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東出はそこで言葉を切ったが、つまり、後はそっちで話してくれということだろうと森野は理解した。俺ら、という言葉にはおそらく貴哉が含まれている。
だが、どちらの言い分もわからない、もっと言えば何が言い争われているのかすらもわからない自分はこの場合、どうすればいいのか、
それを森野が少し逡巡したそのとき、病室を出ようとする東出が森野に声をかけた。

「あんたは?」

来るのか残るのかという質問だ。ここまでの東出の態度から言えば、こう言ってくれるだけでも随分な親切ではある。
しかし出てもいいものかどうか、森野は永川の顔を見たが、永川は特に反応を示さない。行きたければ行けということだろうか。

「降りてたほうがいいかもしれないですよ。案外早く呼ばれることもあるから」
「そう、だな…」

貴哉に促され、森野はそう返事をした。もっとも、永川が残れと言わないのなら、ここに残る意味もない。
正直なことを言えば、終始うつむき加減の林とこれ以上同じ部屋にいても、なにか気の利いたことを言えるとも思えず、ただ黙っていることになるのは目に見えている。
森野はそれほど口数の多い男ではなかったが、それでも…、これはいかにも気詰まりだと思ったのだ。


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