<二年前、ドイツのとある町にて>
ずがああん、どごおおおおん
静かな街に白い閃光が走り爆音が響く。
そんな地獄と化した街で黒い外套を身にまとい、右手のロングソードでグールを斬り裂きながら和樹は逃げていた。
「くそおおおお、がんばれ俺。『奴』に捕まったら間違いなくゲームオーバーだぞ!!」
内心、塩と水だけの生活を一週間ほど続けてそろそろ死ぬかもしれないなと思いながら『仲介屋』に仕事がないか聞いて見たところ、グールの大量発生したとの情報がありグール退治の依頼を受けたことを死ぬほど後悔した。
「・・・まさか『奴』と出くわすとはな」
死を覚悟しながらも、逃げ続ける和樹そこに、
「ほお、人間にしては中々やるではないか」
一人の男が和樹の前に現れる。
「貴様が、元凶か」
一目見てこの男の放つ瘴気が人間の放てるものではなく、死徒だと見抜いた和樹は一撃で倒すべく、剣を鞘にしまい抜刀術(ロングソードで使えるのか?)の構えをとる。
「くっくっく、我と戦う気か?死徒になって百年、人間ごときに負けるほど我は・・・・」
目の前の死徒が何か言っている途中だが和樹は凄まじい死の予感を感じて右に飛ぶ。瞬間、
ずごごおおおおおおおおお!!!!
白い閃光が和樹のいた場所を飲み込む。ちょうどその延長線上にいた死徒を飲み込みながら・・
「ぎゃあああああ」
悲鳴をあげながら死徒が消える。こうしてグール大量発生事件の元凶は最後を遂げた。
「何で避けるのよ!!?」
先ほどの破壊光線を放った人物が不満げに和樹に尋ねる。
「避けなきゃ死ぬわ、ブルー!!!!!」
どうやら和樹を追っていた人物は現存する『魔法使い』の一人蒼崎青子こと『ミス・ブルー』らしい。・・・さよなら和樹君。
まぶらほ〜神殺者〜 第六話 和樹の哀しい過去とメイドの島?
「だったら、これに名前を書けば良いだけよ和樹♪」
嬉しそうに青・・・(どがあん!)・・・ぶ・・・ブルーが一枚の紙を出す。
「書いたら俺の人生終わりだろうがああああ!!」
婚姻届をひらつかせるブルーに対して拒否する。
「大体俺はまだ結婚できる年じゃないわ!!」
「既成事実さえ作れば問題ないわ和樹♪」
「問題あるわああ!!!」
「大体俺は・・」
「他の女の事?別に今さらでしょう?これにサインしてくれれば私は過去は気にしないわ」
「俺が気にするわ!」
「そう・・なら力ずくでも」
そう言いながら右手から破壊光線を和樹に向けて放つブルー。
「なんとー」
そう言いながら何とかかわす和樹。
「くそっ、なんとか・・」
ガギィ!!
突然飛び出した黒い影の斬撃を受け止める。
「なっ」
黒い影は凄まじい速度で和樹に向かって剣を振るう。
がががががっが!!
「くっ、ちっ」
和樹は後退しながら何とか剣撃を防ぐ。
しかし後退させられるということはこの影の剣技は和樹と五分あるいはわずかに上というレベルだろう。
「舐めんなよ!!」
和樹は後に飛び間合いを開けながら剣を構える。
「飛燕剣 円舞 紅燐剣」
和樹の姿が、ぶれ二人になり黒い影に襲い掛かる。
「ふん」
時間差で襲い掛かる和樹のうち最初に斬りかかってきた和樹を横薙ぎの一撃で切り払い、時間差で後から斬り付ける和樹の一撃を左足を軸にして、こまのように回りながらかわす。
「・・・腕は落ちていないようだな、和樹」
黒い影は自分のわき腹の部分を見ながら呟く。
服の部分が切れていた。完全に交わしたはずだが、わずかに回避しきれなかったようだ。
「・・お褒めの言葉ありがとさん。んで何であんたがここにいるんだ?黒騎士」
嫌そうな顔をしながら和樹は黒騎士こと死徒二十七祖第六位リィゾ=バール・シュトラウトに尋ねる。
「姫様の護衛だ」
さいですか。内心当たってほしくない予想が当たり和樹は鬱になる。
「久しぶりね和樹。さあこの紙に貴方の名前を書いてもらいましょう」
ブルーと同じ婚姻届を持った見た目の年十四、五歳くらいの黒いドレスを着た黒髪長髪の美少女が現れる。そのとなりで「僕の和樹く〜んあいたかったよ〜」と白い格好をした変態がいたが和樹は無視をした。
「・・ひさしぶり、アルト・・」
黒の姫の名を持つアルトルージュ・ブリュンスタッドに話しかける。
「なして、俺がここにいるってわがったんどすか?」
絶望のあまりしゃべり方がおかしくなる和樹。
「それは、僕の和樹君に対する愛だよ!!」
ずがあん!! バギィ!!
「黙りなさい、フィナ」
「死にたいの変態死徒」
アルトとブルーがフィナをリンチする。
その光景を見ながら「この変態ナルショタ死徒はいつか殺す」と決心しながら彼女たちに気づかれないように後退する和樹。
何せ相手は、人類最強の魔法使いの一人に、吸血種最強の死徒二十七祖の一ケタ台三人。まともに戦って勝てるわけがない。
幸い『ガイアの怪物』は何故かいないチャンスだ。
これで逃亡確立〇%から0.00001%ぐらいにあがったので和樹は嬉しかった。
「姫様、和樹が逃げようとしてますが?」
黒騎士のチクリで和樹の望みは絶たれた。
「だめよ和樹、志貴と一緒に私の物になりなさい」
嫌です。
「和樹、私を殺した・げふん、げふん・・もとい犯した責任取ってよね」
「なに誤解を招くような事言ってるんだよこの吸血鬼!!!」
まるっきり否定できないが犯してはいないので反論する和樹。
いったい何をしたんだお前?
「貴様!!!姫様を犯しただと!!!許さんぞ和樹!!!」
「お前まで染まってんじゃね〜よ」
突如壊れキャラと化した黒騎士に突っ込みを入れる和樹。
「もはや、問答無用死ね和樹!!」
先ほどとは比べ物にならないほどのスピ−ドで斬撃を和樹に打ち込む黒騎士。
「なんでじゃあああ」
それを受け止めながら和樹は反論する。
その剣技はさながら舞のように一種の芸術と化していた。
おそらく剣を志すものなら二人の戦いこそが行き着く先だと感動するだろうそれほどまでに二人の剣技は美しかった・・・しかし、
「姫様を犯すだと!!そんなうらやましい・・・もとい非道なこと許すわけにはいかん!!」
「お前まで染まってどうする?誰がこいつらを止めるんだよ!!!」
なんとも情けない会話だお前ら・・
「和樹く〜ん今こそ僕らの愛を」
そう言いながら変態死徒ことフィナが和樹に飛び掛ってくる。
その光景を見ながら和樹は思った。
(何で、俺がこんな目に・・・ふざけんなあああ!!!)
そのとき和樹のなかで何かがはじけた。
具体的に説明すると水面にナッツが出てきてナッツがはじける(マテ
「これは?」
和樹の周りがクリアに見える。
和樹はまず剣でフィナを叩き落す。それと同時に襲い掛かってきているリィゾの剣を柄の部分で剣の刃の部分を押しそのまま受け流す。
「何?」
その流れるような動きに驚くリィゾ。
ちなみにフィナはブルーとアルトの二人にボコボコにされている。
(今のが、SEEDか?)
和樹が今の現象の確認をしながら剣を構える。
和樹何時からコーディネーターになった?
(これなら逃亡確立が1%くらいにあがる。いけるぞ!)
それで1%かよ。間違いなく無理だぞ和樹?
「よし。和樹逝っきま〜す」
愛欲と肉欲の生活を覚悟しながら和樹は戦う。自由を求めて・・・・
「・・さん」
「兄さん!!!」
「ん?」
目の前には何故か水輝と夕菜がいた。
「・・・なんで水輝がいるんだ?」
和樹は身体を起こしながら水輝に話しかける。
「あんたずっと気絶してたのよ。三十分くらいかしら。一人だけ目が覚めないからひやひやしたわ」
玖里子の言葉で何があったか思い出す和樹。
確か玖里子さんが今度の連休みんなで遊びに行かないかと聞かれた。
和樹としては正直何処にも行きたくなかった。
何時自分の居場所がばれるか溜まったものではないのだから。
だが自称和樹の妻電波キシャーが和樹とどこかに行きたいのか毎日行きましょうと脅してくる。
鍵を掛けた部屋にいるのは当たり前。
時にはトイレの中、また風呂の中に現れたりもううんざりな和樹君は仕方がなく旅行に行くことになったのだが、
「飛行機は?」
「あそこ」
玖里子が指指した先は見事に撃墜した飛行機の残骸があった。
「ひどいな・・」
和樹はさらに思い出す。
なんだかんだで玖里子の運転で南の島に行く事になったのだが突然飛行機に衝撃が走った。
和樹は何者かに撃たれたと直感で理解したが他の人達がパニックでまともに行動できず墜落し今に至るわけだが、
「和樹さん大丈夫ですか?」
「何とか・・・」
「ほんとに大丈夫ですか?兄さんうなされていたようですが?」
水輝が不安そうに和樹に尋ねてくる。
「大丈夫だ。ただ昔の夢を見ただけだ」
「昔の夢ですか?」
夕菜が聞いてくる。
「ああ。赤い魔女と、黒の姫に追い掛けられた過去だ」
「??」
「・・大変でしたね兄さん」
夕菜は何がなんだかわからない様子だが、水輝は和樹の言った人物にピンポイントで心当たりがあり、和樹に同情する。
「しかし、何があったんだ?」
大体予想しながら和樹は玖里子に尋ねる。
「さっき、凛と調べたんだけどね」
玖里子が言った。彼女は指で丸を作り、
「翼にこんな大きな穴が開いていたわ。エンジンカウルにも穴があって、中がやられていたわ」
「なんです?」
「どうやら銃撃を受けたみたい。対空砲火のようね」
「そんな・・」
夕菜が顔を真っ青にして驚く。水輝も苦い顔をしている中和樹は冷静だった。
(やはり銃撃か。これは俺を狙ったものか?それとも誤射?)
前者なら不味いが後者なら犯人を見つけ出しボコボコにする決意を固める。
いつの間にか凛も戻ってきておりこれからどうするか話し合う。
そんな中和樹が起き上がり、一人森の奥に向かう。
「何処に行くんです。兄さん?」
和樹の行動に気づいた水輝が和樹に話しかける。
「和樹さん。一人でどこかに行くなんて危険です。せめて妻である私と!!」
夕菜の戯言を無視して和樹は水輝に話しかける。
「トイレだが、・・・見たいか?」
「はい!!」
ゴス!
あほな返事をする夕菜を凛ちゃんが刀でどつく。
「何がいるかわかりません。兄さん気をつけてください」
「ああ」
和樹は手をぷらぷらさせて森の奥に入っていった。
「しかし、なんだってあんな夢を見たんだ?」
近くの泉で手を洗いながら和樹は考える。
あの後の記憶は何故かない。思い出そうとすると脳が拒否をする。
「・・・まあ此処にこうしている以上、何とかなったんだろうな」
和樹は頭を振りながら不吉な考えを否定する。
ぱん!
「?銃声」
がが!!
突然和樹に向かって銃弾が打ち込まれる。
「ちっ」
それを身を捻りながら交わしながら和樹は気配を読む。
「いきなりか、ちょうど良い。夢見が悪くイラついていたんだ。運が悪かったと思って諦めな」
和樹は黒鍵を出しながら構える。
流石に旅行に行くのにロングソードを持ち歩くわけには行かなかったらしい。
ダンダン!
銃撃を回避しながら和樹は敵の居場所を特定する。
「そこか!」
和樹は黒鍵を気配に向かって投げ出す。
ずがががああん!
「次ははずさない。死にたくなかったら出て来い」
普段とはまるで違う声質で殺気を込めながら和樹は気配に話す。
観念したのか気配が姿を現す。そこから出てきたのは、
「はっ?」
メイドだった・・・・・
あとがき
メイド編です。かなり長くなりそうですが見捨てず応援してください。
ブルーとアルトはかなりお気に入りですが本編に出すのはかなり先なので、こういった形でちょくちょく出そうと思います。すいません。
レス返し>
紫苑様>和樹の秘密はそのうち明らかになります。
33様>ナイチチ当主だってブラコンと言われるのが嫌なように水輝も面と向かって言われるのは嫌だと思いますよ。
suimin様>キースですか。確かに彼ならメイドだけでなく和樹にすら対抗できそうですね。
D様>まあこんな生活を続けていれば剣で結界の一つや二つ壊さないとやってけません。
MAGIふぁ様>安心してください。私も勝ったって実感ありませんから。
翁香様>サンダーは顔は良い部類に入ります。天は二物をあたえません。
sara様>そのとうりです。前オーフェンを読んでこれだと思い出してみました。