sweet eleven

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13


 その日、名取は珍しく部活に参加した。二学期が終わるということで、部室の大掃除のために収集がかけられたからだ。
 元々規則が緩い部なので部員は多いのだが、実際集まった部員は名取も含めて十人にも満たなかった。一年にいたっては名取しかいない。
 真面目に現れた名取に先輩たちは『今度試合に出してやるからな』と笑って言い、掃除はそれなりのところで終わった。
 男子部なのでこんなもんだと言って、さっさと終わられてしまったからだ。
 一年ということもあり施錠を押し付けられた名取は、そうそう帰る気持ちにならず、部室の机に突っ伏していた。
 十二月も半ば――すっかり暗くなった部室でも、名取は電気もつけずただぼんやりとする。
 最近は、いつもこうだ。
 ふとした瞬間に、無気力感が襲いくる。何かを考えようとする。でも何を考えたらいいのか分からない。
 本当は、答えなんて。
 答えなんて、とっくに――。
「あれ?」
 がちゃ、と部室のドアが開く。名取はゆるりと顔を上げた。
「晴太くん? まだ残ってたの?」
 涼やかな声。聞き覚えがある、と名取は振り返る。「あ――」
「斉藤先輩……」
 どうしたんですか、と問うことも忘れて名取はがたりとパイプ椅子から腰を上げた。
 開いたドアの隙間から月明かりが差し込み、今更ながらにもう夜になっていることを知る。
「先生が鍵が返ってないから、見て来いって言ってて……晴太くんが施錠係?」
「あ、はい。そうです」
 すみません、と頭を下げながら、名取は部室を出ると、先輩から預かった鍵で施錠を済ませた。
 まだその場に留まっている斉藤に、何か話しかけるべきだろうか、と迷ってから口を開いた。
「女子部、掃除今終わったんですか」
「うん」
「遅いですね」
「部長が掃除好きだから随分細かいとこまでやらされちゃって。――鍵、返しに行くの?」
「あ、はい」
 じゃあ、と会釈をし行こうとすると、「あの」と斉藤が控えめに声をあげた。
「あの、良かったら一緒に帰らない? 待ってるから」
「え」
 樋村は? 口から思わず零れそうになり、慌てて名取は口を噤んだ。
 斉藤は微笑を浮かべているが、それはどういう意味なのだろう――名取は頷き、一先ず鍵を返すために踵を返した。


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2008.08.24


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