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死に際の命を傷つけたというその事実が、また、山崎の胸をにわかに締め付けた。
「悪いこと、したかなあ…?」
流れる血に、またいつか見た師の苦しそうな顔が思い出される。心痛の思いがする。
傭兵をやらないのか、と考えもなく永川に問うたことを山崎は後悔した。永川は罪のない生き物の平穏な生活を奪う気持ちも、死に掛けの命にトドメを刺す気持ちも知っているだろう。
まして同じ仕打ちを人間に対してすること…、師匠はそれを…、一体どんな気持ちで…。
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