『式森和樹』
彼は謎に包まれている。
教会の代行者として活動していた。
という情報もあれば、『ミス・ブルー』に追い掛けられていたという情報。
他にも、コンビニでバイトしていたり、どこかの潜水艦が母艦の某傭兵のところでコックをしたりなどしていたらしいとの情報もある。
とにかく彼はいろいろなところで目撃される。
『式森和樹』
今現在彼は・・・・・・
「兄さん・・あっあっ・・イっちゃああああああうううう」
「式森君だめよ・・・そこ・・あっ」
「すご・・い・・」
・・・・・・鬼畜王になっていた!!
朝から何してるんだお前は?
まぶらほ〜神殺者〜第四話 幽霊の厄介ごと!前編
「眠い・・」
「自業自得だと思いますが?」
今部屋には和樹と水輝の二人が朝ごはんを食べている。
残りは自分の部屋に戻っていったようだ。
「そうなんだけどね・・・」
「・・兄さんいつか、必ず後から刺されますよ?」
作者もそう思う・・いやむしろ刺されろ!!そして死ね!
ゴトン!!
何処からかダンボールが落ちてくる。
「・・・そうならないように、気をつけるよ」
「無理!!ですね」
「・・・・・」
ゴトン!
またも、ダンボールが落ちてくる。
「さっきから何の音だ?」
「見たところダンボールのようですが?」
さっきから気になっていたのか、食事を中断し、物音の方向を向く二人。
「なんで、ダンボールが落ちて来るんだよ?」
「誰かの転移魔法でしょう」
「・・・いったい誰が・・」
ガチャ!
「和樹さんおはようございます」
昨日めでたく和樹のかかわりたくない女性第一位に選ばれた宮間夕菜が、鍵がかかっているはずのドアから入ってくる。
「こいつかよ・・・・」
和樹は頭を抱えながら疲れたように呟いた。
「・・・なんで、宮間さんがここにいるの?」
「夕菜です。」
「みや「夕菜です!!」・・夕菜が此処にいるの?」
「引っ越しです」
「「はっ?」」
和樹と水輝の二人の声が重なる。
「何処に?」
「和樹さんの部屋にです」
「・・・・兄さん?」
水輝が和樹に凄まじいまでの殺気を放ちながら尋ねる。
(不味い・・・)
その殺気をまともに浴びながらも今の状況をどうにかしようと考える。
バサ、バサ、バサ
その殺気を感じ取った鳥や犬といった獣たちが物凄い勢いで逃げ出す。
「・・なんでそうなるのかな夕菜?」
軽く胃を押さえながら夕菜に聞く和樹。
「夫婦ですから」
「・・・・・・・」
「それに言いましたよ。一緒に住むって」
「それは、本当ですか兄さん?」
「断じて違う!!」
和樹が力の限り否定する。
「どうしてそんなこと言うですか!?私達は夫婦なんですよ!!」
「何でそうなるんだよ・・」
和樹がまた頭を押さえながら答える。
「約束したじゃないですか!一緒に・・」
「話が進まないから少し黙っててくれ」
その言葉と共に和樹の姿が消える。
「和・・」
ドン!
夕菜の懐にもぐりこんだ和樹は夕菜の腹に蹴りを叩き込む。
そのまま夕菜は壁に激突し気絶する。
「ミッション・コンプリート」
・・・・いいのか和樹それで人として?
「・・・兄さんが女性をそんな風に扱うのは、はじめて見ました」
水輝が珍しいものを見たような眼で見る。
一応此処の和樹君、『鬼畜王』、『絶倫魔人』などと言われているが、悪党でもないし女の子は優しく扱うというモットーを持っている。
・・・そのせいで修羅場が起きていることをこの男は理解しているのだろうか?
「水輝これが女、人間に見えるか?」
「・・・見えませんね、ぎりぎりで電波ですね」
宮間夕菜は人間。と認識されていないようだ。
「そもそもこいつは何なんだ?」
身体中を対魔術処理を施した鎖で縛り口を猿轡でふさいだ夕菜を指差しながら和樹は疑問を口にする。
ちなみに荷物は窓から全部放り投げたらしい。
そのときたまたま通りかかった仲丸由紀彦に直撃したが些細な問題だろう。
「電波、もしくは危ない人」
水輝が見もふたもない言い方をする。
「・・・そうなんだけど」
流石の和樹もその答えに困る。
「冗談です。魔力の潜在能力が凄まじいほどです。本格的に修行すれば大魔術師になれるかもしれません」
「そうなのか?」
「はい。もしかしたら何かしらの神魔、もしくはそれに匹敵する何かを宿しているのかもしれません」
「そうですか・・」
和樹はそれが原因で厄介なことに巻き込まれないといいなあと思った。
和樹安心しろ。
賢人会議編はちゃんとやるから、ディステルとの絡みが必要だからね。
「どうしました兄さん顔色が悪いようですが?」
「いや、嬉しくもないオラクルを授かっただけだ」
「?」
失礼な!
「もががががが(何ですか、これは!?)」
キシャーが眼を覚ましたようだ。
「いや、そうしないと暴れそうだし」
「むぐぐぐ、ぐががががが(夫婦なんですよ!!あたしは妻です)」
身体を前後に動かして鎖を緩めようとするが効果はない。
精霊を呼ぼうにも魔力が待ったく、感じられない。
「むぐ、?もががががが(どうして、精霊が集まらないんですか?)」
「その鎖、魔力封じも備わっているから無駄だよ」
「ぬがが!!(そんな)」
「どうしてそれで会話が成り立つんですか?」
水輝が疑問を口にする。
「・・・聞くな・・」
とりあえず和樹は夕菜話し合いをはじめた。
和樹は此処は男子寮で、女の子は住めないし風紀が厳しいので、ばれると退学もありえるので一緒に住むのは無理だと説得したが、「どうしてですか?」とか「私達は夫婦ですよ」やら「浮気ですか?」などの言葉が出て平行線をたどる・・・いいのかこんな夕菜書いて・・・
まあほかのSSじゃあ最終的には夕菜とくっつくだろうから問題ないかな?
「じゃあ、向かいの開き部屋に住んだらいかがですか?」
いい加減夕菜に付き合うのが嫌になってきた、水輝が妥協案を出す。
いいのか、夕菜を和樹の近くに住まわすのは危険だぞ?
(結界などで閉じ込めておけば良いだけです)
そうですか。
「何用じゃ」
三人が空き部屋に入ると少女がいた。
年齢は八、九歳ぐらいの中世の時代かかった服を着ている。
その理由は彼女の身体が透けているつまり幽霊ということで納得できるだろう。
「結構、ホコリがすごいですね」
「まあ、空き部屋だしな」
和樹と水輝は幽霊を見事に無視し部屋の感想を口にする。
「あの和樹さん?」
「お前たち、帝国追放だけでは飽き足らず、せっかく手に入れた安住の地まで追い出すのか!」
幽霊の少女が怒りをあらわにする。
「じゃあ、さっさと掃除して終わらせるか」
「そうですね。私は床を掃きますので、兄さんは窓拭きをお願いします」
二人はそれぞれの役割を決め部屋を後にしようとする。
「ちょっとまて!!そこの二人!!」
自分を完全に無視している二人に幽霊が大声をあげる。
「何か言った、夕菜?」
「夕菜さん。此処は男子寮なんですから大声を上げるのは不味いと思いますが」
「私じゃありません、そこの幽霊の女の子です」
夕菜が幽霊の少女を指差す。
「?何言っているだ夕菜。幽霊なんかいるわけないだろう」
「兄さんの言う通りです。幽霊なんてプラズマで説明できます」
そう言って幽霊の存在を否定する二人。
ただし目線は、幽霊の方向を向いていないが。
「明らかに見えているだろうが!!無視するでない」
その言葉で諦めたのか、二人は目線を幽霊に戻す。
「どうするんですか?こんないかにも『トラブル持ってます』みたいな幽霊とかかわって」
「せっかくのナチュラルシカトも無駄になってしまったしな」
どうやら二人とも今までの経験から間違いなく厄介ごとに巻き込まれると判断し無視を決め込んでいたようだ。
「でっアンタ誰?」
和樹は幽霊に尋ねる。
「わらわはエリザベート。ノインキルヘン伯ゲオルグ・フリードリヒの娘じゃ」
「ノイン・・・何でしょう?」
夕菜は聞きなれない言葉に首をかしげる。
「知らんのか」
「ちょっと、そのあたりの知識は・・」
「たしか、十六世紀あたりのローマで栄えていた魔術や占星術を専門にしていた貴族だったはずですが」
わからない夕菜の代わりに水輝が答える。
「ほう、そちらの娘はこの無知と違って詳しいようだな」
エリザベートが感心したようにうなずく。
「まあ、それなりには」
水輝が言うにはこのエリザベートの一族は中々の家系であったが三十年戦争で敗北してからは坂道を転がる勢いで没落貴族になってしまったらしい。
「そんなことがあったんですか」
夕菜が感心したように呟く。
「そうじゃ、わらわも最終的にオランダで父上と共に息耐えたが魂だけが残った」
「どうしたんですか兄さん?」
先ほどから黙っている和樹に水輝が話しかける。
「いや・・・そんな話し始めて聞いたなあと思って」
「まあ、貴族といってもいろいろいますから兄さんが知らないのもいるでしょう」
「そなたは、水輝の兄なのか?妹と違って無知だの」
「・・・まあ俺が知っている貴族といえば『サンダーストロンガー姫』ぐらいだしな」
・・・・・おい
「「「誰ですか(じゃ)それは!!!」」」
和樹の呟きに三人が反応する。
「中世で栄えていた一貴族だが?」
「そんな姫聞いたことありません!!」
「わらわもはじめて聞く名だが」
「何言っているんだ二人とも」
和樹がやれやれといった、感じで答える。
「さっき、水輝が言ったじゃないか。貴族といってもいろいろいると、ただ名前が知られていなかっただけだよ」
「兄さん。サンダーストロンガー姫なんて一度聞いたら絶対に忘れません!!!!!」
「そうか?」
「そうです!!」
「そもそも、そんな貴族様が何で日本にいるんだ?」
和樹が話を進める。
「うむ。帝国からみればここは地の果てじゃ。しかも東洋の魔法は西洋のものとは、また違った力を秘めておる。言葉も覚え、知識も得た。家紋の再興も夢ではない」
エリザベートは遠くを眺めるような目になる。
(気持ちはわかるがな)
和樹はうなずく。確かにここには西洋とは変わった力があるのだが、距離があるため意外と西洋の魔術師たちの干渉は少ない。
そのため和樹の追っ手(女性も含む)にも見つかりにくいのだ。
「でしたら、この寮に住む理由はないのではないですか?」
水輝が疑問を口にする。
「以前はこの先にある館に住んでいたのじゃ。知っておるか、煉瓦で出来た門の」
彼女が言っているのは前から幽霊が出るとの噂があった洋館のことだ。
和樹にも依頼が来ていたが面倒なので断っていた。
(こんなことならしとけばよかったな)
和樹はいわゆる『何でも屋』みたいなことをしている。
理由は、そうでもしないと生活できないほど『金欠』なのだこの男は。
某無敵の奪還屋の二人以上に、
「そこでわらわは再興のための策を練っていた。ところがある日、大勢の人間がやってきた。わらわは必死に抵抗したがあっという間に追い出されてしまったのじゃ」
エリザベートが悔しそうに答える。
「だから、なんとしてでも奴らから洋館を・・」
「無理だ諦めろ」
和樹がエリザベートの意見が言い終わらないうちに残酷な答えを出す。
「何じゃと!」
「か、和樹さん?」
「あの館は訳あり何だよ。幽霊が出るとの噂もあるしそのせいで空き家になっていたんだけど最近どこかの不動産屋が買い取ったんだよ」
前に依頼を持ってきた仲介屋に見せてもらった館の情報思い出しながら言葉を紡ぐ。
「その不動産屋の名前はわかるんですか?」
「・・・確か、風椿不動産だったような」
記憶をたどりながら答える和樹。
「それって、玖里子さんの!!」
「ああ、おそらくちゃんとした手続きで『正式』に風椿のものになっている筈だ諦めろ」
「なっ!」
「そんな、和樹さんひどすぎます!!」
和樹の死刑宣告にも似た言葉にエリザベートが凍りつき夕菜が反論する。
「じゃあ、無理やり奪い返すのですか?そんなことをすれば、こちらが犯罪者として捕まりますよ?」
「「・・・・・」」
水輝の冷たい後押しに二人が黙り込む。
「まあ、エリザベートがここに住んで、夕菜が女子寮に入れば丸く収まるんだからそれで良いじゃないか」
「そんなの絶対にだめです!!!」
「そんな事言ったって、無理だろうが」
「私が何とかします!!」
「どうやってですか?」
「うっ・・それは・・」
どうあっても和樹と同棲したい夕菜は一人張り切るが和樹と水輝は完全に他人事だ。
「和樹さん私達の未来がかかってるんですから、真剣に考えてください!!」
「そんなこといってもなあ」
内心夕菜なんかと絶対に同棲したくない!和樹は真剣に考える気はなさそうだ。
「夕菜さんが女子寮にいけばすべて解決なんですから、それで良いじゃないですか」
水輝もいい加減大事な休日をこんな下らない事で潰したくないのでさっさと終わらせようとする。
「だめです!!そんなことしたら和樹さんと会えなくなります!!」
「俺はそうしたい」
「むしろそのまま、次元の彼方に消え去ってください」
「わかりました。私が玖里子さんを説得します」
和樹と水輝の本音の呟きを無視して夕菜が一人燃え上がる。
「絶対に、説得しますから待っててくださいね」
夕菜はそう言うと物凄いスピードで走り去っていく。
「無理だと思うがな」
「もうそのまま、帰ってきてこないでほしいですね」
走り去った夕菜を見送るながら二人は意見を言う。
風椿も仕事なのだ。それを一個人のわがままの為にやめるなんてことは、絶対にありえないし、あったとしても交換条件に和樹の遺伝子と交換と言い出しそうだ。
夕菜がそんな交換条件を飲むわけないので、結局無理だと二人は判断したようだ。
「あんたは、どうする?」
「どうするとは?」
和樹は失意のエリザベートに尋ねる。
「屋敷を取り返すのは無理でも、個人で持ち運び出来るぐらいのものなら何とかできるぞ」
「なっ、本当かそれは!!」
和樹につかみかかるほどの勢いでエリザベートが詰め寄る。
「ああ。一応女性には優しくを心がけているからな、出来ることなら何とかしてやるよ気になる事もあるしな」
最後の一言は小声の為ききとれないが、
和樹そんなんだから女難が次から次に襲い掛かって来るんだぞ?
隣で水輝が呆れた顔をしているし、
「なら鎧を、わらわの・・お母様の形見の鎧を取り返してくれ!!」
「鎧ですか?」
「うむ、おぬしたちの言っているのが最もだということはわかっている。だがせめて鎧だけは取り返したいのじゃ」
「わかった、じゃあ今すぐ屋敷に行こう」
「ちょっと兄さん」
和樹の意見に水輝が止める。
「なんだ?」
「何考えているんですか?そんなんだからいつも、いつも厄介ごとに巻き込まれるんですよ!!」
「・・いや、まあそうなんだけどさ」
和樹は困ったように頭をかきながら答える。
「はあ、兄さんに何を言っても無駄なのはわかってます。ですからさっさと終わらせましょう」
そう言いながら水輝は部屋を出る。
「いいのか?」
「ああ。さっさといくぞ」
和樹はエリザベートと共に部屋を出ながら答える。
「ああ、エリザベート」
「何じゃ?」
エリザベートが和樹に声をかけられ和樹のほうを振り向く。
「お前が館を追い出されたのって何時だ?」
「・・・・ちょうど二週間前じゃ」
「そうか」
そのまま館に向かう三人。
(仲介人の話じゃ幽霊が出たのは一週間前、しかも結界が張ってあるのに活動しているのが多数と聞く)
和樹は仲介人の話を思い出しながら歩く。
(・・・面倒なことにならなきゃ良いんだがな)
和樹の悪い予感は当たる。
あとがき
新年初投稿です。
しばらく見ないうちにSSが増えて驚いています。
こんな駄文がまだ受け入れてくれるか心配です。
遅くなりましたがあけましておめでとうございます今年もよろしくお願いします。
後、この話が終わったら、ちょっとだけシリアスの賢人会議編か、完全に壊れのメイド編に入る予定です。
最終的にはどちらもやりますがどっちが先にやりたいか意見はありませんか?
あればそちらを優先に書きます。
レス返し>
33様>山瀬のちーちゃんの出番はもう少し先です。
セイム様>面白いとの意見、ありがとうございます。
紫苑様>いくらなんでも、一人で暴走して勝手に切れたら誰だって引きますよ・・・
B−クレス様>あの偉大な鬼畜王に負けないように(まてがんばります。
D様>玖里子さんはどうしても脇役になってしまいます・・すいません。
suimin様>ありがとうございます。早くメイド編や賢人会議編にいけるようにがんばります。
奈菜様>何故か、和樹ほど平穏が似合わない男はいませんよね。
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