「お待ちしておりましたわ」 細かいドレープのついたトーガを揺らして、ロマーナは嫣然と笑った。
黒檀のような黒髪も、血のように赤い唇も、まるで彼を誘っているように艶やかだった。
「俺をか?」
ゲルマンは近づいて、毛の生えたごつごつした手で、彼女のトーガを引き裂く。 「もちろんですわ」
「……この嘘つきの、淫乱女め!」 彼はかっとなり、彼女を掴んでベッドに放り出す。
「いき、なり……このようになさるとは……、さすがに野蛮人の、あなたらしい行いですわね」 「……うるさい!」
這いつくばらせて腰を引き寄せ、後ろからまだ乾いているそこに無理やり入れる。
かつて、彼女は彼の恋人だった。
彼が凍えている時に迎えてくれ、暖めてくれた。 一緒に東方からの陳入者を撃退したこともある。
だが、彼女は嘘つきで、淫乱だった。 口では貞節を説きながら、その体はたくさんの男達と戯れる。
彼と袂を分かった兄弟たち、或いは彼女の血の分けた兄とすらも躊躇せずに寝る女だった。
その証拠に、彼女のやわらかい場所はすぐに濡れ、彼を咥えて包み込む。
彼の腰を叩きつける音と、それに応じた彼女の嬌声が部屋中に響く。 「あ……、ぁあ……、あん、もっ、とお、もっとおぉ」
律動を速め、思う存分彼女の体を犯しつくして、精液をぶちまける。
「これで最期だ」
ゲルマンは起き上がって、彼女の細い首に手をかけた。 「お前はもう滅びるのだ。何か言い残すことはないか?」
ロマーナの答えは、父親そっくりの傲慢さと残酷さをにじませた笑いだけだった。
「何が可笑しい!?」
筋肉をふくらませて、力をこめる。 「そう、私は滅びるでしょうね」 彼女はヒステリックに笑い続けた。
「でも、私に触れた男たちは、決して私の体と私の心を忘れない。
誰も彼も、あなたも、その胸に私の刻印――《二つのH》が穿たれているのよ」
それは、彼女の残した偉大なる遺産。
彼女に触れた男たちを支え、纏め、時には呪縛する《二つのH》。 ヘレニズムという名の彼女の体と、ヘブライズムという名の彼女の心。
微妙な解説
ヘレニズムというのは、ギリシャ・ローマ文化の神話や芸術や、
「イリアス」「オデュッセイア」のようなラテン語ラテン文学のことで、 ヘブライズムというのは、キリスト教のことです。
この二つのHがEU統合の基盤となっていると大昔に聞きました。 (だから、トルコはどんなに先進国になってもEUには入れない)
他にも小ネタいくつか入れてみました。 |