142
「きっかり10くらいじゃ。あれはドアラマスターじゃけぇ、連れのドアラとの間で多少の融通が利くじゃろうが、
それでも最大で12くらいかの。ま、通り一編のことをやるに不足はなかろ。
器用かどうかはわからんが、覚えは相当早いようじゃけ、付け焼刃でも、それなりになるんじゃなかろかと思うての」
「なんだ、結構普通なんですね。逸材なんていうから期待したのに」
「普通普通。ぶち普通じゃ。そもそも最初に逸材言い出したんはお前さんじゃろ」
「それをわざわざ鍛えたいということは、…できる限りのものを持たせたいっていう親心ですか。
はーん、お師匠さんもなんだかんだ言って、勝浩さんが可愛いんですね」
カーサはそう言ってニヤリと笑った。
「馬鹿言うでないわ。それに大体、ワシャ、お前さんにお師匠さんなんて呼ばれる覚えはないけぇ」
「あら、『お師匠さん』ってアダ名でしょ?」
「違うわ!」
前田がムキになって発したその言葉を聞くか聞かないかのところで、カーサはひらりと襖を閉めて出て行った。
ひとり部屋に残された前田は、机に肘をついて宙を睨み、それから、こぼすようにつぶやいた…、
「ナーが可愛いかなんて。あの狐め、馬鹿言うでないわ…、ナーも浩司も、英心だって、可愛いに決まっとるけ…」
[NEXT]
[TOP]
[BACK]