」
ぱぁぁぁん!ぱしぃぃん!
「夜更かししてるとこんな痛い目に遭うって骨身に染みるまで、 今日は許してあげないよ」
ぱしぃぃん!ぱちぃぃん!
「や、やだ、いたぁい!・・・もう十分わかったからぁ!」
ぱぁぁぁん!ぱしぃぃん!ぱぁぁん!
痛くて痛くて。
やだやだとごめんなさいともうしませんと、いっぱいいっぱい繰り返してるんだけど。
ぱぁぁん!ぱしぃぃん!ぱぁぁぁん!ぱしぃん!
修ちゃんはなかなか手を止めてはくれなかった。
ぱしぃぃん!ぱぁぁぁん!ぱしぃぃん!
「ふぇぇ・・・ごめんなさいぃ・・・」
ぱぁぁん!
「・・・・・祥ちゃん、ほんとに分かった?」
「うん!ちゃんとわかった!もうしないからぁ!」
「ほんとに?!」
「ほんとだってばぁ!ごめんなさい!」
かなりしつこく念を押して、修ちゃんはようやく手を止めてくれた。あたしには見えないけど真っ赤になってるに違いないお尻に、そっと手を置く。
「夜更かしして辛いのは祥子だろ?ほんとに、もう」
心配してる、って響きを声にいっぱい乗せて言う。そんなの反則だよぉ・・・またいっぱい涙が溢れちゃうんだから。
「うぇ・・・ごめんなさい・・・」
修ちゃんはそのまましばらくあたしのお尻を撫ぜていた。
それでそれから。
「さ、寝ようか」
そう言ってくれた修ちゃんは、でもそこで、あ、そうだ、と言い出した。
「明日からは1時前には寝ること。いい?」
1時。・・・うう、それって、それって、結構いまのあたしにはきわどい。っていうか、こんなタイミングじゃなきゃ間髪入れずにやだとか無理とかって言うくらいの時刻。
けど、けどけど。
「これは言いつけだからね、祥ちゃんの意見は聞かないよ」
あたしが何を言おうか考える前に、追い討ちを掛けられた。
「・・・そんな、子供扱い・・・」
言ってはみるけどこの状況じゃ説得力ないことも分かってるあたしの表情と声色に、修ちゃんは笑う。
「大人だって証明してくれるの、待ってるよ?」
証明したら証明したで。それって自分で夜更かししないで時間を守るってことだから。結局、就寝時刻は変わんないってことだよねぇ?!
何か、ずるい。
言いたくなっちゃったあたしに、修ちゃんは何気ない風で付け加えた。
「体、大事にしてよ」
・・・!!
修ちゃんは怒ってても優しくて。結局あたしは修ちゃんに敵わないってこと、つくづく思い知らされるのだった。
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