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「逃げろ!!轢かれる!!!」
叫びながら、帆足は必死の形相で、路上に立ちすくんだ岸に飛びかかろうとした。これは無謀でも自己犠牲でもなんでもなく、帆足は自分自身の持つ能力をよく理解していて、
先刻高架橋の上からやったように、低空を滑って岸を体当たりではね飛ばし、反動で自分は停止して、そこから垂直に跳び上がり、
すでにフロントガラスの大破している剥き出しの運転席へ斬り込もうと計算したものだが…、
「ぐあっ!」
突然、その帆足が叫び声をあげた。片腕になった男が、地面に這いつくばりながらもその左手にナイフを持ち…、渾身の力を振り絞って、帆足のふくらはぎを斬り付けたのだ!
「野郎ッ」
そのナイフを咄嗟に蹴り上げつつ、帆足は直感した。傷は浅くない。それでも、その脚で、どうにか前へと跳ぼうとした…、次の瞬間、失敗を悟り、彼は顔を歪めた。
だめだ、機を逸した、間に合わない……!!!
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