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竹槍で戦闘機…、それは実際、名古屋でも一時期有名になった森野の武勇伝である。
この話のせいで森野は人々から必要以上に恐れられたり、憧れのまなざしを向けられたり、自宅に非常識な取材が来たり、
ワイドショーでインチキ呼ばわりされたり、街では顔を見ただけで逃げられたり、年寄りに拝まれたり、2chでスレがのびたりと、色々大変だったのだ。
一体どういうわけでこの噂が発生したのか、その何度説明させられたかわからない真相を、森野はゆっくりと語り始めた…。

そう、それは昨年夏のことだった。耐用年数の期限が翌年に迫ったビッグ・ドメが、防衛軍中央司令部から森野の所属する東戦線基地へ管轄を移されてきた。
これは平たく言うと、マシンが古くなり、随所に動作不良――たとえばコクピットの冷房がきかない、など――が出始めたために、下部組織へ払い下げになったのだ。
しかし事情はどうあれ、また、たとえ見てくれがどうだろうと、ビッグ・ドメは『人が乗って操作できる戦闘用大型ロボット』であることには違いなく、基地は総員色めきたった。
早い話が、どいつもこいつも一度ビッグ・ドメに乗りたくて仕方がなかったのである。当然、当初は激しい争奪戦が繰り広げられたが、現実は思いのほか厳しかった。
時はただでも名古屋の夏、そのうえ冷房が故障しているため廃熱が内側へこもってしまい、とても長時間乗っていられる代物ではなかったのだ。多くの夢がここで打ち砕かれたことだろう。


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