コンモドゥス帝
〜筋肉とエロに生きた、その熱き漢(おとこ)の生涯〜 ギボン『ローマ帝国衰亡史』第4章より |
その10 情けない、筋肉ヒーローの最期・・・・・ いまやコンモドゥス帝の乱行非道は頂点に達した。いくらゴマスリ廷臣どもの賞賛に囲まれているとはいえ、全国の心ある有識者からは、侮蔑憎悪の眼をもって見られていることに、われながら気づかぬわけにはいかなかった。 もう戻れないところまで来てしまいました。正道にかえるチャンスは、もうとっくの昔に去っていたのです。この時点では、いままでのは無かったことにして、善政をしくなど、到底不可能だったでしょう。 だが、そうした憎悪を知れば知るほど、彼の凶暴性は焦立つのだった。他人の長を見れば例外なく敵意を抱くし、当然ながら身の危険を考えれば不安になる。まだ毎日の娯しみとして行っていた殺しも、習性化すれば心はますます荒むばかり。こうした気紛れ猜疑の犠牲として仆れた夥しい元老院議員の名前を、史書は残りなく伝えている。 こんなことばかりやっていて、自分だけ無事でいようとかは、とうてい無理な話ですよね。コンモドゥス帝は、気紛れで、周りの人たちを理不尽に殺すようになり、周りにいた人たちは、いつ自分が殺されるのかと、もう気が気でなりません。 というわけで、コンモドゥス帝にも最期のときがやってきます。 相棒や先任たちの死を見て愕然となった愛妾マルキア、侍従長エクレクトゥス、近衛隊長官ラエトゥスの三者が、暴帝の馬鹿気紛れにもせよ、また突如たる国民の怒りにもせよ、とにかくいつ頭上に落ちかかるかもしれぬ死の運命を、とりあえず阻止することを決意したのだ。 殺される前に、殺してやろう、ということです。 あたかも帝が野獣狩りで疲れ切ったときだった。葡萄酒を一杯すすめる機会をマルキアが利用した。帝は寝所へと退いた。が、やがて毒と酔いがまわり苦しんでいるとき、突然力技を業とするある頑丈な若者が一人、寝室に押し入り、なんの抵抗もなく縊り殺してしまったのだ。 コンモドゥス帝、享年31歳の生涯でした。突然の幕切れです。 |
■その9 |
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