サバイバルセットと端末を持ち出し、木陰に展開させる。トレミーからの指示が入るまで待機するつもりではあるのだが…

「…なにやってんの?」
「うん?」

 手頃な丸太に座った刹那を背中から抱き込むように座るニール。それをなんとも思っていない刹那も刹那だが、当然のように振舞うニールの方が腹立たしく感じる。そんな二人に、地面へ直接座ったライルの鋭い声と視線が投げかけられた。ことりと首を傾げている刹那に対してニールは更に煽るように腕の力を強める。完全に凭れた状態になった刹那の肩に顎を乗せると頬を摺り寄せた。すると、途端にライルの眉間へくっきりと深い皺が刻まれる。

「うちのエースにセクハラすんなっつったよな?」
「え?セクハラなんかしてないだろ?これはスキンシップだ。」
「屁理屈言うな。だいたい、さっきまで散々スキンシップしてたんだろうが。」
「えー…全然足りない。」

 諌めるライルに口を尖らせるニール。どっちが兄なのか分からないな…とぼんやりと考えていた刹那だが、ふとある事を思いついた。

「うん?刹那?」
「?何かあったか?」

 おもむろに立ち上がるものだから、腰に絡めてあった腕を解いて見上げた。するとどこかに歩いていくので「トイレとか…」などと下世話な事を考える。しかし、刹那が止まった場所は胡坐をかいたライルの足の間だった。しかもそこに納まるようにすとんと座り込んでしまう。

「………え?」
「せつ…な?」

 きょとりとする双子の間で刹那はいつも通りの無表情だった。けれど完全に体をライルに預け切り、寛いでいるようにも見える。

「…なに…して?」

 顔のすぐ下にふわふわと跳ねる黒髪を視界に入れつつ、明らかな動揺を見せるライル。そんな彼を刹那はちらりと上目遣いに見上げる。

「…構ってほしいのかと。」

 そして囁かれた一言に頭が真っ白になった。

「っぶふッ!」
「〜〜〜〜〜っ」

 思い切り噴き出すニールと頭を抱えて唸るライルに、今度は刹那がきょとりと瞬いた。肩を震わせる程に笑うニールをじとりと見上げてライルはため息をたきだす。

「なぁんでそういう考えに発展するかな?」
「なぜって…ニールとばかりくっついているから淋しいのかと思った。」
「…っく…くくく…」
「…あのなぁ…」

 ついに堪え切れなくなり笑い声を漏らすニールにライルは苦い顔をする。けれど見上げてくる刹那の表情は真剣そのものだ。

「小さい子供じゃあるまいし…」
「けどライルは子供っぽいところがある。」
「っぶっくっくっくっくっ…」
「…はぁ〜…」

 相当受けているらしいニールが腹を抱えて笑いだす。それに反してライルは頭痛に耐えているかのような渋い表情だ。大きくため息を吐き出して刹那の顎を掬いあげる。さらに引き寄せるように腰にも腕を回して抱きしめた。

「まぁ…否定はしないけど…」
「んっ…ぅ…」
「どぅあぁ!?」

 散々笑い続けていたわけだが、ふとライルの雰囲気が変わった事に首を傾げると目の前で濃厚なキスシーンが繰り広げられた。大きく反らされた細い首に指が絡みつき、切なげに寄せられた眉と唇の端から漏れる吐息とか細い声で、明らかにディープキスをしているのだと判断出来る。あまりの衝撃に固まること数秒…はたと我に返った時にはライルが刹那の唇を堪能した後だった。

「ん、ごちそうさま。」
「っ…はふ…」
「おぉぉぉおぉぉおっぉまぇ!何してくれてっ!」
「ん?何が?」
「何がじゃなくて!」
「キスの事?いつもの事だけど?な、刹那?」
「ん…」

 息の上がった刹那がのろのろと頷き肯定を示す。前髪を梳き上げて額に口づけを落とされるのを瞳を眇めて甘受していた。唖然とする間にも、刹那は御礼をするかのように自らちゅっと可愛い音を立てて口づけている。

「ニール…」
「へ…?」
「さっき言っただろう?」
「…さ…っき…」
「『俺はいつまでもあんたのものじゃない。』と。」
「…!…あ、あれって…」
「冗談だとでも思ったか?」

 ことんと首を傾げる刹那に否定が紡げなかった。正直にいえば、冗談だと思っていた。それこそ、ニールを煽る為の嘘だと。だが、よぉく考えてみる。『あの』刹那が…『男と女の駆け引き』に滅法疎かった刹那が…例え逢わなかった期間があったとて…ニールを上手く煽る事を言えるか……………答えは『否』だ。
 …とすると…と唇が引き攣る。

「ま、初めは等価交換的なものだったんだけどね。今はもう合意の上での関係になってるから。」
「つま…り…」
「体の関係有りで付き合ってます。」
「…マジ…で?」

 ライルのさらっとした申告は、ニールにとってはかなり深刻なもので…見事な石像と化してしまった。必死に脳内で整理しようとしているのだろう、口の端から何やら声になっていない言葉がぼろぼろと零れ落ちている。
 しかし、そのせいでライルを不思議そうに見上げる刹那の顔と、そんな刹那に目配せをするライルを見落としてしまったのだった。

「ところで刹那?」
「何だ?」
「昨日、抱くつもりだったんだけど?」
「…あっ…」

 拗ねたような声に刹那がそういえば…と何かに気づいた表情を浮かべる。するとライルの不埒な手が刹那の裏腿を撫で上げ、甘い声をこぼさせた。慌てて口を手で伏せるが、後の祭り。ばっちり聞いてしまったニールがじっと見つめてきている。

「今からシようぜ?」
「っ…しかし…」

 ぽつりと紡いだオネダリに刹那の体が小さく震える。体の方は完全に受け入れ体勢のようだ。けれど、当の刹那が何やら渋っている。裏腿を撫でる手が股上に上ってこないように膝をぴったりとくっつけて、逃げたいのか逃げたくないのか…もじもじとしていた。

「俺とするのは嫌なの?」
「そうじゃ…なくて…」
「ちゃんと大切に扱ってやるって。」
「それは…ありがたい…が…」

 明らかに目が泳いでいる。感情表現が柔らかく豊かになってきたとはいえ、この刹那が何かに惑うことはまずなかったはずだ。しかもかなり言い淀んでいる。気分の乗らない相手を犯す趣味はないので何かしら問題点があるのなら解決しなくてはな…と突っ込んで聞いてみた。

「まだ何か?」
「…ニールが…いるから…」
「ん?」

 かぁ…と頬が赤く染まっていく様にライルはぱちくりと瞬いた。どうやらニールに見られるのが恥ずかしいらしい。
いまさら見られて恥ずかしいものだろうか?今現在も、際どい事この上ない格好のくせに…と思った。刹那の羞恥ポイントがイマイチわからないなぁ…と思わず宙を仰いでしまう。けれど、乱れる様を見られるのとは別物か…と妙に納得した気持ちが湧いてきた。

「…見られるの恥ずかしいんだ?」
「…う…ん…」

 おずおずと頷く刹那の顔は赤く染まっており、困ったように寄せられた眉が愛らしい。刹那の表情の変化に食い入るよう見つめていたニールにちらりとライルの視線が投げかけられた。向けられた瞳に気づいたニールが慌てて姿勢を正す。そんな様子にしばし逡巡すると密着するように刹那を抱き寄せた。

「…気にしなくていいんじゃね?」
「なっ!?」
「えっ!?」

 さらりとなんでもない風に言ってのけるライルに二人揃って驚愕の声を上げてしまう。唖然とした表情をする二人にライルはにっこりと笑いかけた。

「むしろ俺としては見せつけてやりたいかな。」
「…見せつけ…」
「そ。兄さんがいなくなってから俺達こんなに仲良くなりました。みたいな?」

 にこにこと説明を重ねるライルを見上げて刹那は考え込んでいるようだ。その瞳がライルを通りぬけて宙をさまよっているらしい。ライルもライルで下手に手を出して思考を中断するのはまずいと判断したようだ。見上げる刹那へ新たに語りかけることをやめて柔らかく髪を梳いている。
 その雰囲気にどうしたものか、と成す術なく固まったままだったニールはふと向けられた紅い瞳に背筋をピクリと跳ねさせる。

「………」

 じっと見つめられること数秒。その間にもライルの戯れは続けられ、頬や目尻、耳元へと唇を寄せている。けれど待ち続けるこっとに焦れてきたのか、耳を齧ったらしく、刹那の肩がピクリと跳ねて瞳が眇められた。二人のじゃれあう姿に食い入るほど見つめていたニールは、ぽつりと零れた声ではたと我に還る。

「…ニール…」
「は…い?」
「まて。」
「………え?」

 内心何を言われるのかとどきどきしていたが、僅かに傾げられた首と刹那の浮かべるほほ笑みに言葉の意味を理解した。しかし、ライルの方が何のことだかわかっていない。その証拠に不思議そうな表情で首を傾げている。

「いい子に躾けただろう?俺が『よし』というまで『まて』だ。」
「あー…やっぱ『ソレ』?」
「出来るだろう?」
「はいはい、お利口な犬はご主人の言いつけを守れますよ。」

 苦笑を浮かべるニールと綺麗なほほ笑みを讃える刹那を見比べ、ライルは関心したように頷いた。二人の間の状況が理解出来たのだ。

「へぇ…刹那の飼い犬になったんだ?」
「まぁね?」
「で。きっちり躾けられた、と。」
「そりゃもう…オイタしたらどんな風にお仕置きされるかもばっちり分かるくらいにね。」
「それはそれは…魅力的な…」
「…ライルも躾けて欲しいのか?」

 いかにも興味津々な様子のライルを見上げて刹那がこてん、と首を傾げる。

「んー?俺はまた今度で。」
「遠慮しなくていいと思うぞ?」
「あぁ、きっちり躾けてやる。」
「うん、まぁそれもいいんだけど。俺としては昨日の分が先に欲しいわけよ。」
「そうか。」
「逃げたな?」
「逃げてねーよ。」

 茶々を入れてくるニールにライルが余計なこと言うな、とばかりに手を振ってみせた。訝しげな表情をするニールとそっぽ向いたライル…本音を漏らすならば女王様な刹那も見てみたいところだ。けれどさっき刹那に言った通りまずは昨日の穴埋めからさせてもらいたい。それから…刹那には悪いけれど…ニールに対する苛立ちの発散も手伝ってもらうつもりだ。なぜなら…

「現在進行形で『お預け』させられてるからさ。」



 以前にも…思ったことではある。
自分の嫁(俺の猫)が他の男に犯される場面に居合わせるなど…
常識で考えればありえないことである。
たとえその男が…自らと瓜二つであっても…
自分以外の『男』には違いない。

 けれど…
現に『そういう状況』が繰り広げられているのを拝めるというのは…
人徳か?世界が平和なのか?自身が流されやすいからなのか?

 …それとも…
嫁(俺の猫 兼 ご主人様)の胸が柔らか…
…じゃなくて…
胸がとてつもなく広いからか?

 …もしくは…
嫁(俺の猫 兼 ご主人様 兼 女王様)の躾が上手なのか…
躾っていうか…飼い慣らし方?

 まぁなんにせよ…
目の前で体をくねらせて身悶える黒猫(嫁)は…
めっちゃくちゃエロいっス!
俺の息子さん大興奮でぎっちぎちっス!
頭の中は出撃シークエンスに突入してるッス!!



「あっ…んっ!」

 鼻にかかる甘い声にニールの肩がぴくりと跳ねる。目の前で繰り広げられる…自分の為だけのAVに瞬きを忘れるほど魅入ってしまっていた。ついでに頭の中は理性を狂わせながら冷静さをなくさないようにと色々無駄に考え込んでいる。けれど、艶やかな音色で妖艶な四肢が踊るたびに思わず舌舐め擦りをしてのど仏を上下させてしまっていた。

「んッ…んぁ、あっ!」

 高い位置の方が見やすいということで、場所を交代したニールは先ほどまで2人が座っていた地面になぜか正座をして座っている。従順…と言えば聞こえはいいが…本当に犬のようだ、とライルは内心苦笑いを漏らした。空けてもらった丸太に腰掛けて膝の上に刹那を座らせると容赦なく足を割り開かせる。椅子の肘掛に足を乗せる要領で己の足と絡ませると、丸見えになることを理解した刹那が恥ずかしげにもじもじとパーカーの裾を引っ張る。もちろんやるだけ無駄ではあるが、その仕草が普段見れない可愛さを演出していてさらに興奮を煽られた。

「あふっ…ぁあんっ…」

 自らの胸を抱えるように腕を体に回した刹那は、大量の花弁が散る躯を外気に晒していた。ファスナーをほとんど開いた布の隙間から肩を肌蹴させ、腰元にたぶつかせてある。黒いパーカーが刹那の肌色を引き立たせ、部分的に隠された部分とあられもなく晒された部分のギャップが非常に厭らしい。

「ぁんっ…んっ、ふぅんっ…!」

 弾け出た豊満な胸を下から持ち上げるように指を這わせ、搾り出すように揉み込む。時折強く食い込む指先に感じているのか、ぷくりと尖り始めた赤い実をぐりぐりと押し込まれた。胸の中に食い込む指先を揺らされると蜂蜜色の乳房が弾み、爪先が実を引っ掻いては刹那の口から甘い啼き声を奏でている。

「ひぁっ…んぅ…」

 時折弾かれるようにして指先が胸から飛び出してくると、刹那が一際大きく啼き上げて躯を揺らす。仰け反る喉に舌を這わされてイヤイヤと首を振る様も厭らしく写った。

「あぁ…ん…」

 ぼんやりと開いた視界の中に碧の煌きが見える。何か…と考えずともすぐに分かる『獣の瞳』はただただじっと獲物を見据えていた。その視線がまるで躯を撫で回すようにすら感じられ、少しでも逃げようと後ろの男の首に額を寄り添わせる。

「っふ…んぅ…」

 それをどう捉えられたのか…喉をさらに仰け反らされて唇を奪われた。顎を掴みあげた手が首をさわり…と撫で、胸を嬲っていた指が熟した実をもぎ取るように摘み上げる。釣り下げられるようにして上げられた乳房はそのまま揺さぶられてさらなる快感をもたらした。

「ふぁ…あぁんッ…」
「…いつ嬲ってもえっちな胸だな?刹那?」
「あぁっ…やぁっ」
「そんなにヨがって…摘まみ上げられるの好きだな?」
「ちがっ…ぁあんっ!」
「違わないだろ?両方摘まれた方がイイ声出てんじゃん。」
「ッ…やぁ…」

 言葉の通り、もう片方の実も摘むと四肢が大きく身悶える。口では否と答えるが、素直な躯は隠しようもなかった。左右をぶつけるように揺さぶると摘まれた実がじんじんとするのか、引き上げられるように背が仰け反る。ぴんと伸びた爪先と、握り締められたパーカーが刹那の快感の度合いを顕著に物語っていた。

「兄さんにもいっぱい嬲ってもらったんだろ?」
「あ…ぅ…」
「薄ーく縄の痕残ってるじゃん。」
「ぅ…ん?」
「こうやって縛り上げられて…いっぱい舐めてもらった?」
「はぁっん!」

 開放された乳房にはまたすぐに手が伸ばされ、付け根を縛り上げるように長い指が絡みつく。ぷるりと揺れる先で存在を主張する実が一際目立っていた。

「この美味しそうな実…舌でねっとり舐めて貰ったんだろ?」
「…ぁう…」
「歯で齧られたりもした?」
「んんっ…ぅ…」

 器用な指が根元を絞り上げたまま滑らかな曲線を指先でなぞりまわる。徐々に、追い詰めるように先端へと這い上がっていき、コリコリと音がするのではないかと思うほど捏ね回した。ぞくぞくと走る悪寒にも似た甘い疼きに、眉を寄せて身悶える。

「それともこうやって…弾かれた?」
「ひあっ!あっ、んんっ!」

 そろりと伸びた指が硬い実をぴしりと弾く。一度弾いただけだというのに、刹那の躯は雷にでも打たれた様に跳ねた。続けざまにしつこく弾き続けると、差し出したい躯の本能と逃げたい理性がせめぎ合いを見せ、淫らに四肢をくねらせる。休む暇もなく攻め立てられた胸がじんじんと痺れ、荒い呼吸に酸素を求めて口が開いたままになっていった。


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