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ものすごい剣幕に押されるようにして、梵は言われるままその場を後にした。なにせ長老の機嫌が悪いので、場を取り囲んだスラィリーたちも、目をあわさぬように下を向き、それぞれみな大人しくしている。
そこへ、梵と入れ替わりに…、棍棒を担いだ巨大な熊が、木々の間からのっそりと姿を現し、この嫌な緊張感を伴った沈黙を破った。

「ようババア、朝っぱらから元気だな。あんな大声出しよってからに、ついにボケがきちまったのかと思ったぜ」
「クラウド。用件があるなら、早く言いな。あたしゃ虫の居所が悪いんだよ」
「そんなもんは、見りゃあわかる。ババアと違って、俺ぁ目も耳もバッチリだからな」

クラウド、と呼ばれた熊は、その凶悪な外見に似合わず矢継ぎ早に軽口を叩き、鋭い牙を覗かせて笑った。長老はますます目尻を吊り上げる。青い体毛に阻まれて見えないが、おそらくその額には、青筋を何本も立てていることだろう。

「そんな無駄口叩きに来たのかい!?」
「まあ、そうギャーギャーわめくなって、みっともねぇから」

熊はまたヘラリと笑い、長老の目の前へドッカと腰を下ろした。

「俺様が言いてぇのはアレよ。夜中にな、偶然、あの狐野郎に会ったんだが」
「それで」
「どうも様子がおかしかったんだ」

そのクラウドの言葉に、スラィリーの長老はフンと鼻を鳴らす。

「馬鹿だねお前は。カーサがおかしいのは、いつものことじゃないか」
「そうじゃねぇって。俺様の鼻が正しけりゃな、どうも…、あいつから嗅いだことのない匂いがしたんだ。野郎、何か隠してやがるかもしれねぇぜ」


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