「ふう、流石に疲れたわね。」
家にたどり着き、椅子に座り込む凛。バーサーカーとの戦いの後、士郎とセイバーとは別れた。一言言い残して。
『今度会うときは敵ね、衛宮君。』
まあ、もっとも士郎が“遠坂みたいないい奴とは戦いたくない”とか言って、色々と押し問答して、実際は一言では終わらなかったのだが。
「さてと、できればすぐに休みたいところだけど、この先の方策色々と考えて置かないとね。」
「バーサーカー対策ね。」
ロゼットの言葉に“ええ”、っと頷き、そして尋ねる。
「それでパートナー、目一杯やったら、後11回バーサーカーを殺しつくす自身ある?」
「・・・・・狂化した彼を見た事がないから断言はできないけど、今の状態なら五分ってとこだと思う。けど・・・・・。」
クロノの言葉を遮る凛。それ以上の言葉をつむがせない。
「待った!!今更それは言わなくてもいいわ。けど、それなら、十分な勝算はあるわね。形見の宝石もあるし、シスターの援護もある。それに、戦いが長引けば不利になるのはこっちだけじゃないわ。」
「どういうこと?」
その言葉にロゼットが不思議そうな顔をする。それに対し、自慢げに答える凛。
「狂化したヘラクレス、そんなとんでもないもの、いくらイリヤが桁外れの魔力を持っているとしても持続し続けられるとは思えないわ。連続して殺しつづければ、イリヤがまいるか、バーサーカーが弱体化するか、いずれにしても隙ができる筈よ。」
その推論に感嘆した表情を見せるロゼットとクロノ。そして凛はさらに付け加える。
「最もしばらくは“逃げ”を頭に入れて戦うわ。上手くいけば他のサーヴァントとの戦いで命を消耗する事もあるでしょうし、少しずつ命を削っていけばもっと楽に倒せる筈よ。こっちだって魔法を目指す以上、無駄に寿命を削ってる余裕は無いんだから。」
そして、その言葉を締めくくりとして、話し合いは終わった。
「クロノ、凛の案、このまま上手くいくといいね。」
凛が眠りについた後、見張りの為、彼女の隣の部屋ですわるクロノに対し、同じように見張りをつとめるロゼットが優しい笑顔で
「うん、もう、人の魂なんてできれば食べたくないからね。」
“凛はロゼットにどこか似てるから、特にね”心の中でそう付け加えて答えるクロノ。媒体の無い召還でロゼットが呼び出されたのにはその辺に理由があるからかもしれないと思う。
「士郎君達は大丈夫かしら?」
「まあ、セイバーは強いし、経験も豊富そうだからきっとうまくやってくれるよ。」
先ほど共闘した少年の事を思い出す。二人とも彼の事をそれなりに気に入っている。できれば死んで欲しくないと思っている。本来ならこんな戦いに参加すべきような者ではなかった。だが、彼は選んでしまった。
「いつかは戦わなきゃいけないのかな、やっぱ。」
「お互い勝ち残っていけばそうなるだろうね。けど、まあ、僕達のマスターも結構甘いところがあるし、殺せとは言わないよ、きっとね。」
「そうね。」
ロゼットは頷き、そしてクロノに近づく。顔を寄せ、そっと口付け離す。
「クロノ、好きよ。」
「いきなりどうしたの?」
突然の言葉に驚いた顔をするクロノ。ロゼットは優しい、ただどこかはかない笑みを浮かべて言う。
「何となく、言いたくなったのよ。それより、他に、何か言うべき事があるんじゃないの?」
「そうだね。僕も好きだよ、ロゼット。」
そう言って、今度はクロノの方からロゼットに口付けた。
「ねえ、クロノ、アズマリアやサテラはあれからどうしたのかな?」
「・・・・・・僕達の生きていた時代から70年、もしかしたまだ生きている可能性もあるね。」
「会いたいな・・・・。けど、嫌味かな?生きてたとしても二人とも凄いおばあさんになってるだろうし、こんな若い姿見せるなんて。それとも・・・・・、心配するかな、英霊なんてやってる事に。どっちにしろ、会えないよね。万が一にもこんな戦いに巻き込む訳にも行かないから・・・・。」
「ロゼット・・・・・・・。」
クロノがロゼットをそっと抱きしめる。ロゼットは孤独を何よりも恐れる。彼女は強い、そして、側には常にクロノが居る。だから、その恐れを見せる事は滅多に無い。だが、時折ふとした瞬間にそんな一面を除かせる。
「ごめんね、クロノ。それから、きっと何度も言った事だけどもう一度言うわ。私は英霊になった事を後悔していない。あなたとずっと一緒に居られるから。」
そこで二人は、今度はどちらかともなく、深く口付けた。
(後書き)
迷いましたが士郎とは組ませない事にしました。形見の宝石もありますし、狂化していなかったとはいえ、バーサーカーを圧倒したクロノがいるのでその理由もないかなと。今回ちょっと話にだけ出しましたがサテラは今後どうしましょうかねえ?アズマリアは満足しきって死んだから英霊になって出るとかは無理でしょうけど。