参考文献とヨーロッパ

しかし人々は、この地上世界の至る処に神々や精霊が存在し、オリュンポスの雪なす山々や天の彼方に偉大な神格が存在することは知っていたが、それらの神々や精霊がいかなる名前を持ち、いかなる存在者なのかは知らなかった。どのような神が天に、そして大地や森に存在するかを教えたのは吟遊詩人たちであり、詩人は姿の見えない神々に関する知識を人間に解き明かす存在であった。神の霊が詩人の心に宿り、不死なる神々の世界の真実を伝えてくれるのであった[6]。この故に、ホメーロスにおいては、ムーサ女神への祈りの言葉が、朗誦の最初に置かれた[7]。口承でのみ伝わっていた神話を、文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を、体系的に纏めたのは、ホメーロスより少し時代をくだる紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスである[8]。彼が歌った『テオゴニア』においても、その冒頭には、ヘリコーン山に宮敷き居ます詩神(ムーサ)への祈りが入っているが、ヘーシオドスは初めて系統的に神々の系譜と、英雄たちの物語を伝えた。このようにして、彼らの時代、すなわち紀元前9世紀から8世紀頃に、「体系的なギリシア神話」がヘレネスの世界において成立したと考えられる[9]。無論、それは地域ごとで食い違いや差異があり、伝承の系譜ごとで様々なものが未だ渾然として混ざり合っていた状態であるが、しかし、オリュンポスを支配する神々が誰であるのか、代表的な神々の相互関係はどのようなものであるのか、また世界や人間の始源に関し、どのような物語が語られていたのか、それらは、ヘレネスにおいてほぼ共通した了解のある、或るシステムとなって確立したのである。

北欧神話の宇宙観は、強い二元的要素を含んでいる。例えば昼と夜は、昼の神ダグとその馬スキンファクシ、夜の神ノートとその馬フリームファクシが神話学上、相応するものである。このほか、太陽の女神ソールを追う狼スコルと、月の神マーニを追う狼のハティが挙げられ、世界の起源となるニヴルヘイムとムスペルヘイムがすべてにおいて相反している点も関連している。これらは、世界創造の対立における深い形而上学的信仰を反映したものであったのかもしれない。神々にはアース神族・ヴァン神族・ヨトゥンの3つの氏族がある。当初互いに争っていたアース神族とヴァン神族は、最終的にアース神族が勝利した長きに渡る戦争の後、和解し人質を交換、異族間結婚や共同統治を行っていたと言われており、両者は相互に関係していた。一部の神々は両方の氏族に属してもいた。この物語は、太古から住んでいた土着の人々の信仰していた自然の神々が、侵略してきたインド=ヨーロッパ系民族の神々に取って代わられた事実を象徴したものではないかと推測する研究者もいるが、これは単なる憶測に過ぎないと強く指摘されている。他の権威(ミルチャ・エリアーデやJ・P・マロイ等)は、こうしたアース神族・ヴァン神族の区分は、インド=ヨーロッパ系民族による神々の区分が北欧において表現されたものだったとし、これらがギリシア神話におけるオリュンポス十二神とティーターンの区分や、『マハーバーラタ』の一部に相当するものであると考察した。アース神族とヴァン神族は、全体的にヨトゥンと対立する。ヨトゥンはギリシア神話でいうティーターンやギガースと同様の存在であり、一般的に「giants(巨人)」と訳されるが、「trolls(こちらも巨人の意)」や「demons(悪魔)」といった訳の方がより適しているのではないかという指摘もある。しかし、アース神族はこのヨトゥンの子孫であり、アース神族とヴァン神族の中にはヨトゥンと異族間結婚をした者もいる。例えば、ロキは2人の巨人の子であり、ヘルは半巨人である。言うまでもなく、最初の神々オーディン、ヴィリ、ヴェーは、雌牛アウズンブラの父が起源である。

"日本における近代アイヌ研究の創始者とも言える金田一京助の分類によると、『ユーカラ』は、『人間のユーカラ』(英雄叙事詩)と『カムイユーカラ』(神謡)の二種類に分けられる。 人間(=アイヌ)を中心として語られる『ユーカラ』は、主にポンヤウンペと呼ばれる少年が活躍する冒険譚である。"『カムイユーカラ』はカムイが一人称で語る形式をとっており、サケヘと呼ばれる繰り返し語が特徴で、アイヌの世界観を反映した、神々の世界の物語である。中には、神・自然と人間の関係についての教えが含まれている。散文の物語はアイヌ語ではウエペケレという。

この時代の神話で最も重視されている神々は、創造神ブラフマー、維持神ヴィシュヌ、破壊神シヴァで、三神一体の最高神とされる。ブラフマーは、ブラーフマナ・ウパニシャッドでは宇宙の最高原理であったが、その抽象的な性格のせいか、庶民の間では広く信仰の対象とはならなかった。ヴィシュヌは『リグ・ヴェーダ』にも登場し、元来太陽の光照作用を神格化したものと考えられる。しかしこの時代の神話では世界の維持を司る神であり、また10の姿(ダシャーヴァターラ)に変身して世界を救う英雄神でもある。シヴァは『リグ・ヴェーダ』の暴風神ルドラを前身とする破壊神である。性器崇拝や黒魔術など非正統派の民間信仰と習合し、ヨーガの達人、舞踏神、魔物の王などの複雑な性格を持つに至った。文献神話の大部分は建国神話である。口伝神話の大部分はシャーマンの歌(巫歌)である。

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