説話文学と類型論

カムヌナカワミミは綏靖天皇となるが[25]、綏靖天皇以下の8代の天皇の事跡は伝わっていない。江戸時代までは官選の正史として記述された『日本書紀』の方が重要視され、『古事記』はあまり重視されていなかった。江戸中期以降、本居宣長の『古事記伝』など国学の発展によって、『日本書紀』よりも古く、かつ漢文だけでなく日本の言葉も混ぜて書かれた『古事記』の方が重視されるようになり、現在に至っている。日本神話の中には他の神話との関連性を指摘されているものが多く存在する。

"今日、ギリシア神話として知られる神々と英雄たちの物語は、およそ紀元前15世紀頃に遡るその濫觴においては、口承形式でうたわれ伝えられてきた。紀元前9世紀または8世紀頃に属すると考えられるホメーロスの二大叙事詩『イーリアス』と『オデュッセイア』は、この口承形式の神話の頂点に位置する傑作である。当時のヘレネス(古代ギリシア人は、自分たちをこう呼んだ)の世界には、神話としての基本的骨格を備えた物語の原型が存在していた[3] [4] [5]。"しかし人々は、この地上世界の至る処に神々や精霊が存在し、オリュンポスの雪なす山々や天の彼方に偉大な神格が存在することは知っていたが、それらの神々や精霊がいかなる名前を持ち、いかなる存在者なのかは知らなかった。どのような神が天に、そして大地や森に存在するかを教えたのは吟遊詩人たちであり、詩人は姿の見えない神々に関する知識を人間に解き明かす存在であった。神の霊が詩人の心に宿り、不死なる神々の世界の真実を伝えてくれるのであった[6]。この故に、ホメーロスにおいては、ムーサ女神への祈りの言葉が、朗誦の最初に置かれた[7]。口承でのみ伝わっていた神話を、文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を、体系的に纏めたのは、ホメーロスより少し時代をくだる紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスである[8]。彼が歌った『テオゴニア』においても、その冒頭には、ヘリコーン山に宮敷き居ます詩神(ムーサ)への祈りが入っているが、ヘーシオドスは初めて系統的に神々の系譜と、英雄たちの物語を伝えた。このようにして、彼らの時代、すなわち紀元前9世紀から8世紀頃に、「体系的なギリシア神話」がヘレネスの世界において成立したと考えられる[9]。

ゼウスの息子のメガロスは、鶴の鳴き声に導かれてゲラニア山の頂上まで泳ぎ、デウカリオンの洪水を逃れた。地中海の大津波は、サントリーニ島の火山噴火によって起きたとする説がある。この噴火は、地質学上では紀元前1630年から1600年の間、考古学上では紀元前1500年に起きたとされ、これがデウカリオンの神話へと発展した民間伝承の歴史的なベースになっているというのである。プラトンは「ソクラテスの弁明」(22)で「大洪水のすべて」に言及し、「クリティアス」(111-112)では「デウカリオンの大破壊」に言及している。さらに、アテネとアトランティス以来「多くの大洪水は9000年の間に起こっている」とする論説は卓越している。

彼らの時代がいつ頃のことなのか、神話上での時代の相関が一つにある。他方、考古学資料によるギリシア神話の英雄譚が淵源すると考えられる古代の都市遺跡や文化、戦争の痕跡などから推定される時代がある。英雄たちの時代の始まりとしては、プロメーテウスの神話の延長上にあるとも言える「大洪水」伝説を起点に取ることが一つに考えられる。プロメーテウスの息子デウカリオーンは、エピメーテウスとパンドーラーのあいだの娘ピュラーを妻にするが、大洪水は、このときに起こったとされる[78]。洪水を生き延びたデウカリオーンは、多くの息子・娘の父親となる。ピュラーとのあいだに息子ヘレーンが生まれたが、彼は自分の名を取って、古代ギリシア人をヘレーン(複数形:ヘレーネス)と呼んだ[79]。デウカリオーンの息子・孫には、ドーロス、アイオロス、アカイオス、イオーンがいたとされ、それぞれが、ドーリス人、アイオリス人、アカイア人、イオーニア人の名祖となったとされるが[80]、これは歴史的な背景はないと思われる[81]。しかし、アイオロスの子孫には、ギリシア神話で活躍する有名な人物がある。子孫はテッサリアで活躍し、イオールコスに王都を建造した。ハルモースの家系には、ミニュアースとその裔でアルゴナウタイで著名なイアーソーン、また医神として後に知られるアスクレーピオスがいる。また孫娘のテューローからは、子孫としてネーレウス(ポントスの子のネーレウス神とは別)、その子でトロイア戦争の智将として知られるピュロス王ネストールがおり、ペリアース、アドメートス、メラムプース、またアルゴス王で「テーバイ攻めの七将」の総帥であるアドラストスなどがいる。ネーレウスはピュロスの王都を建造した。

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