「…え…えと…」
「…指じゃなくて…コッチ…」
「ッ!!」
指はイった直後に抜かれるのかと思えばそのままで…しかも…もっと出せ…とでも言うように力をなくした肉棒を吸い上げられて気が狂いそうだった。なんとか離させはしたものの…菊華に咥えたままの指がもどかしくなってくる。直接言うのはあまりに恥ずかしいので、言葉の代わりになんとか動かせる足をイワンの股上へと擦りつけた。すると、熱を持った欲望の塊が装束の上からでも感じ取れる。
「ぁ…の…っ…」
「コレ…指の代わりに…入れて…」
「〜〜〜っ!」
力の加減をしながらソコに存在する欲望を刺激する。足、という…手ほどの器用さのない拙い動きとなって欲を更に育てていた。脈打つ感覚を足の甲で感じながらスリスリと擦り付けるとイワンの喉が鳴る音が聞こえてきた。
「…いいん…ですか…?」
「…ん…」
…ずるり…と指が出ていく感覚に身を捩ると欲に掠れた声が念を押してきた。上気した頬も…欲に塗れた瞳も…すべてにおいて雄の色香を纏っているのに…見た目の幼さが酷くアンバランスで…背徳感が刺激される。興奮がさらに煽られ、欲しいと疼く躯の奥が熱を求めていた。
「…いれて…くれ…」
互いに楽なように…と考えてだるい躯をうつ伏せる。上体を伏せ腰だけを高く上げて…肩越しに振り向く…自分が獣そのものの格好をしている事は分かっているし、どれほど恥ずかしいかも分かっているが…振り向いた先にあった紫色の瞳に喉が鳴った。
「っ…タイガー…さん…」
「…っは…」
猫が伸びをするような格好になった虎徹を前にイワンは装束を解いていった。痛みすら感じるほどに張り詰めた己の熱を…ひくり…と震える菊華に擦りつける。ふるり…と肌を震わせると熱い吐息が漏れ出たのを聞いた。
「ッ!」
「ッあ…!」
ぐっ…と内臓が押し上げられるような感覚に啼いた。イワンの指が腰に食い込み、灼熱の塊がずぶずぶと体内に埋め込まれていく。反らされる喉から移された熱を吐くかのような熱い息が通り過ぎて行った。眩暈がしそうな悦楽の波が脳天まで突き上げる。躯がガクガクと震えて力が抜け落ち…抱き込んでいたクッションに縋りつき閉じられない唇から零れ落ちる声を抑えられず、自分で己の羞恥を煽ってしまっていた。
「っくぅ…んッ!」
とん…と太股や下腹にしっとりと汗ばんだ臀部が当たる。促されるがままに己の欲を菊華に突き立てたが…根元まで咥えさせるときゅっと絞め付けてきていた菊華がやわやわと揉み上げる様な動きに変わっていった。柔らかく温かい粘膜がうねるように動き絶え間なくぞくぞくと背筋を震わせてくる。
「…ぁ…ぁ…」
一気にすべてを咥え込ませられた為に圧迫感と息苦しさ、さらには爛れる様な熱を与えられ脳内がくらくらと揺れる。けれど、ナカでじわりと広がる感覚に予想通りの事態になる…と心の中で構えた。
「ぃわ…っん…は…ゃ……はや、くぅ…」
「…あ……ぇ?」
「…ぅご…けっ…」
咥え込んだ楔からとろりと溢れる蜜が、体内を濡らしていく感覚に躯が震えるが…それだけが原因、とは言えない…ざわざわと肌を体内から逆撫でするような感覚に息が自然と上がっていく。痒い所に手が届かないようなもどかしさがどんどんと膨らんでいき、どうにかしてほしいと嘆いた。
「っひ、ぅ…!」
「ぅ…く…」
「っ、…あ、ぁ!」
必死に訴える様な声に、湧き上がる本能に従って腰を引くと…背中を反らしながら甘い嬌声が零れ落ちた。それとともに、柔らかかった菊華がぎゅっと絞まり、抜けないようにとぎゅうぎゅう絞め付けてくる。あまりの強い絞め付けに引いた腰を再び押し出せば虎徹の口から押し出されたかのような嬌声が溢れた。ぞくぞくっと震える背筋に欲望が弾けそうだったのを、歯を食いしばって耐え抜く。
「あっ…う、んぁ…っぁあ…」
ゆっくり…ゆっくりと抜いては突き上げられ…最奥を叩かれては内壁を擦り出て行ってしまう…緩慢な動きは焦れる暇もないほど、ぞくぞくと悦楽を掻き立てもっと滅茶苦茶に突き上げて欲しい…と浅ましく願ってしまった。その証拠にイワンの動きに腰が合わせて揺れ動いている。
「あっ…ぁ…ぃわんっ……ん、も…っと…」
「…たいが…さ、んっ…」
肩越しに振り返る艶めいた表情と掠れた甘い声に頭の中で何かが切れた音がした。咽かえるほどの熱い呼吸を繰り返し、掴んだ腰に食い込む指へ力がこもる。
「ッぅあぁ!!」
「ッ!!」
ばちんっ…と音がしそうなほど強く腰を叩きつけられて、喉が反りかえる。クッションに必死になって埋め込んでいたのだが、加減も気遣いもなくなった腰遣いに呼気が更に乱れて行った。躯中を甘く掻き乱す衝撃に口からあふれ出る声も抑える事は出来ない。
「あっ、ぅんッ…っひ…ぁ、あッ!」
「たいがー…さ…っ…」
「あッイ、いぃっ!きも、ちっ…い、いぃッ」
突き上げる度にびくびくと跳ねる背中を眼下に見下ろし、四肢を駆け巡る甘い衝動に眩暈が起きてくる。荒々しい呼気を吐き出すべく開いたままの唇から飲み込めずにいた唾液が顎を伝う…目の前がチカチカと明滅を始め、意識が霞んでしまいそうになっていた。
「たぃ…が…さっ…たいがぁ…さんっ」
「あっあっあっ!」
「…ッこて、つ…どのっ…!」
「ひっ…ッーーーーー!!!!!」
唐突に名を呼ばれ、膨れ上がった未知の悦楽で頭の中が真っ白に弾けとんだ。背後で息を詰める声がすると、どくりと脈打ち最奥がしとどに濡らされる感覚に全身が戦慄く。しばらくその状態が続いたが、ずるり…と抜け出ていく感覚にまた躯が震えた。
「…ッは…っは…っ…」
「…っふ…ぅ…」
互いに顔は見えない…いや…見ない…と言った方が正しいかもしれない。ただただ、呼吸を繰り返し、乱れた呼気を整えようとしていた。まるで酒に酔ったようだ…とぼんやりしていた虎徹はふと気づく。
「(…俺…出さずにイったのか…)」
先ほど、確かに絶頂を極めたにも関わらず、下半身に濡れた感触が全くない。生まれて初めて経験するドライオーガズムに…気持ちよかったなぁ…と正直な感想を浮かべながらただただぐったりと横たわっていた。
「…たいがぁさん…」
「…ぅんー…?」
まだふわふわと熱に浮かされた声で呼びかけてくるイワンに間延びした返事を返す。すると、何か尋ねてくるわけでもなくしん…と静まり返ってしまった。けれど、すぐに髪を撫でる感触に気づいて重たい瞼を押し上げる。すると気遣わしげな表情をしたイワンが覗き込んでいた。
「…ぅん?」
「大丈夫…ですか?」
髪を撫でながら優しく囁かれる言葉に自然と笑みがこぼれる。だるい腕を上げて首に絡めると引き寄せて鼻先に口付けた。
「…大丈夫…」
「そう…ですか…」
「ちょっと…腰から下の感覚がないくらいだ」
「………」
「………」
「………大丈夫じゃないじゃないですか。」
ほっと綻んでいた顔が数秒遅れてしかめっ面に変わる。その変化にクスクスと笑っているとひょい、とばかりに体を持ち上げられてしまった。
「お風呂に入りますか?」
「ん〜…いや…今すっごい睡魔が襲ってきてるから…入ったら溺れる自信がある」
「そんな自信いりませんよ…じゃあ、ベッドに運びます」
「ん、よろしく〜」
もう運ぶのにも慣れてしまったのか…ふらつくことなく歩み、ベッドの上へと運び込んでくれる。そんなイワンをシーツの上からじっと見上げた。
「え…と…何ですか?」
「…イワンー?」
「はい?」
「一緒に寝ようぜ」
「…は?………ッえ!?」
運び終えて虎徹の体から腕を離そうとしていた手を掴み取り、ぐいっと引き寄せる。すると不意を突かれたせいもあって簡単に乗り上げる状態になってしまった。自分の上に重なる体に腕を回して完全ホールドを施してしまうと、現状を把握したイワンがわたわたと暴れる。
「えっ…ちょっ…タイガーさん!?」
「いいだろ〜?一緒に寝るくらい」
「いっ、いやっ!でも!」
「…嫌?」
「嫌とかじゃっ、なくてっ!」
顔の両脇に腕を付いて見下ろしてくるイワンの顔…きっと自覚しているだろう、頬が真っ赤で、少し涙目になって…けれど本気で嫌がれずに困った表情を浮かべる…紫の瞳が月夜の薄暗い部屋の中でも色鮮やかにキラキラと輝いている。不思議な瞳…首に回した腕を緩めて両頬を手で包み込むと引き寄せて瞼に口付けた。ぴくり…と跳ねる体に笑みを浮かべ、首を傾げることで無言の内に問いかけてみせる。
「あ…の……」
「…うん」
「…えと…また…襲いたく…なるかも…しれない、し…」
真っ赤な顔をしながら視線をうろうろとうろたえさせてポツリと零した言葉は…今がまさに盛りの青年だからこそ納得の出来る理由だった。その上、互いに影響を及ぼし合う上で、虎徹が欲情していなくても…イワンが欲情してしまえば流されかねない。しかも自分からこういう事を告げるという事は…襲いたくなる衝動を抑えきれる自信がない、という事だ。
素直な理由に…ふむ…と考える。
「………構わないぜ?」
「…え?」
「襲いたくなれば襲えばいい」
「……いいん、ですか…?」
「うん」
「……それ…じゃ…」
「ただし…」
「え?」
「眠ってる俺を襲う勇気があれば、の話。」
「……………〜〜〜ッ!!!」
まさかの了承にイワンは思わずベッドについた手を肌蹴られたままの胸元に這わせかけたが…最後に告げられた条件にがっくりと項垂れてしまった。
言葉だけを聞けば、イワンの好きなようにすればいい、と決定権を全てこちらに委ねているように思うが…イワンが寝込みを襲うような事は出来ない事を分かっての決定権譲渡だ。優しいようでしっかり締めるところは締められていたらしい。
ずぅん…と沈んだイワンの様子に虎徹は小さく笑い始めた。その楽しげな表情を恨めしげに見上げると包まれたままだった頬をマッサージしてくる。
「なにも今日しかしないわけじゃないんだし…もっと余裕持っていこうぜ?」
「…じゃあ…明日もしていいんですか?」
「おぅ、もちろん。いいよ?」
「朝からでも?」
「あぁ、いいよ?」
「………やっぱり夜でいいです…」
「そぉ?」
「…はい。」
笑いを漏らしながら言葉のやり取りに興じていると、頬をむにむにと遊んでいた手が剥がされてしまう。さほど強い力でもなく、すぐに振りほどけるのだが…手を離させたイワンが…ぽすり…と胸元に顔を埋めてきた。更に背を抱き込む様に腕を回して来てそのまま動かなくなる。
「…おやすみなさい…」
「ん、おやすみ」
ぽつりと囁いた途端、眠気が襲ってきたイワンはうとうとと落ちてくる瞼に逆らわず意識を手放した。
しばらくして室内に零れる寝息…穏やかな呼吸の音は虎徹の眠気を呼び覚ます。
「…こんなに心地いいって…なんだろうな?」
腰の奥にわだかまる淡い熱…それはイワンが吐き出した飛沫に違いないのだろうけれど…温度を下げるどころか…ずっと熱を燻らせている。ごく薄い媚薬…感覚としては近いものではあるけれど、劣情を湧き上がらせるまでも到達していない。
うとうとと訪れるまどろみに意識を委ねて重い瞼を閉じた。
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