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吹雪の島 − 旧・小説投稿所A

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吹雪の島
− chapter7 −
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ラプラスの責めはそれだけではない、まだ顔しか味見をしていないのだ、ラプラスは舌をマニューラの体に巻き付けたままぐちゅぐちゅと唾液を彼に馴染ませて何度も甘噛みを繰り返す

マニューラはと言うと痛む体に舌を巻き付けられ締め付けられるような痛みに耐えていた、舌もやはり立派な筋肉の固まり、それにきつく搾られて彼は苦痛に耐える

牙は無いにしろラプラスの顎の力に彼の体は悲鳴を上げてミシ…とのし掛かられるのとはまた違った痛み、ラプラスの唇に挟まれ部分箇所が強く痛み、声を漏らす

マニューラの柔らかい肉質に満足げに目を閉じるとラプラスは再びマニューラを口内に舌で引っ張り入れ上顎に舌で彼をギュウ…と圧迫し始めた

「うぅ…が…」

再び体全体が締め付けられのし掛かられた痛みが蘇ってきた、しかしそこは暖かい口内、柔らかい舌と上顎に挟まれ先ほど唇に挟まれる痛みよりはマシだった



ラプラスが上を向いて口内に傾斜を付けるとすでに唾液まみれの彼は易々と喉に向かって滑り落ちる、しかし狭い喉に差し掛かるとラプラスも舌や喉の動きに力を入れ彼をぐくっ…んくっ…と喉から食道へ送っていく

狭い喉に圧迫されるものしかかられた時に比べたら楽だった、それは柔らかい喉の内壁が包み込んでいたからなのだろう、彼はすでに痛みを感じずただ呑み込まれていった

ゴクリ…

顔から上半身にかけて呑まれ始め、足の先まで呑み込まれたのに時間はさほどかからなかった

柔らかい内壁に包まれ彼が胃袋へと運ばれていく

寒さに凍えていた彼にとって胃袋はとても暖かかった

が、鼻を突く何か酸っぱい様な臭いからここに居座り続けたらどうなるかは大体予想がついた

しかし体が動かない 腕は体をかばった時に酷く痛めてしまったし、脚が痛みで動かないのはのし掛かられた時にあらぬ方向に捻ってしまったからだ

今は寝返りでもするように体をもぞもぞと上体を動かすのが精一杯だった

気付くと体は黄色い粘液に浸かっている

不思議と痛みはなかった 気絶してしまいそうな程のめまいも、異常な吐き気もいつの間にか退いていた

しかし体・・・・・・体毛の生え際がビリビリと痺れるような感覚に体の自由は奪われていた

が、その感覚―――体が麻酔にでもかかったような感触はとても心地よく、動けない事に苛立ちを覚えることはなくマニューラは満足げにうつらうつらとしてしまう

何もない真っ暗な空間はマニューラを阻害するものも何もない

いけない・・・と思いつつも眠気は体に容赦なく降り懸かってくる

ーごめんねベイリーフ…ベイリーフまで巻き込んじゃって…自分が早くベイリーフの事を気遣っていればこんな事には・・・でも自分だって頑張って戦ったんだよ?信じてよベイリーフ……ー

マニューラはそう呟いた後その意識は途絶えた

ラプラスは久しぶりの食事に満足していた これで一週間は持つだろう おまけにもう一匹食事が出来た しばらくは食事の心配がいらない

腹にマニューラを蓄えたラプラスは遠くにいる凍り付いてしまったベイリーフにゆっくりと近付き始めた

ノシ…ノシとラプラスの足音だけが氷の地面に響いていた

霧も止んだこの状況、端から見てはラプラスと氷付いたベイリーフだけが見える

「(…マニューラ…)」

ベイリーフは気絶した中夢を見ていた、夢の中でさえ意識が遠くなる中命の灯火が消えかかっている、しかし最初から感じていた彼女の願い…マニューラと一緒に生きていたい、自分は誰の為でもなくて良い、彼の為に――

そんな彼がラプラスに呑まれてしまったなど考えてはいなかったが彼女は心の奥に秘めた力でただマニューラと生きたい、暗くなる夢の中必死に考えていた

相変わらずラプラスは結晶と化した彼女に近付いていった


その瞬間 一筋の光が雲を切り裂いた
雲の切れ間から太陽が顔をのぞかせ、暗い部屋の中で明かりをともしたように雪原を照らす
ラプラスは天を仰いで太陽を驚いたように見つめる

流氷から、静かに浮かぶ湖の水面から、太陽の輝きが綺麗に反射して氷付いた彼女に降りかかる

-「……っ、…?」-

氷に閉じこめられたベイリーフが意識を取り戻しうっすらと氷の中で目を開く、

「っ…!?マニューラは…?」
朧気に開く視界には近付いてくるラプラスしか見えない、ラプラスも意識を取り戻したベイリーフに気付かないままただ空を見ている


「くっ…ぅぁぁあああ!!」

シュゥゥゥゥ…と白い輝きが氷の表面を照らし出し放射状に光が漏れていく、やがて光は大きくなり…

パリン!!

とベイリーフを包んでいた氷がバラバラに砕ける、そして―――

ドスン…と黄緑をした足を踏み出し砕けた氷を踏み潰す
白銀の世界に、巨大な一輪の花が咲く

首の周りにはピンク色、黄色、白色で彩られた6枚の美しい花びらがあり竜脚類のような姿をしたポケモンがそこにいた

「はぁ…はぁ…マニューラ…?」

目の横に涙をためてベイリーフ、メガニウムは彼女の仲間の姿を探す、しかし目の前にいるのは驚いた表情を浮かべたラプラスだけだった…

「マニューラ…!」

彼女は目をつぶり歯ぎしりをするとキッと鋭い眼光で開いてラプラスを睨み付ける、その際に一筋の涙が頬をつたい地面に落ちた

ラプラスは怒りに満ちた彼女の目を冷たく見据えると口元に氷の塊を瞬時に作り出しメガニウムに放った、しかし冷静さを取り戻したメガニウムは軽い足取りでヒョイと避ける

ラプラスは次に口元に冷気の粒子を溜め始める

はぅ…と呼吸をするとビームを改めて吐き出してそれを避けるメガニウムにビームを出したまま口を動かして彼女に当てようとした

「んっ……ハァァアッ!」

メガニウムは目をつぶり体が光に包まれると目を開く

黄色い目が更に明るく輝いて念を送る、すると目の前に四角の形をした防御壁が現れ、メガニウムを包む

それはベイリーフのリフレクターの時とは違った色をしていた

れいとうビームを弾くようにビームを防ぐ
直線状だったビームがメガニウムと壁の間に当たると放射状に広がって青白いビームが薄く消え入った

その技――ひかりのかべはメガニウムにかかる負担を和らげる

「はぁぁぁぁあ!!」

彼女は天を仰ぎ大きく声を天に捧げる

すると太陽はカッとその輝きを強くして光を地面へと射していく

にほんばれと言う技で太陽の輝きがより一層強くなり、ラプラスが再び驚いたように空を見つめる、太陽の光が彼女の口元に収束するように集まると彼女は口を前に突きだし白き輝く光線を吐き出した

ソーラービームと言うその技はラプラスの顔に直撃してその巨体を地面に倒す

「まだまだ…!」

心の中で「体から力が湧いてるみたい…」と彼女は感じてラプラスにゆっくりと歩み寄った

メガニウムの周りを赤い花びらが舞いその一枚一枚が葉っぱカッターのようにラプラスに繰り出される、それは「はなびらのまい」と言う技でラプラスの顔や鰭、腹の辺りにも当たりラプラスの肌を切り裂いていく

クァァァ!

ラプラスが痛みのあまり叫び声を上げると痛みや苦しみを振り切るように冷凍ビームを闇雲に放つ

メガニウムは立派な四肢で攻撃をかわしながらラプラスに向かって走っていく、そして…

「マニューラを返して!」

ビームや氷のつぶてをかいくぐりながら体当たりをするメガニウム、体格はラプラスと同じくらいで強烈な体当たりを繰り出す

巨体同士が勢いよくぶつかってラプラスは地面に倒れた
しかしメガニウムは立派に生えた花の花弁から緑色をした蔓をだしそれを鞭のようにしてラプラスの腹に繰り出していく

「はぁ…でぃ!はぁ、えぃ!…」

ラプラスの黄色っぽい肌に赤く内出血したように赤い痣が残っていく

彼女は腹だけじゃなくラプラスの顔や頭にも鞭を繰り出した、バチン!と鋭い音が辺りに響き、静かな雪原の空間を引き裂くように鞭の叩く音だけが支配する

「マニューラを返してよ…!返せ!返せぇぇ!!、はぁ…はぁ…」

このままでは殺してしまう、しかしマニューラを食べてしまったこのラプラスを生かしては置けなかった、しかしメガニウムは一旦鞭を打つのを止めてラプラスの目を見つめた

そこには生き物として生きる純粋な瞳が映っていたが飢えた獣の様に冷徹な光が宿っていた

「はぁ…はぁ…」

頭が痛みクラクラと意識も朦朧としたラプラス
ダメージが吐き気に変わり、激しい吐き気がラプラス襲う
腹の膨らみが痣だらけの喉へと移動し…

口から粘液の塊が吐き出された
何度か咳を零した後、ラプラスはその場から去るように重い足取りで湖に戻っていった

「マニューラ!」

不透明な粘液に包まれた塊
メガニウムはそれが、すぐにマニューラだと気づいた
彼は目をつぶったまま気絶したようにぐったりと倒れている
体表に生えた毛はボソボソになり、僅かに見えている皮膚も赤く腫れ上がりそこの毛が禿げていた

「…」

「マニューラ!お願い、私を一人にしないで、もうすぐ…もうすぐクリスマスなんだよ…!やっと二人で…ねぇ、マニューラったら!」

シュゥゥゥ…

「っ…何…?」

メガニウムのかけていたトレジャーバッグから白い光が輝く、その光はマニューラに憑く様に移って彼の体は光に包まれる

マニューラは目を食いしばるように苦しそうな様子を見せながらかすかに目を開いた

「あ、…ベイ…」

「マニューラ!」

意識が戻ったマニューラはベイリーフ、いやメガニウムを見つめる、気絶から目が覚めて輪郭ははっきり見えない物の、彼の目の前にはベイリーフと違うポケモンがいた

「あれ、ベイリーフ…やっと進化したんだね…」

呑気に話しかけるマニューラ
彼が生きていた
その嬉しさにメガニウムは、彼に抱き着いた
ベトベトだったが気にしていない

抱きつきながら彼女は、良かったと何度も繰り返して大粒の涙を零した

「マニューラ…良かった…!」

彼女は進化して立派になった顔で何度も頬擦りをした

「ベイリーフ…ちょっと苦しいよ…」

「あっ、ごめん…」

と、メガニウムは抱いていた腕を緩め顔を少し離すとマニューラを見つめている、前までは同じ大きさだった彼女が進化して自分よりも体格の大きくなった顔や立派な花びらの飾り――そして金色に輝く瞳、見た目はすっかり変わってしまったが彼にはベイリーフだと分かっていた

「でも私はもうベイリーフじゃないよ…マニューラったら…♪」

「はは…ごめんね、メガニウム…」

「ふふっ…良かった…」

「大分やられちゃった…生きてるのが不思議くらいだよ」

「私が気絶してた間に沢山傷ついたみたいだね…(野生のポケモンは弱いって言ってたけど念の為持ってきて良かった――)」

メガニウムの鞄の中に入っていた元気のかけらは輝きを失い黒い結晶と化していた

「メガニウム、さっきはごめん、自分があの時…」

「良いの…お互いピンチに陥ったけど二人ともまだ生きてる…結果オーライでしょ?、さぁ、帰ろうよ」

「うん…あ…」

マニューラは彼女の言葉を聞いて立ち上がろうとするもフラフラと地面に尻餅をついてしまう

「ふふ…」

メガニウムはそんな彼を見て優しく微笑むと彼の首根っこをくわえて自身の背中に優しく乗せた

「ありがとう…メガニウム」

メガニウムはゆっくりと歩き出す、彼女の視線の先には天に続く白い光の柱、不思議のダンジョンの出口があった


<2013/02/20 00:51 ジイア>消しゴム
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