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銃創、そして流されてゆく血が間近に見える。
できることなら相手の間合いに入ることは避けたかったが、こうも動いてくれないのでは仕方がない。
しかし今度こそ、これ以上近づくことはできない。どうするべきか…、山崎はしばらく思案した……、

……そや!!

ぴん、と何かを思いついた山崎は、細い目をそれなりに見開いて、スラィリーの物言わぬ瞳から目を離さないように、そろーっと膝を曲げ、その場にしゃがんだ。
スラィリーは相変わらず動かない。しかし確かに山崎の動きをみつめている。山崎がどんな動きをしても、即座に対応できるよう、警戒していることだろう。
そや、それでええ。神経集中さして僕が近づくのを待っとってくれたらええんや。
そう思いながら山崎は膝を曲げきり、右手を地面にゆっくりとつくや否や…、右手に握った石つぶてを、スラィリーの鼻先目掛けて投げつけた!

ガン、という音がして、スラィリーの首が一瞬、横へ反った。青い毛が少しちぎれ飛ぶ。これで襲いかかってきてくれるのではないか…と山崎は期待したが…、しかしこれでも、スラィリーは動かない。
「こいつ…、」
思わず、山崎は独り言を口にした。
「もしかして、もう動かれへんのとちゃうか…?」
…だとしたら…、
すぐそばまで近づかれた挙句に、石までぶつけられ…、怖い思いをしているのは、目の前の怪物のほうなのかもしれない。
だからといってここへ放置するわけにはいかない、のだろうが、もしかすると、自分たちが手を下さないでも、明日の朝日を拝めない命なのではないだろうか…?


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