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神々の戯れ〜月夜兎の苦手なもの〜 − 旧・小説投稿所A

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神々の戯れ〜月夜兎の苦手なもの〜

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ここは間違いなく水神の口の中だ。
でも自分は紫色の大蛇に食われたはず。
この矛盾は一体?
月夜兎は考え込む。
その時あることを思い出した。

〜回想始まり〜

『一体何の薬を作ってるんだ?』

『コレを飲むとね、私の姿が飲んだ者が一番恐れているモノに見えちゃうようになるの』

『例えばオバケが恐いって奴にこれを飲ませると、お前の姿がオバケに見えちまうってことか』

『……!!ま、まあそういうことかな』

『しっかし何だかんだで水神の知識は凄いな。そんな複雑な作用を持つ薬を作れるだなんて。腐っても竜神か』

『腐っても、は余計だよ!!』

〜回想終わり〜

野郎、あれを飲ませやがったな!
ビビって損した。
自分の弱みで弄ばれたことに腹を立てた月夜兎は水神の口をこじ開けようとする。
が、水神の舌が突然動いた。
バランスを崩した月夜兎は尻餅をつく。
その衝撃で月夜兎の履いていたズボンのポケットから水神から貰った人間に化ける際に使う薬が転がり落ちてしまった。

一方その頃、水神は月夜兎から見た自分の姿を想像していた。
どんな蛇に見えたのかな?
水神の頭の中に自分と同じような色の大蛇が思い浮かべる。
その時だった。
水神の全身を奇妙な感覚が駆け巡った。
えっ?この感覚は人間に化けるときに似てる。
って、それって私の姿が変わってるってこと!?
でも私は人間に化けようなんて思ってないのに。
強制的に変身?
だとしたら何に?
水神は慌てて岩山の中へと戻っていく。
いつの間にか足が消えて這うように進んでいたのだが、水神は気付かない。
そして自分が何に変身してしまったのかを、鏡を見てようやく把握した。

「だ、大蛇になっちゃってる!?」

水神は思わず声を張り上げた。
なんと自分の姿が大蛇になってしまっていたのだ。
思わず口をあんぐり開ける水神。

「水神ッ!よくも私を弄んだ−−」

口の中から飛び出した月夜兎は啖呵を切ろうとするも、目の前に美しい蒼い大蛇がいるのを見てまたまた屁っ放り腰になってしまった。

「月夜兎!何したの!?」

水神は月夜兎に迫る。

「わーッ!来るんじゃねぇ!」

月夜兎は後ずさる。

「何かしたんでしょ!!本当に蛇の姿になっちゃうなんて。これじゃお嫁に行けない……」

「知るかバカタレ!……ん、お前から貰った人間に化ける薬がねぇな」

ポケットに入っていた薬のビンが消えていることに月夜兎は気付く。

「それだ!あー、もう。私の口の中で落としちゃったんだね。それを私が飲み込んじゃったんだ」

「はあ?あれは人間に化ける薬だろ?」

「違う。あれは厳密に言うと飲んだ者がなりたいと念じた姿になる薬なんだよ」

そう、水神は月夜兎の落とした薬を飲み込んでしまい、その時に大蛇の姿を想像していたためにこのような事態になってしまっていたのだ。

「はあ、時間が経つのを待つか。……ん?」

水神は隅っこで生まれたての子馬のようにガタガタ震える月夜兎の姿を見て、急にイジワルをしてやりたくなった。

「月夜兎、たまにはドラゴン以外の捕食もどう?」

水神はニヤリとしながら月夜兎に近付いていく。

「え、遠慮しておきます……」

普段なら平気で食われる、むしろ喜んで食われる月夜兎が必死で断る。

「ダ〜メ、月夜兎に拒否権は無いよ」

水神はゆっくりと月夜兎に巻き付いた。



<2011/10/16 20:38 とんこつ>消しゴム
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