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吹雪の島 − 旧・小説投稿所A

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吹雪の島
− chapter5 −
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二人はまた五分くらいかけて洞穴から這い出てこれから行く景色を眺める

とうとう近くに林は途絶え広い雪原が広がっている

「いよいよだねマニューラ」「うん…行こうか」

二人は雪原に期待の眼差しを向ける
滅多に誰も踏み入れない地
そこに対する好奇心が彼等の体を動かす

「マニューラ」

「うん、冷えてきたね…寒…っていうかお宝目当てに無理なんてしないでよ、ただでさえベイリーフは草タイプなんだから…」

だが、これから何か起こるかのように雲が空を覆う
そしてパラパラと雪が降ってきた

ベイリーフは天を仰ぎ、はらはら、はらはらと落ちてくる冷たい花びらの華麗な舞いをうっとりしながら見つめていた

マニューラはそんな雪を慣れた様子で見つめて地面に降り積もるかき氷のような結晶の集まりを直に踏んで付いた足跡を後ろに見ながら進んでいく

低くなる気温が彼等の体力をジワジワ削っていく
草タイプの彼女の事が心配になり、彼が声をかける

「まぁたまたそんなぁ♪せっかく来たんだから何か見つけて帰ろうよ♪」

けれど彼女は何時もの明るい調子で跳ね返す、しかし心の端では草タイプ、と言うレッテルを張られ少し嫌な感じを身に覚える、も彼女は普段通り明るく接した

そんな気持ちを隠すように早く行こう、と彼女は彼の前を走る

「そうだね、何か見つけれればいいけど」

その様子に彼は苦笑いを浮かべ、彼女の後ろ姿を追った

彼女が動かす足と地面に残る足跡をマニューラは追いかけながら期待とベイリーフに対する微かな不安を感じながら歩いていた、草タイプのベイリーフにこの天気は辛いんじゃないかと言った不安である

そんな彼の気持ちをよそに雪原の中を進む彼等を舞い降りる雪が見送る

先程よりその勢いは増していた…


そして20分が経った

そんな短時間で穏やかな景色が一変
辺りは白銀の世界に成り果てていた

吹雪の島

そう呼ばれる理由が今彼等は身をもって体感していた

ゆらゆらと降っていた雪が今ではびゅうびゅうと音を立てながら彼等に襲い掛かる
二匹はお互い目をつぶりながら必死に歩いていた

と、彼が振り向いていつの間にか抜かしていたベイリーフの方を向きゆっくり歩き出した その先には辛そうに歩く彼女がいた

「大丈夫…ベイリーフ…?」

「大丈夫…だよ♪」

彼女は装ったように答える、表情や声色はいつもの彼女のように明るいものなのだが、激しい吹雪に声もかき消される消え入るような声が彼の先ほどの不安な気持ちを蘇らせる

「無理してるでしょ?」

「そんなまさかぁ♪大丈夫だってば♪」


寒さと痛み、これが彼女の体力を削っていく
図星だった、足は石のように固くなりすでに凄まじい冷気で感覚はなくなり、更にそれは痛みまでも感じさせる、その痛みや体に降りかかる寒風に体はすっかり弱っていた

「厳しいなら無理はしないでって最初に言ったよね?草タイプなんだよ?ベイリーフは」

彼が注意するように彼女に言った、吹雪の強風に負けないように大きく声を張り上げる

マニューラに草タイプだから、と種族を差別されるような発言
これには流石のベイリーフも我慢出来なかった
温厚だった表情が顰められる


「なに言ってんのさ…今だって依頼もこなせたんだよ………」

彼女はマニューラのしつこさに苛立ちを覚え始めていた
そしてその感情が言葉や態度に出る

目に張り付きそうな雪にも構わず、マニューラに現実を伝えるように話しかけた

「でも今はこの吹雪だよ?これでベイリーフが倒れちゃったらさ・・・・・・心配なんだよこっちも――だから」

マニューラが変えようのない現実を告げる
だが、言い終わる前に彼女の言葉に遮られた
必死に放たれた言葉に一瞬驚くが、すぐに落ち着きを取り戻す

「心配要らないって…っ」

そのままベイリーフが話し続ける
言葉は淡々と出てくるが、彼女の声に重みが増す
よく見れば足が震えていた

「足見せてよ、赤く腫れ上がってるはずだから」

彼女の異変はマニューラにはすぐ分かった
この積雪の中、常に冷たい雪が体に当たる
寒さに慣れていない彼女の体は霜焼けでも起こしているはずだ
そう思った彼は、ベイリーフの足へ手を伸ばす

「っ!触らないで!大丈夫だって言ってるでしょ!?」

「何ムキになってるの?」

その手を彼女は振り払う
息遣いは荒くなっており、マニューラを睨みつけている

「草タイプだから寒いのに弱いーなんてまぁたそんなお堅い理論だけで言っちゃってさぁ 馬鹿にしてるの…?今私はここに立ってるの、分かる?」

草タイプは寒さに弱いと言うのは本当の事だ
けれど、弱い者と決めつけられる事にベイリーフは嫌悪を覚えていた

更にこの島に来る前
探険をしたいとマニューラが言っていた
その彼の好奇心を自分のせいで潰したくないとも思っていた

平気と思わせて彼を安心させたい、と
だが感情任せに言ってしまったせいで、それは悪い方向へと流れていく

お堅い、だの分かる?だのベイリーフの発言にマニューラもカチンと来たようだ

「こっちが心配して言ってるのも分からないわけ?草タイプのくせに…」

「ほらまたそうやって草タイプってレッテル貼ってさぁ…」

心配する気持ち
心配されたくない気持ち
これ等がぶつかり合う

「でも本当の事でしょ?」

「何回言えば分かるわけ?そっちの心配なんていらないから」

「そもそも心配なんてしてないし」

「………」

急なマニューラの対応にベイリーフは口を詰まらせた

「ふん…」
マニューラは勝ち誇ったように鼻息をつくと後ろを振り向き歩き出してしまった

「…………ばか」

聞こえないように呟いて、ベイリーフもマニューラに続いて歩き出した






そして時はさらに経った

ベイリーフは冷え切った体を懸命に引きずって歩いていた
見失ったマニューラを探し続けてどれくらいになっただろう いくら呼んでも返事がないから見当をつけた方向に歩き続ける事になってしまった 見当といってもこれまでずっと真っ直ぐ歩いてきたんだから、とにかく真っ直ぐ進めば良い と言った物だったのだが

ひどい吹雪の中で探検隊として自分のした事に内心後悔しながらもマニューラを探し続けているのは真面目すぎるあの黒猫が心配だったからだ

あんなケンカをした後だ、マニューラならずっとその事を引きずっているに違いない 草タイプの自分の苦しみなど分かっているのだろうか おまけにマニューラは氷タイプで寒さには慣れている もしかしたら自分より先にずんずん進んでいるかもしれない

不安と僅かな恐怖を身に覚えながらベイリーフは考えていた

-今までどんな時も二人でがんばってきたっていうのに今更そんなこと言わなくたっていいじゃないか…依頼だってこなせたんだ 吹雪がなんだ 何か見つけてマニューラに思い知らせてやるんだ……-

喧嘩したばかりというのがベイリーフのやる気を削いでしまう しかし今はそんなくだらないことを考える暇はない お宝を見つける その為には一刻も早くマニューラを見つけなくては

怒りが自然にやる気へと変わっていた

ベイリーフは出来る限りマニューラに近づこうとその足を早めた


<2013/01/26 23:30 ジイア>消しゴム
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