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VD − 旧・小説投稿所A

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VD
− 9 - 捕食完了 −
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「うぐ・・・」

彼女の口内に入った僕を待ち受けていたのは、舌責め。
体に巻き付いたかと思えば、次には上へ下へと僕の体を押しつける。
決して手加減などない・・・ただ、獲物を味わう為だけの舌使い。

『・・・いい味・・・』

それは獲物の力で止められるものでは無い。むしろ、下手に動けば体を痛めてしまう・・・
経験上、それを知っていた僕は、ただ動かず、舌のされるがままになっていた。
そう・・・まるで飴玉のように。

「うう・・・ウヒィ!」

だが、流石に・・・噛み跡がついた首に舌が入り込むのは、くすぐったくてしょうがない。
彼女の舌は僕が横になれるほど広く分厚い。
だが、柔らかく柔軟なその舌は形を変え、首や脇の下に上手く入り込み、執拗に舐めてくる。
・・・これにも僕は、快感を感じた。
・・・あまりにもくすぐったいはずなのに・・・なんだか、物凄く・・・幸せ・・・

『・・・あら〜?これも気持ちいいの?』

「え・・・はっ!」

・・・気がつけば、僕は舌に抱きついていた・・・
ヌメヌメした、大きく、柔らかい舌・・・

『じゃあ・・・もっとやってあげる♪』

そんな声が響いた直後、舌がさっき以上に体に巻き付き、締め上げてくる。

「うぁぁ・・・うぐ・・・」

息が出来なくなる程強い締め付け・・・だが、舌の柔らかさのせいか、大して苦しくない。
むしろ、もっとやって・・・いや、やって欲しくない!こんな事を喜ぶなんて・・・

『どう?もっとやって欲しい?』

「だ・・・誰が・・・こんなにも気持ち悪い事・・・っ!」

認めてはいけない。"食われる"という行為に快感を感じるなんて・・・
もしそうなってしまったら、僕は・・・異常者だ。

『あら、そう・・・じゃ、もう呑み込むわね♪』

必死に否定した僕の言葉を聞き、彼女は言う。
直後、巻き付いていた舌が離れ、僕を上顎に押し付けた。

「ん・・・」

そのまま、舌の先から奥に向かって力がかかり、どんどん奥へと押されていく・・・
そうして・・・僕は・・・

ゴクリ・・・

・・・呑み込まれてしまった。

「っ!!!」

喉に押し込められた僕を強く挟み込む肉壁。
それは・・・暴れる獲物を包み込み、移送する管のもの・・・
そしてその圧力は、呼吸を妨げるのには十分な程強い。

「ンー!ンー!!」

毎回のごとく、僕は悲鳴・・・否、呻き声を上げた。
いくら息を吸っておいても、ここの圧力のせいで肺を押され、あっという間に空気は逃げてしまう。
そのせいで、容易に呼吸困難に陥り、すぐだと・・・たった3秒で終わると分かっていても、
苦しくて暴れてしまう。

「ンンー・・・ブハッ!」

しばらくして・・・いや、3秒たって、一際強く挟んでくる場所を抜けた直後、広い空間に出た。

「スー・・・ゲホッゲホッ!!」

慌てて息を吸う僕の口に、蒸し暑く特徴的な臭いと、粘液が入り込み、咳き込んでしまう。
広いといっても、ここは締め付けが無くなった点と肉壁が柔らかく分厚い点以外はさっきと大して変わらない。
慌てて息を吸えば当然・・・顔に肉壁が貼り付き、粘液が鼻や口の中に入ってくる。

「ハー、ハー、ハー・・・ッ!?」

息を整え、頭の方向を上に直して立ち上がった僕をタイミングよく挟んでくる肉壁。
上から下へとしごくように動き、僕の・・・獲物の体を揉み、粘液と混ぜ合わせていく。

・・・そのうち、体や顔にまとわりつく粘液が、サラサラの水のような物に変わってきた。
同時に漂う、さっきまで無かった臭い・・・鉄の濃い臭い。
その出所と、今起こっている状況を理解している僕に、最初のような恐怖心は無い。
むしろ、冷静にこの状況・・・体にかかる感覚を味わっていた。
体を揉まれ、粘液を塗りたくられて、布団よりも暖かい中で痛みもなくだんだんと溶かされていく・・・
これは・・・もう・・・
・・・だが、僕に残されていた時間はあまりにも少なすぎた。
ここは、胃。食べた物を貯めておき、ドロドロに消化する場所。中に入ってしまった以上、僕も同じ目に遭う。
そして彼女は・・・例え満腹になったとしても、それらを全て消化し切るのにたったの10分しかかからない。
勿論、人間の子供一人で満腹になるはずもない。すなわち、僕が溶けきるまでにかかる時間は・・・3分。
そう・・・もう、僕の体は殆ど溶け、苦しくは無いものの、虫の息だった。

そんな僕の頭に浮かぶ考え・・・もう死ぬと分かっているのに、
それに対する恐怖が全く無いというこの特殊な状況下で浮かんだ考え・・・
・・・食われるという行為を好きな人間にはなりたくない。
でも、もし・・・もし食われて、ここで痛みもなく溶けて死ねるのなら・・・最期は、ここで息を引き取りたい・・・
そう思った直後、僕の意識は薄れ・・・消えた。










「・・・きて、そ・・・ん・・・」

何かを、感じる・・・これは、音・・・いや、声だ。聞き覚えのある彼女の・・・フェリアの・・・フェリアの!?

「起きて、想ちゃん!」

「はっ!」

・・・気がつくと、僕は寝室に敷いてある布団で横になっていた。
隣を見ると、一緒に布団に入って僕を揺すっていた竜人姿のフェリア・・・
そして頭を触ると、いつもの様に何故か少し湿った髪・・・

「・・・そうか、蘇生・・・されたのか。」

さっきまでの状況を整理して、出てきた答えだった。

「フフ・・・やっぱり貴方は美味しいわね♪」

そう言い、頬を舐めるフェリア・・・いや、そんな事言われても嬉しくないんだが。

「貴方も楽しめた?結構気持ち良さそうにしてたわねぇ・・・」

う、まずい。これを認めれば僕は・・・食われ好きという事に・・・

「・・・別に、ただの不快感でしか無かったですよ。」

と、僕は棒読みで返す。

「あら・・・素直じゃないのね。まぁ良いわ、このまま休んでなさい・・・」

そう言って、彼女はまたさっきのように、僕の3DSでゲームを始めた。


テスト等もろもろあり、しばらく更新を休んでおりました。
作品での今後の予定が立ったので、これからサクサク進めていきます。
・・・の、予定・・・
<2012/12/12 23:49 想西>
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