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「お前どうも、あれには甘いね。確かに、お前にとっちゃ友達かもしれないが…、…まさかお前、わざと見逃してるんじゃないだろうね!?」
うつむいたまま足元を見つめていた梵は、この一言に顔を上げ、そして首を横に振った。
「おばあ、それは絶対にない、誤解じゃ!」
一族のものを死なせた以上、言い訳はするまいと梵は心に決めていたが…、しかし、これには思わず弁解の言葉が出た。
結果的に自分が至らず、永川がまだ若いスラィリーを殺害するところをただ見守る形にはなったものの、それは決して故意ではない。
なぜなら、第一の誤算が起こらなければ、第二の誤算は起こらなかった。それにそもそも、いくら人家のそばとはいえ、手負いの一頭のためにわざわざ永川が出てきたこと自体、梵にとってはまったく予想外だったのだ!
「そうかい。まあ、そんなら、もういい。今日こそはとにかく、軍隊の連中を追っ払っちまって頂戴。いつまでもダラダラ時間かけてんじゃないよ」
「…わかってる」
「わかってんなら、さっさと行きな!」
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