「衛宮君、戦うのも逃げるのも自由よ。けど、できれば逃げなさい。シスター、パートナー、頼んだわよ。」
「ば、馬鹿!!俺達だけ逃げるなんてできる訳ないだろ!!」
そう言って、バーサーカーに相対する凛、士郎、ロゼットとクロノ。セイバーもシロウに指示を仰ぐ事なく戦闘態勢に入っている。
「セイバー、ここは共闘って事でいい?」
「ええ、お互いのマスターもどうやらそのつもりのようですし、目の前の相手は容易ではない。承知しましょう。」
言葉をかわすロゼットとセイバー。そして、バーサーカーのマスター、聖杯戦争の起源の家の一つであるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが口を開く。
「相談は終わった。それじゃあ、バーサーカーやっちゃって。」
イリヤスフィール、イリヤの命に従って、バーサーカーが吼えた。そして、彼が飛び掛ってくる。
「はっ!!」
それと相対するのはセイバー、巨大な石斧を振るう巨体に対し、細身のセイバーが見えない剣で切り結ぶ。
バアンバアン
ロゼットが援護する。だが、その弾丸はバーサーカーの肌にはじかれた。
「くっ、なら!!」
ロゼットは銃の照準をバーサーカーの目に合わせた。そして、その弾丸は狙いたがわず直撃し・・・・・・・“はじかれた”。
「「なっ!?」」
凛とロゼットの驚愕の声が重なる。如何にサーヴァントとはいえ、眼球で弾丸をはじくなど非常識にも程がある。だが、同時に、そんな事態に陥っても冷静さを失わなかった二人は動いていた。
ザシュ
ダメージは無かったとはいえ、眼球に弾丸が当たった瞬間、死角が生まれる。その隙をついてセイバーがバーサーカーの身体を切りつけ小さな傷をつくる。
「炎よ!!」
クロノが何時もの魔力弾ではなく、炎の魔術をその傷口目掛けて放つ。その炎を浴びてもバーサーカーは全く苦痛を表さず、炎は直ぐに散った。それを見てクロノは確信した。
「気をつけて!!こいつ、一定以下の神秘の攻撃を完全に無効化する特性を持ってる!!」
「なんですって!?」
クロノの言葉に驚く凛。バーサーカーの対魔力をもっていない。にも関わらず、浅いとはいえ傷口に炎を浴びてまったく効かないというのは考えづらい。そして、逆に宝具の真名を開放していないセイバーの一撃が多少なりとも効いた事からしても、単純な防御力でそこまででたらめなものを持っているとも考えづらい。眼球が弾丸を弾いたことからしても考えられる可能性は一つだった。
「へえ、よくわかったね。そうよ、私のサーヴァントはギリシャ神話最高の英雄ヘラクレス、並の攻撃、あなた達風にいえばAランクより下の攻撃は全部無効化しちゃうんだから。」
そしてイリヤはその推測を肯定し、面白そうに笑う。だが、凛の方には笑う余裕など無かった。
(冗談じゃないわ。ヘラクレスのバーサーカー!?反則にも程があるわよ。しかも、Aランク未満の攻撃が一切効かないだなんて。)
ロゼットの宝具、ゴスペルはランクBでしかない。当然バーサーカーには通用しないだろう。ロゼットの保有スキルである弾丸強化は不確定で頼れない。ならば、残された手段は一つだった。
「シスター、パートナーの封印を説くわよ。」
「凛!?その意味、わかってるの?」
「なんだ!?何かあるのか!?」
ロゼットの叫びにただ事では無いニュアンスを感じ取り叫ぶ士郎。ロゼットは静かに付けた。また、彼女は話しながらも効かないまでもバーサーカーの気を逸らす為に一人前線で戦うセイバーを援護し続けている。
「別にたいした事じゃないわ。ただ、早めに勝負を決めないと命を削られちゃうだけ。」
「なっ!?それって大事じゃないか!!」
何でもない事のようにいう凛に対して叫ぶ士郎。それに対し、凛は真剣な表情で冷静に答える。
「他に手段はないわ。どの道、このままじゃ、皆、死ぬわ。」
そう言われてはそれが事実なだけに士郎もそれ以上何も言えない。
「・・・・そうね、それしかないか・・・。」
そして、ロゼットが頷いた。現状で現実的な対抗策がそれ以外に無い事は事実だし、何よりも彼女が自分と“似たもの同士”、つまり言い出したら聞かない性格だという事に気付いていたからである。
「クロノ行くわよ!!できれば凛の命が削られる前に決めて!!」
「わかった!!」
ロゼットの叫びにクロノが答え、そして、宝具の真名を開放する。
「「命の時計(時を奪いし契約の証)」」
命の時計はマスターとロゼットが同時に真名を叫ぶことで発動する。そして、クロノの封印が解かれ、そこに最強の悪魔が降臨した。
(これがクロノの本当の姿・・・・・。)
凛はその姿に目を奪われる。目の前のバーサーカーにすら匹敵する圧倒的なプレッシャー。そして、同時に身体に感じる虚脱感。恐ろしい勢いで吸われていく魔力。
「はあああああ!!!」
クロノは空を駆けた。文字通り人の目にはとまらぬ速度で。そして、バーサーカーの頭の前に手を突き出す。その時には既にバーサーカーも反応していたが、ゼロコンマ何秒遅い。
「消し飛べええええ!!!」
絶叫と共にクロノ掌から極大の威力の魔力弾が放たれ、バーサーカーは頭部を消し飛ばされ倒れた。
「嘘、バーサーカーを一瞬で!?」
それを見て驚愕の表情を浮かべるイリヤ。それはその場にいるクロノとロゼットを除く全ての者も同じだった。
「驚いたわ、まさか悪魔を従えてるなんてね。」
だが、イリヤは直ぐ、その驚愕の表情を変え、余裕の表情に戻す。
「けど、バーサーカーが本気になったらこうは行かないわよ。」
「いまさら、何を言っても負け惜しみにしか聞こえないわよ。あなたの自慢のバーサーカーは敗れたわ。」
凛はイリヤの言葉をつまらないこけおどしと思って切り捨てようとする。だが、イリヤは余裕の笑みを崩さない。
「それはどうかしら?」
そして、その言葉と共に頭部を消し飛ばされた筈のバーサーカーがその頭部を再生させ、起き上がってきたのだ。
「バーサーカーはね。12回殺さないと本当には死なないの。」
「!!十二の試練・・・・・」
イリヤの言葉に凛はヘラクレスの伝説を形づくるその伝承がそのまま宝具となっている事に気付き、愕然とした。
「それから、今のバーサーカーはね、まだ狂化してないの。本気になったバーサーカーは凄いのよ。でも、それを見せるのは今度にして置くわ。」
「どういうことですか?」
イリヤの言葉にセイバーが訝しげな顔をして質問する。それに対し、イリヤは得意げな感じで答えた。
「バーサーカーを一回殺したのに免じて今回は見逃してあげるってこと。パートナーには興味が湧いたわ。今度戦った時は私のものにしたいわね。じゃあ、バーサーカー変帰るわよ。」
「ここまでやっておいて逃げるって言うの?」
言うだけ言って去っていこうとするイリヤを凛が引き止める。だが、それに対しイリヤはつまらなそうに言う。
「凛、いいのかしら、そんな事言って。あなたもう限界に近いんじゃないの?」
そのイリヤの言葉どおり、凛は既にかなりの魔力を使い切ってしまっていた。そして、彼女はイリヤの言う“まだ狂化させていない”という話を疑っていない。真名を自らあかすなど明らかに未熟がここだけ高等な駆け引きをするとは考えにくいからだ。このまま、戦えば負けないまでもただではすまない、そう凛は考えていた。
「それじゃ、また、会いましょう。」
そう言い残し立ち去る彼女等を凛達は見送るしかなかった。
(後書き)
ちょっと凛の描写が多すぎるというか、他のキャラの描写が少ないですかね?よかったらその辺ちょっと意見お聞かせください。さて、次回、士郎と組ませるかどうか、その辺迷ってます。
*弾丸強化の発動条件を変更します。これは、ロゼットの“正の感情”が極限まで高まった時とします。以前の条件だとピンチに陥ったら直ぐ発動しちゃいそうですし。
レス返しです。
>ケルベロスさん
聖杯戦争に関わる事に関して、役割自体は監視なので特にロゼットが目くじらを立てることも無いだろうと考えました。言峰の台詞に関しては教会の外で待っていたので聞いていません。でも、その辺、ちゃんと描写するべきだったかもしれませんね。
能力値を色々と修正しました。大きな変更点としてより原作ベース(一部混合)としてゴスペルをテトラグドラマンに変更してあります。
クラス:シスター
真名:ロゼット=クリストファ
性別:女
マスター:遠坂凛
属性:秩序・善
筋力:C
耐久:C
敏捷:C
魔力:D
幸運:B
宝具:A
<保有スキル>
【弾丸強化】
ランクA
補足説明:正の感情が極限まで高まった時、弾丸の威力を1ランク上げる。
【十字架による防御結界】
ランクD
【十字架による爆破結界】
ランクD
【十字架による捕縛結界】
ランクD+
補足説明:十字架を対象を囲む四方に設置する事で効力を発動できる。
<宝具外装備>
【セイクリッド(聖水を込めた弾丸)】
ランクE
補足説明:死徒や悪魔、反英霊など魔や悪の属性を付けられたものにはランクE+まで威力増大。
<宝具>
【テトラグラマトン(最後の希望をこめし弾丸)】
ランクB
補足説明:死徒や悪魔、反英霊など魔や悪の属性を付けられたものにはランクB+まで威力増大。
【命の時計(時を奪いし契約の証)】
ランクB〜A+
所有者の残りの寿命を魔力に転換し、契約した悪魔に与える代物。これにより、クロノは本来の上級悪魔の姿に戻って戦う事ができる。また、英霊化した際、命を削らなくても魔力を直接与える事でも効果が発動できるようになっている。
クロノ
性別:男
属性:混沌・中立
筋力:D 〜 A
耐久:C 〜 A
敏捷:C 〜 A+
魔力:C 〜 A+
幸運:C 〜 B
補足説明:普段はその力の大半が封印されているが、命の時計によってその封印を解いた時のみその魔力量や提供される命の時間によって本来の力に近づける。また、封印されている時でも弱い魔術なら使える。
<保有スキル>
自由行動B
マスターによる礼呪の縛りを直接的には受けず、ロゼットからも絶対的な支配力は持たない。ロゼットがいなければ現界できない。
呪文省略A+
悪魔はよほど大掛かりな魔術や魔法で無い限り呪文詠唱や結界、道具などを用いなくてもそれらを使用できる。