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幼さ故に − 旧・小説投稿所A
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幼さ故に

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「コタロウ、そいつを放すんだ」

「どうして?こいつは悪い奴。悪い奴を捕まえるのがオイラの仕事だ」

「その通りだ。君は悪い奴を捕まえたじゃないか。だからそいつをこっちに渡してくれ。そいつにしかるべき罰を下すためにな」

だがコタロウは研究者のことを放そうとしない。

「嫌だ。オイラがこいつに罰を下す。他の三人にはオイラが罰を下してやった。こいつだけオイラの罰を受けないのは不平等だ」

「コタロウ。本当にお前がやったことは『罰を下した』だったのか?」

私がそう言うと、コタロウは明らかに動揺した様子を見せた。
私は畳み掛けるように続ける。

「私にはどうも単に自分の怒りをぶつけたようにしか見えないな」

「そ、それは……」

「あと『自分の力を誇示したい』という気持ちもあったんじゃないのか?」

「……ごめんなさい」

コタロウは静かに研究者のことを床に置いた。
後ろにいた機動隊の隊長さんは素早く研究者を外へと連れ出した。

「一件落着、かな」

私はそう呟いて、コタロウのことを見上げる。
昼間に見たときの倍以上になっていた体躯が縮こまっているように見えた。

「コタロウ巡査」

私は呼びかけた。

「警察官は、私情を挟んだら駄目だ」

それ以上は言わなかった。
今回のコタロウの暴走の根底には、幼さ故の残虐性があると私は見ていた。
人間の子供も時として残酷な行為に走ることがある。
平沢博士の話によれば、コタロウの精神年齢は小学校低学年程度。
そういった残虐性が残りうる年齢だ。
圧倒的な身体能力をほこるコタロウが、人間という脆弱な生き物を目の前にして嗜虐性が刺激されないわけがない。
ましてや自分を誘拐しようとしたという大儀名分のおまけつき。
二人を惨殺という一見するとショッキングな結果も、ある意味至極当然といえば当然だろう。
まあ今更殺処分にするわけにもいかないけど(というか出来ないだろう)、こりゃ厄介な部下が来ちゃったなぁ。
精神年齢がもう少し成熟するまで、デビューはお預けだな。

「ん?」

コタロウがしきりに自分の体を舐めていることに気付いた。
返り血ががびがびになって気持ち悪いのだろう。

「コタロウ、何はともあれご苦労さん。私が体を流してやるよ」

私は労うようにコタロウの背中をぽんと叩き、トイレの掃除箱からホースを取り出す。
そしてそれを蛇口につなぎ、コタロウの体を洗い流してやった。


<2011/08/09 21:28 とんこつ>消しゴム
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