説話の種類と関連する諺
アポロドーロスの「ビブリオテーケー」でデウカリオンの洪水として語られる物語には、いくつかノアの洪水伝説に共通する点がある。プロメテウスは息子のデウカリオンに櫃を作るよう助言する。他の人間は、高い山に逃げた少数を除いてすべて滅ぼされる。テッサリアの山は砕け、コリントス地峡とペロポネソスより向こうの世界はすべて沈む。デウカリオンと妻のピュラは、9つの昼と夜を櫃で漂い、パルナッソス山にたどり着く。"ヘラニコスが語るさらに古い物語では、デウカリオンの「方舟」はテッサリアのオトリュス山にたどり着く。別の記述では彼は Argolis、のちのネメアのおそらく Phouka の頂上にたどり着く。雨が止んだとき、彼はゼウスに供物をささげる。それからゼウスの言いつけに従って石を自分の後ろに投げると、石から男が誕生し、ピュラが投げた石からは女が誕生した。アポロドーロスはここから、ギリシャ語の laos(人々)の語源は laas(石)にあるのだとしている。"ゼウスの息子のメガロスは、鶴の鳴き声に導かれてゲラニア山の頂上まで泳ぎ、デウカリオンの洪水を逃れた。
他方、カドモスの姉妹にエウローペーがあり、彼女はクレーテー王アステリオスの妻であるが、ゼウスが彼女を愛しミーノースが生まれる。ミーノースの幾人かの息子と娘のなかで、カトレウスは娘を通じてアガメムノーンの祖父に当たり、同様に、彼はパラメーデースの祖父である。カトレウスの孫には他にイードメネウスがいる。ミーノースの娘アリアドネーは、本来人間ではなく女神とも考えられるが、ディオニューソスの妻となってオイノピオーン等の子をもうけた。クレーテーの迷宮へと入って行ったテーセウスは、アテーナイ王アイゲウスの息子とも、ポセイドーンの息子ともされるが、ミーノースの娘パイドラーを妻とした。アガメムノーンを総帥とするアカイア勢(古代ギリシア人)に侵攻され、十年の戦争の後、陥落したトロイアは、トロイア戦争の舞台として名高い。小アジア西端に位置するこの都城の支配者は、ゼウスを祖とするダルダノスの子孫である。彼はトロイア市を創建し、キュベレー崇拝をプリュギアに導いたとされる。ダルダノスの孫がトロースで、彼がトロイアの名祖である。トロースには三人の息子があり、イーロス、アッサラコス、ガニュメーデースである。ガニュメーデースは美少年中の美少年と言われ、ゼウスがこれを攫ってオリュンポスの酒盃捧持者とした。イーロスはラーオメドーンの父で、後の老トロイア王プリアモスの祖父である。英雄ヘクトール、パリス(アレクサンドロス)はプリアモスの息子で、予言で名高いカッサンドラーはその娘である。またヘクトールの妻アンドロマケーは、トロイア陥落後、アキレウスの息子ネオプトレモスの奴隷とされ、彼の子を生む。
"西欧はしかし古代のローマ詩人オウィディウスの名とその作品はよく知っていた。イタリア・ルネサンスの絵画でギリシア神話の主題を明確に表現しているものとして、サンドロ・ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』と『春』が存在する。両絵画共に制作年が確然と分からないが、1482年頃であろうと想定されている[125]。高階秀爾はこの二つの絵画を解釈して、『春』はオウィディウスの『祭暦』の描写に合致する一方、『ヴィーナスの誕生』と『春』が対を成す作品ならば、これは「天のアプロディーテー」と「大衆のアプロディーテー」の描き分けの可能性があると指摘している[126] [127] [128]。"ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』は、イタリア・ルネサンスにおけるギリシア神話の具象的表現の代表的な作品とも言える。この絵の背後にあると想定されるマルシリオ・フィチーノなどのネオプラトニズムの哲学や魔術的ルネサンスの思想は、秘教的なギリシア文化と西欧文化のあいだで通底する美的神話的原理であるとも言える。それでは、西欧においてルネサンス以前のギリシアのイメージは本来どのようなものであったのか。西欧における古代ギリシア、わけてもホメーロスの像は、いわゆる「トロイアの物語」のイメージで捉えられていた。これは紀元4ないし5世紀のラテン語の詩『トロイア戦争日誌』と『トロイア滅亡の歴史物語』を素材として、12世紀にブノワ・ド・サント=モールがフランス語で書いたロマンス風の『トロイア物語』から広がって行ったものである。この作品は更にラテン語で翻案され、全ヨーロッパ中に広まったとされる[129]。叙事詩人ホメーロスがそのうちにあった本来の古代ギリシアと、この中世にあって「トロイア物語」を通じて流布したギリシアの像では、どのような違いがあったのだろうか。ここで言えるのは、両者が共に「歴史性」を負っていること、しかし前者は「詩的」であろうとする世界であり、後者はあくまで「史的」であろうとする世界である[130]。往古のギリシアの世界には「神々の顕現」が当然含まれていたが、中世より近世にあって西欧が思い描いたギリシアの世界には、「神々の不在」があり脱神話化が行われている。
"ミックマック族の神話においては、人々はおのれの邪悪さから、お互いに殺しあう。創造主である太陽神はこれに大いなる悲しみを感じ、その流した涙が大洪水を引き起こす。人々は樹皮のカヌーで生き残ろうとするが、地球上に残ったのはただ一組の老夫婦のみであった。 [4]"山幸彦と海幸彦を参照。"『山海経』(中国最古の地理書)は、中国の伝説的支配者禹が「天から水のあふれたような」洪水を治めるのに10年を費やしたところで終わる。