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吹雪の島 − 旧・小説投稿所A
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吹雪の島
− chapter4 −
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「ったくさぁ…雪合戦して遊ぶ暇ないってわかってんでしょ…」

「そうカッカしなさんなぁ♪怒ってばっかじゃまともな仕事はできんぞ〜」

「そっちこそ…ふざけてばっかじゃまともな仕事はできんぞー…… はぁ…」

が実際二人ともこの依頼に対する気力は高いところに達していた 依頼主のバクフーンに直接会ったことが二人のやる気を高めていたのだろう

あのバクフーンの喜ぶ顔がみたい それが今の二人の任務でもあり望みでもあった

二匹はお互い分かり合ったように見つめ合いながら歩いていった

横を見渡す限りは木ばかりだった 木の陰に隠れて彼らをねらっている野生のポケモンもいるかもしれない

二人はその可能性を十分考えた上で仲良く話しながら歩いた
しかし道中野生のポケモンに会うことはなくいたって平和な時が流れていた

と、ふと彼女が彼に声をかけた

「マニューラ…あれ……」

彼女が指さした方を見ると木々の切れ間に見えた一見雪の山のようなところにぽっかりと穴があいているのが目に入った

そして改めて下を見ると足跡がその穴に向かって曲がっている

二人は進路を変えて再び足跡に沿って進み始めた

歩みを進める度に木々の切れ間が無くなっていきぽっかりと空いた穴の全容が露わになってくる

洞窟だ

目の前まで進み、そして立ち止まる 足跡は洞窟に吸い込まれるように続いていた

二人は見つめ合い、そして互いに頷くと洞窟へと足を運んだ

洞窟は左奥へと続いているようだった

二人は万が一野生のポケモンに襲われないよう左の壁に張り付き忍び足でひたひたと洞窟を進んでいった

単純な洞窟だった 大きなポケモンでも十二分入れる程の広さがあり上にはポタポタと垂れた水の固まった氷柱がたくさん生えている

左の壁沿いに歩き初めて五分は立っただろうか

マニューラ、その後に続いてベイリーフ マニューラは後ろのベイリーフにハンドサインで「止まれ」と指示した

言葉に出さなかったのはマニューラが見つけた物に気付かれないようにするためだった

「なになに…?何か見つけたの?」

後ろに続くベイリーフにはマニューラと洞窟の壁が邪魔をして見ることが出来ない

ハンドサインの意味を読みとったベイリーフは声を小さくして話した

「シッ…静かにして……見てみて…」
「ぅん…?」

ベイリーフは長い首を伸ばしマニューラの横に乗り出しマニューラが見ていた光景を確認する

「あっ…」

思わず口に出てしまった ベイリーフが見たのは一匹のポケモンだった

青い体に顔の周りには白くもじゃもじゃした体毛が生えている

こおりわりポケモンのトドゼルガだ

忍び足で近寄り運良くトドゼルガは後ろを見なかったので彼らの存在はバレずに済んだのだがその訳はその奥に隠れていた物のせいだった

その奥にいたのは……怯えた表情を浮かべた子供のマグマラシだった

「ベイリーフ!」
「うん!」

たがいにアイコンタクトで指示を示すと二人はすぐに洞窟の陰から飛び出して行動に出た



まずベイリーフは「リフレクター」と呼ばれる防御壁を子供のマグマラシにかける

そしてベイリーフは頭の葉を振るって小さな葉の刃を飛ばした

「はっぱカッター!」

ベイリーフが放った「はっぱカッター」はトドゼルガに向かって飛んでいき気をそらすには十分な程に命中する

ベイリーフに邪魔されたトドゼルガはぐるる…と不満げに喉の奥から野太い声を響かせながら機嫌の悪そうな顔をしてマニューラ達の方へ振り返る

その時マニューラは既にトドゼルガに向かって一直線に走り出していた

トドゼルガから見て左側から走り込むマニューラ そして距離が縮まると四足の体制から跳ぶようにトドゼルガに飛びかかりその鋭い鉤爪を振るった

しかしトドゼルガは体を後ろに反らすように彼の「きりさく」攻撃を既に見切っていたかのように寸前でかわした

攻撃を交わされ飛び込むようにうつ伏せにトドゼルガの近くに倒れたかに見えたが彼はその体制のまま前転するように受け身をとる

トドゼルガは自分の右側に転がり込んだマニューラを踏み潰そうと大きな腕を振り上げマニューラに向かって振り下ろした

咄嗟に避けようと体を反らしたがその腕はマニューラの上半身にずん…と降ろされた

「ぐぁっ!」

寸前に腕を前に回し、雪が衝撃を和らげ圧死する事は免れたものの強い衝撃が彼に降りかかる

トドゼルガはマニューラを押さえつけるように右の腕を地面に押し付け同じように左腕も使いマニューラの腕を押さえ身動きできないようにするとマニューラに顔を寄せ大きな口を開けた マニューラの顔にムワッと生臭い息が吐きかかる

腕を押さえられ抵抗も出来ない中長く、太い牙を持つ口を目の前で見せられ、歯を食いしばり、やられる―――そう思ったときだった

「マニューラ!」

ベイリーフが再び「はっぱカッター」を飛ばしトドゼルガを牽制する

目ざとさと痛みを押さえるように左腕で顔を覆うトドゼルガ

そしてその時にマニューラに対する荷重が緩むとその間から押さえつけられていた腕を何とか抜き出しその鋭い鉤爪を自分を押さえている大きな腕に食い込ませた

トドゼルガが「ぐおぉっ!」っと痛みの余りに吠え傷を押さえるように右腕をあげる

その隙を見てマニューラは寝転んだ体勢のまま左に向かってグルグルと向きを変えながら回ってトドゼルガとの距離を遠ざけていく

そして起き上がると、その横にはベイリーフが心配そうに立っていた

「大丈夫?マニューラ……」

マニューラは肩を痛めたのか苦しそうに右の肩を左手で押さえていた

「大丈夫…さぁちゃっちゃと決着をつけちゃおう ベイリーフ!援護は頼んだよ」
と、言うと彼は拳に冷気を貯め始めトドゼルガに向かって再び走り出した

「うん♪」

その様子を見て彼女は安心したように答え、リフレクターを彼にかけてやった

右腕の痛みにマニューラの接近に気づくことが出来なかったトドゼルガが前を向いた時にはマニューラが目の前に拳を繰り出すのが見え、思わず咄嗟に目をつぶる

そのままマニューラの「れいとうパンチ」は目を閉じたトドゼルガの右目に直撃した

目潰しを食らったように体を揺らがせるトドゼルガ、一歩大きく退くと痛みのあまり下を向く そしてはぁ…はぁ…と白い息を漏らしながら今使うことの出来る左目でマニューラを睨みつけた

トドゼルガに目がくらむほどの憤怒が込み上げてきた

しかし右腕が傷つき、目潰しまで食らってしまった おまけに相手は2体……分が悪いと判断したのか「覚えてろ!!」と大きな捨てゼリフを残すように鳴いた後ようやく洞窟を後ろに逃げるように後を去ったのだった

「ふぅ…危うくやられるところだったよ……」

そう言いながらマニューラは背中にしょったトレジャーバッグからオレンの実を取り出しそれを口に放り込んだ

そしてそれを咀嚼し飲み込む、何となくだが上半身にあった痛みが消えた気がする

「ふふん♪私がいなかったら今頃昼飯になってるところだったよ♪」

「そうだね…ありがとうベイリーフ…」

「どういたしまして♪肩は大丈夫?」

「うん オレンの実のおかげで最初よりは大分ましさ」
「ならよかった♪っと……」

今頃思い出したかのように二人はマグマラシの方を振り返った

「……」

マグマラシは口をぽかんと開け黙ったままマニューラ達の方を向いている

しばらくそのまま静かな空気だったが

「ダメじゃないか!お母さんを心配させて…まだ小さいのにこんな深いところまで…」

マニューラが怒りに満ちた表情を浮かべて口火を切った

「ごめんなさい…ひぐっ……」

マグマラシはベソをかいているようだった

彼はマグマラシの目の前まで歩いていき怯えるマグマラシを殴りつけようと拳を振り上げマグマラシに向かって振り下ろそうとした…そのときだった彼はマグマラシが手に持っているものに目がついた

マグマラシが持っていたのは草のようだった 根っこから引き抜いたのか白い根が下の方から伸びている

「草…?」

彼は口をぽかんと開けたままそれを見ていた とその時

「その草…薬草じゃないかな?」

草タイプの彼女にとって簡単な答えだった

「ひっぐ……お母さんがぁ…風邪引いてるから良くなるかな…って……ひぐっ……」

「だからって一人で…」

「まぁまぁマニューラ……ごめんね♪お堅い性格なんだ♪君はお母さんのために薬草を取ってこようとしたんだね…?」

マグマラシはずっとすすり泣いていたが彼女の言葉を聞くとコクっと頷いた

「………」

彼は上に上げていた拳を力無く下げ なんだか自分がしようとしていたことがくだらない事のように思えつい黙り込んでしまう



「ドンマイだよ マニューラ……」

「あぁ…ごめん…取り乱しちゃって……マグマラシ君…ごめん…」

「大丈夫…です あなた達は探検隊ですか…?」

「そう…、君のお母さんからこの依頼を受けたんだよ」

「お母さんが………?」

「自分の事より君の身を案じてこの依頼を出したんだろうね」

彼女が口を挟む

「お母さんにとって一番大切なのは君なんだよ」

「風邪のお母さんを早く直してあげたいのはよく分かる、でもそのお母さんを心配させるような事をしてはいけないよ」

彼が諭すようにゆっくりと話した

「ごめんなさい…」

泣き止んだマグマラシは改めて自分のしたことを詫びた

「分かれば良いんだ 二度としないって誓えるならね……さぁお母さんが待ってる、帰ろう?」

そう言いながら彼は左の胸についた探検隊バッジを手に取った そしてマグマラシに向かって上にかざす するとバッジが輝きマグマラシの体を光が包み込む

「あなた達のチーム名は…?」

光の粒子に包まれたマグマラシがふと訪ねる

「フリップズ…フリップズだよ」

ニッコリと彼が答えた

「ありがとうございます…フリップズさん……」

「バイバイ…お母さんと良いクリスマスをね♪」

彼女が言った後マグマラシを強い光が包み込み上へと消えていった


<2013/01/26 23:29 ジイア>消しゴム
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