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▽レス始

「霊能生徒 忠お!〜二学期〜(HR・プロローグ)(ネギま+GS)」

詞連 (2006-07-09 23:45/2006-07-10 15:15)
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 運命という考え方がある。定め、とも言う。
 現在の要素で、すでに未来は決定しているという考え方だ。
 時という概念に呼応し無意識下に生じ、原始宗教の司祭の予言からカルヴァンの恩寵予定説を経て、古典力学が生んだラプラスの悪魔として完成した。やがて量子力学によって枯れ尾花と看破されたが、しかしその考え方は滅んでいないし、滅びることはないだろう。
 人の行いをある時は励まし、またある時は嘲笑う、すでにすべてが決まっているという思想。
 それの是非はわからない。
 だが、たとえ運命が存在しないとしても人は未来をどうすることもできない。
 あらゆる事象は、世界に縦横無尽と張り巡らされた因果のマトリクスによって決定される。その暴力的な流れの前に個人の力など無に等しく、その複雑怪奇さの前に個人の予測能力など無に等しい。
 運命がなくても―――いや、運命という固定の道がないからこそ、茫洋に広がる未来という可能性の海原に対して、羅針盤を持たぬ人間はあまりに無力なのだ。

 だから、俺は主張する。仕方なかったと!俺は無実だと!

 仕方ないじゃないっすか!?この前、美神さんの受けた潜入調査の時、文殊で変装したときなんかはすぐに戻れたし、戻れなくなるなんて想像できないっすよ!
 それに!無理やりがんばれば一時的に男に成れるとか、その時に下手に霊力を使うとまた呪いに対して霊力が補充されるとかも聞いてませんし!
 つまり俺が男に戻るまで、もう一週間かかっちゃうのは、俺のせいじゃない!すべては周囲の状況がそうさせたんであって、俺の力じゃどうにもならなかったんすよ!

 もう一度、言います!俺は無実っすよ!


「……つーことで…そのバチバチ放電している神通棍は勘弁してくれませんでしょうか、美神さん?」
「勘弁できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 エヴァンジェリン戦後、すぐに飛んで帰ってきて、正座で事情を説明していた横島忠緒の頭の上に、夜中に起こされ悪い知らせを聞かされた美神は、神通棍をフルパワーで振り下ろしたのだった。


 霊能生徒 忠お! 二学期  HR 〜そしてまた始まる日々〜


「…ってなわけで、結局振り出しに戻っちゃったんすよ」

 エヴァとの対決が終わった翌朝、美神の折檻から何とか回復した横島は、学園長室で事の次第を説明していた。
 横島―――横島忠緒、15歳、女。というのが、今の横島の身分である。

 事の起こりは十日ほど前。見習いから一人前に昇格したことを祝う宴会の席で、主賓である横島は文殊を使って美少女に変化し、あろうことか戻らなくなった。戻すには、関東の魔法使いの総本山、麻帆良学園を包む結界の力を借りなくてはならない。
 呪いは、麻帆良で一週間を過ごせば解けるはずだった。だが、そこはトラブルを惹く星の下に生を受けた横島。担任の見習い魔法使いネギと、ネギの血を吸って、ネギの父にかけられた呪い『登校地獄』を解こうとする吸血鬼エヴァンジェリンとの戦いに巻き込まれる。
 そして、横島の呪いが解ける夜。乱入したハーピーからエヴァを庇うために無理をして、エヴァは助かったものの、解呪は振り出しに戻ってしまったのだった。

「ということで、もうしばらく麻帆良に滞在、ってことになります。いいっすよね?」

 説明が終わった横島は、学園長に尋ねる。
 学園長はフォフォフォ、と笑って髭をなでながら

「ダメじゃv」

 てへ、と笑いながら言ったのだった。


霊能生徒 忠お! 完


「ってなんでやぁっ!」

 鬼気迫る表情で横島は叫び、思わず机越しに学園長に掴み掛かる。
 自分の呪いを解けるのは、麻帆良の結界のように、持続的に巨大な霊的エネルギーを供給できるシステムがなくてはいけない。
 もちろん探せば他にもあるかもしれないが、そんな大それた代物を使わせてくれる場所などなく、頼みの綱の妙神山も、今の横島はとある理由で横島は自由に出入りできないのだ。
 つまり、ここを追い出されれば事実上戻る手立てがなくなる。

「このままじゃナンパもできんじゃないっすか!
 セクハラしても本気で相手にしてもらえませんし!
 そもそも俺はオカマなんていやぁぁぁぁぁぁっ!」
「しょうがないじゃろ?少々問題が起きてしまったのだから」
「問題?」

 つかみ掛かられても平気そうな様子だった学園長に横島は問い返す。学園長は実は、と前置きをして、こういった。

「何者かが、エヴァの力を封じていた呪を解いてしまったのじゃ」
「ギクッ!?」

 空とぼけた学園長の言葉に、横島の表情は反射的に引きつってしまった。
 言わずもがな、エヴァの呪を解いたのは横島である。エヴァの呪を解いてしまえばもうネギが狙われることもないだろうし、そもそも永遠に麻帆良にくくられ続けるというのも気の毒だと思った横島の判断だった。それに、エヴァは無闇な悪事を働くようにも見えなかった。
 もちろん、魔法界の住人たちにしてみれば、最強の悪い魔法使いを解き放つなど、暴挙以外の何物でもない。ゆえに魔法界での十分の立場が悪くなるのは横島にも予想できた。だが、別にもう魔法界と係わり合いになることもないだろうから、立つ鳥、後を濁しまくりとばかりにやってしまったのだ。自分がまた女に戻るなど露とも知らずに。

「その何者かは、なんと霊能力者だという噂もあってのぅ」
「(ギギクッ!)霊能力で魔法の呪は解けないんじゃないっすか?」
「それはそうなんじゃが…世の中には例外というものはつきものじゃからな。
 それに、昨夜は常識はずれの霊力が橋の方で観測されたしのぅ」
「そうっすね。あれには俺も驚きましたよ」

 今度は顔に出さずに、横島は返答をする。だが実のところ、それは無駄だということは横島も解っていた。エヴァの呪の件を出した時点で、すでに目の前の老人が、その『何者か』の正体を知った上で自分に話しているというのが明白だからだ。

「まあ、魔法使いには、霊能力者にあまり良い印象を持ってないものも多くてなぁ。
 そういう噂が流れたこともあって、無闇に霊能力者を麻帆良に置いておくわけにもいかんのじゃよ。
 恨むんじゃったらその何者かを恨んでくれ」
「そ、そこを何とかなりませんか!?
 ホント、なんでもしますんでお願いします!」
「うん?そうじゃなぁ……。どうしようかなぁ……」

 頭を下げる横島の前で、学園長は悩むふりをする。あくまでふりを、だ。
 実は、横島が少女に戻ったことやその経緯は、すでに知っていたのだ。その点には同情の余地はある。それにエヴァの呪に関しても、学園長自身は大して問題だとは思っていない。もちろん他の魔法組織や学園内の魔法使いは大なり小なり言っては来る。だがそもそも、エヴァの呪は手はずが整いさえすれば、いずれ解く予定だった。それが少し早まっただけのことと思えば問題ない。むしろ、エヴァの呪を解いたということの非難をかぶってもらえたのだから、横島には感謝してもよいくらいだ。
 だが、ここで素直にお礼として横島の滞在延長を許すようでは、東の長など務まらない。人の良さだけで人を束ねることはできないのだ。

(ちょうど、頼みたい案件もあることだし)

 長い眉毛に隠れた目で、学園長は下げられた横島の頭を見る。
 一方、下げた頭で死角になった横島の額では、血管が井桁マークを作っていた。

(このぬらりひょんがぁっ……!)

 横島も、学園長が条件――それもおそらく労働的なことを求めているというのはわかった。学園長の政治的な立場は良くわからないが、あそこまで事情を説明したことや、悩むそぶりを見せたことから予想がついた。しかも交渉対象が自分というなら、対価は金などではなく労働だろうということも。だからこそ「なんでもする」というフレーズをあえて口にしたのだった。
 もしも交渉役が横島ではなく美神親子などならば、もっと良い駆け引きができたかもしれないが、横島には学園長の意図に乗る以外に道はなかった。

 立場の強さはもとより、いくら成長したとはいえ弱冠二十の横島と、海千山千の老人とでは、経験値が違いすぎる。

 結局、学園長がもったいぶるのをやめたのは、一分ほど経ってからだった。

「ふぅむ……よし、解った。そこまで言われては仕方ない。滞在延長を許可する。ただし、条件付での」
「じょ、条件って?」

 光り輝かんばかりの明るい表情で頭を上げた横島だったが、最後に付け加えられたフレーズに、一気にその表情は掻き曇る。

(やっぱ魔法使いだけに悪いドラゴンを倒せとかって感じのやつか?)

 いつかのネギのように、目のところに黒い線が入ったドラゴンと相対する自分の光景を想像する横島。学園長は緊張した面持ちの横島に苦笑する。

「フォッフォッフォ…そんなに硬くなるような話じゃない。じゃが、ちょっと込み入った話じゃ。時間ができたら呼び出すので、また後で来てくれ」

 そう言うと、学園長は机の引き出しから一枚の紙を取り出す。
 今日の日付が記された在学許可証と銘打たれたそれには、すでに学園長の判が押されていた。

「改めて、麻帆良学園へようこそ、横島君」

 学園長は横島に向けて右手を差し出す。明らかに事前に用意されていたその書類を見た横島は、努めて笑顔で、学園長の手を握り返したのだった。


 全力で。


 老人の悲鳴が麻帆良に響いた。


 かくして、霊能生徒横島忠緒の麻帆良生活は、改めてスタートを切ったのだった。

つづく


あとがき
 お久しぶりな詞連です。霊能生徒 忠お!二学期を始めさせていただきます。
 今回はまぁ、HRということで短めになります。けしてふむふむ氏の作品を読んで買ったゲームが面白くて執筆を怠けたから短いわけじゃない気がするですよ?(自信なさげ)
 今週から再び週末更新を目標にがんばって生きたいと思っております。


ではレス返しを

>rin氏
 横島嬢…そうっすよね、女の子なんですよね、今の彼。
 第二部も期待に沿えるようにがんばります。

>スケベビッチ氏
>ごきげんよう、スケベビッチ・オンナスキー、人呼んでスケさんです。
 ごきげんよう詞連、人呼んで…私の名前ってちゃんとした読みをしてくれている人がどれだけいるんでしょう?(笑)
 混迷する事態に負けないようにがんばって描写していきたいと思います。刹那ルートは秘密、真名ルートは公式設定がどう転ぶかわからないので不明ということで。
 誤字指摘ありがとうございます。

>黒き者氏
 まあ、忠お!の横島のコンセプトは「セミ最強もの」なので、なるべく横島は実力を発揮できない状況に追い込む予定です。今のところ宇宙意志は落とす予定なしですが。
 なおネタばれになりますが、京都でタマモは出す予定は(今のところ)ないです。しかし非レギュラーどころで二人、うち一人は京都に馴染み深いキャラを出す予定です。(わかっても口外しないでくださいね)

>D,氏
>このまま肺炎(一年追加)にならないかなぁ・・・・
 それまで私が持つかどうか…がんばりますけど(笑)。
 横島の正体を知っている者から見れば、ネギはあまりにも気の毒ですよね。
 ガンバレ少年!

>TA phoenix氏
 忠お!のコンセプトはセミ最強もの(強いことは強いけど圧倒的ではない)ですから、そう言ってもらえるとうれしいです。
 誤字指摘ありがとうございます。これからもがんばります。

>暇学生氏

 残念ながらシロタマは出ない予定ですが、その代わり別のレギュラーどころが出てくる予定です。第二部がんばります。

>t−t氏

 初スレありがとうございます。
 レポートにもテストにも負けないようにがんばっていこうと思います。

>ヂオ氏

 まあ今回はあくまで横島登場編ということで、ご勘弁ください。裏設定ゆえに原作に比べかなり強化していますので、説明が必要と思いこうなったのですが、ほとんど横島に対して説明は終わりましたので、今回からは控えれるかと。
 ご指摘ありがとうございます。

>シヴァやん氏
どもです。
 第二部もがんばります。

>わーくん氏
 実際は結構役に立っているはずなのに、肝心なときに力を発揮できないヒャクメ嬢に敬礼!横島は、所詮最後に落ちがつく運命にあるのです。
 第二部もがんばります。

>kurage氏
 褒めていただいて面映いばかりです。これからもご期待を裏切らないように努力していく所存です。
>根っこはワラ人形で神様のバカヤローと変わらない
気づいていただけましたか。実はこの術の発想はまさにそこから来ています。というか、あれもれっきとした横島の霊能のひとつなんですよね(笑)
 第二部もがんばります。

>嗚臣氏
 一応霊力は使えますが、あまり大きいのを使うと、ということです。もっと詳しい条件は後でということで。
 次回もがんばります。

>ういっす氏
>これはもう横島が元に戻って、自分の部屋に戻ると何故か寛いでいるエヴァちゃん一家(エヴァ、茶茶丸、チャチャゼロ)が居そうですね〜(爆
…うわ、想像できるし。
 まあ、現在のエヴァはべたぼれというわけではなく、ちょっといいかな的な感じですかね?

>ヒアン氏
 ネギまもGSも大好きなので、両方のキャラがしっかり立つようにがんばっていきたいです。ご声援ありがとうございます。

>鉄拳28号氏
>キャラが立っていて「ああ、こんなだろうなぁ」と思える部分が多く、楽しめました。
ありがとうございます。そういっていただけて本当にうれしいです。
もはや時給255円に滅ぼされたことは彼にとってはトラウマでしょうね。
がんばっていきたいと思います。

>舞−エンジェル氏
 第二部の更新は今日ということになりました。今後も週一ペースでがんばっていきたいと思います。
 宴会芸でパワーダウン。こういう間抜けな展開ができるのがGSの良いところです。こういう展開をがんばって考えていきたいと思います。

レス返し終了

さて何とか秋までにはスクナを倒すのを目標に、がんばっていこうと思います。では

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