柔らかく唇を食み、息苦しさから僅かに開かれた淵から舌を忍び込ませる。舌先がざらりとした、自分とは別の肉の感触を捕えた。これが承太郎の舌、と感激しながら突いたり撫でたりしているとそろりと動いて絡まってきた。擦り寄るように絡まり、同じようにしようとすればするりと逃げていく。鬼ごっこでもしているような錯覚に陥りながらも真似をしていると、緩く歯を立てられてびくっと体が跳ねた。驚いて見開いた視界では承太郎の閉じた瞼と長い睫が見える。
睫長いなぁ……と思っていると、ふるりと震えてゆっくり開かれる。すると、ふ、と細められた。どうやら拙い舌の動きに余裕があるようだ。
「(そりゃ経験は雲泥の差ですけどっ!)」
むっとしつつも歯列をなぞり、舌を撫でると、ちゅ、と音を立てて離れる。ようやく解放され、小さく息を吐き出す承太郎の首に狙いを定めると首筋に顔を埋めて歯を立てた。
「んっ」
零れ落ちる声。けれど甘いというには少々違う響きを持ったその声に仗助は代わりに舌を這わせる。唇で柔らかく肌を食み、浮き出る筋をなぞるように舌を動かした。すると今度は鼻にかかった声になる。
舐める方が感じるのか、と勝手に結論付けるとあちこちへ舌を這わせ始めた。首筋を滑りて顎を舐めあげて、浮き出た喉仏をなぞり鎖骨へと巡る。
「……おい……」
「ん?なんスか?」
「……それ、楽しいか?」
何重にも重ねたシルクのような滑らかな肌触りが気持ちよくてあちこち撫でていたのだが、呼吸の度に上下する動きと、とくとくと脈打つ音に引かれて胸元に留まったままだった。手に伝わる温度を撫で広げる動きを繰り返し、降りてきた唇が胸筋の間を伝う。思った以上のしっとりとしたさわり心地に夢中になっていたら、承太郎から訝しげな声が発せられた。
「気持ち悪いっスか?」
「いや、どうとも言えないが……女と違って柔らかくもないからつまらんだろう?」
「ん〜……そうっスかね?かなり触り心地良いんで飽きないんスけど」
「……そうかよ」
男としては複雑なのだろうが、腹を括った後だからかそれ以上は突っ込まれなかった。上げた顔を再び白い肌に伏せて仗助はふと考える。承太郎の気持ちよさそうな表情とはどういう顔なのだろうか?
ちらりと見上げても直視するには耐えられないのか、片腕が目元を覆っている。唇の下で上下する胸も特に呼吸が乱れた様子はない。
「(承太郎さんの気持ちいいとこって?)」
所謂性感帯がどこかにあるのか、と探り始めた。手のひら全体を使っていたのを、指先だけにしてみて今楽しんでいた胸を行き来してみる。すると微かにぴくりと跳ねる箇所を見つけた。右側を指で探り、もう片方には唇を這わせる。徐々に熱を上げてきた肌の感触に口角が上がっていった。
「……っふ……」
躯の芯が震えて喉から詰まるような息が吐き出される。先ほどまでと違う触り方が肌の上がざわめく様な感覚を伝えてきた。曖昧に触れる指先が肌がぴりぴりとするほど敏感にしていく。とっとと別の場所に移れ、と心の中で叫んでみるが伝わることもなく。それどころかざわめく肌に固くなってきた胸の飾りにまで迫ってきた。
「ッ!」
「!?」
爪先で、つ、と触れると躯がびくりと跳ねて驚いた。痛かったとか?と不思議に思い顔を見上げてみるも腕で覆い隠されていて分からなかった。そんなに強く触ったつもりはないのだが、今度は指の腹で撫でるようにするとまた跳ねる。
「(これは……感じてる?)」
指で執拗に撫で擦ると腰が浮くようにぴくぴくと小さく跳ね続けた。しっかりと噛み絞められている唇で肝心の声が聞こえないのは残念だが。ともかく、感じてくれていることに気を良くした仗助は空いてる方の胸に唇を寄せた。
「んっ……く……!」
舐るように舌を這わせると鼻にかかった甘い吐息が零される。その音に恥入ったのか、小さく息を詰める声も聞こえた。
「……っは……ぅ……」
胸を執拗に嬲ってきた動きがようやく別の場所へと移動していき、震える呼気を吐き出して腕を強く顔に押し付ける。仗助の指が肌を這い回る度にむずむずとした感覚が広がるようになり、その感覚を振り払うように身を捩れば執拗に触れられた。その指先が徐々に際どい位置まで迫ってくる。太腿の裏を撫で上げ、内腿をなぞり足の付け根をぐっと押さえてきた。押さえつける指はそのまま茂みを掻き分け、前を握りこんでくる。
「!!」
仗助の手に握られた己の一部に動揺が隠せなかった。今触られたところだというのに、そこはすでに形を変え、蜜を滲ませている。先端を撫でてくる指に蜜は量を増やしていった。滴る蜜を塗りこめるように扱かれると腰の奥がさらに熱を上げ、呼気が荒くなる。
「ちょこっとだけ、失礼しますね」
「?」
我慢が利かないと言わんばかりの上擦った声が断わりを入れてきた。何かするのか?と内心首を傾げていると、仗助の指の他に熱い塊が擦り寄せられてぞくっと背筋が震える。しかもそのまま一緒に擦り上げてきた。
「ぅ……くぅっ……!」
「は、これ、かなり気持ちいいっスね」
ずるずると擦りつけられる相手の熱に背筋がぞくぞくと震えた。みっともない声が出ないようにと食いしばるのにちょっと油断をすればすぐに溢れそうになる。思考が霞み始め何も考えられなくなり始めた頃、握り込まれた芯が離された。そのまま中途半端に昂ぶらされた前が放置される。乱れた呼吸を隠すことも出来ず力の入らない躯を投げ出すようにくったりと横たわった。すると荒い呼気が近づき頬に唇を押し付けると耳元にも口付けてくる。
「承太郎さん、うつ伏せてください」
「ん……」
ぼんやりとする頭で特に何も考えずにうつぶせになる。前身にあたるシーツが冷たくて心地いい。ふわふわとした感覚に瞳を細めていると肩の痣に唇が寄せられた。そのまま背骨をなぞり、肩甲骨を包み込むように撫でられて触れてくる手の感覚にまた気持ち良さを覚える。徐々に下りていく手が両の尻を掴むと普段晒されることのない部分の肌が外気に触れてぶるりと震えた。
「じゃ、慣らしますね」
「……慣らす?」
「え?だって慣らさないと入んないっスよ?」
肩越しに振り向いた顔が驚いていたので、こちらも驚いてしまう。
承太郎の性癖は至ってノーマルなものであって、もちろん同性でのセックスなど知るわけがない。ともにエジプトを旅した『変態』なら詳しかったかもしれないが、興味だって全くないので聞くだの、話をするだのといったことをもちろんするわけもなく。辛うじて知っているとしたら無理矢理ねじ込むことくらいだろう。
「大丈夫っスよ!ゆっくりしますから!」
「……その言い方もどうかと思うぜ」
思わず振り向いた顔を再びクッションの中へと戻して、これから与えられるであろう異物感と不快感に耐える姿勢を取る。なるだけ落ち着けるようにと深呼吸を繰り返していると何かを捻る音が聞こえた。
「ちょっとだけ待ってくださいね。ローション温めますんで」
その言葉に、このあたりは女性相手と変わらないんだな、と変に感心してしまった。
それにしても……と承太郎は深くクッションに顔を埋める。待ってる間に聞こえる僅かな音が耳についた。手に垂らしたローションを擦り合わせて早く温めようとしているのだろうけれど、くちくち、と聞こえる音が非常にいたたまれない。うつ伏せになって本当によかった、と思ってしまう。
心の中で気を反らす為の雑念に浸っていると背中に温かい肌が覆いかぶさってきた。それにほんの少し顔を上げると耳に唇が寄せられる。
「触りますね」
「ん」
いちいち聞いてくるな!と怒鳴りたいところをぐっと堪えて、肉の隙間に滑り込んできたぬるぬるの指に息をのむ。
突き立てられるのかと構えていたが、指はそのまま口の周りを撫で、ひだの隙間にまでローションを塗り込むように撫でつけてきた。むず痒いような違和感に意図せず腰が揺らぐ。指が不意に動きを止め、詰めていた息を吐き出すと、ぬぶ、と潜り込んできた。
「っ……ふ……」
ぐち、と耳を覆いたくなる様な音が聞こえてくる。けれどローションのおかげか、過去に経験したような痛みは感じられなかった。ぬるる、と滑り割り入ってくる指の感覚に項が総毛立つような異物感ばかりが感じられる。それでも歯を食いしばり小さく抜き差しする指の感覚に耐えた。
「っ……じょう、すけ……?」
ずっと続くと思っていた不快感はじわりと額に滲み出て来た汗に変化を見せた。確かに入っているという感覚はあるのだが、ぬくぬくと動く指の動きに背筋を走り抜ける感覚を拾い始める。指が触れた場所がじわじわと熱く、もどかしさに腰が揺れた。理解できない変化に名を呼べば嬉しそうな声が返ってくる。
「あ、効いてきました?」
「何っ……使った?」
「ちょこーっとだけ特殊なやつっス」
「ッ!?てめ!!」
「だっ、だって痛がるの見たくないですもん!」
「くっそ……!」
なんとか抗ってやろうと思うのに、シーツを手繰り寄せるだけで精いっぱいで躯へ思うように力が入らない。特に指が抜けていく瞬間は全身がカタカタと小さく震えてしまっていた。しかも逃れようとしたことが裏目に出たらしく、膝を立てたせいで四つん這い状態になってしまい、力の抜けた上体が下がっている為に腰だけが高く上がっている姿勢になってしまう。この体勢はまずい、と膝を崩そうとしたがそれより先に仗助が覆いかぶさり腰を引きよせてしまった。
「あれ?もしかして結構気持ちいいです?」
「ん、な、わけっ」
「そうっスか??」
「ッん!く、ぅ!」
「ほら、二本目もすんなり入りましたよ?」
口を広げる圧迫感が強くなり引き締まる中をぬめりによって深く突き進んでくる。咄嗟にクッションへと顔を埋めたおかげであられもない声を塞ぐ事が出来たが、その代わりに跳ねた腰が仗助の腹へ擦り寄せることになった。
「承太郎さん……今、すっげぇえろいっスよ」
「るっ……せ!」
赤く染まった耳を食み囁きかければ指がきゅっと締め付けられる。その顕著な反応に喉がごくりと鳴った。本能としては早くこの狭い穴に突っ込みたいところだが、普段の涼しげな表情からは予想も出来ない淫らな姿がもっと嬲ってみたい欲を掻き立てる。それに指が二本も入ったので気持ちいいとよく聞く前立腺を探してみたい。もっと乱れるのかな?と期待半分、探し出せるかどうかの不安が半分。好奇心旺盛な少年は迷うことなく前者を選び取った。
「っうぅ!!」
指を回してみると内壁が擦れたのだろう、くぐもった声が上がる。宥めるように汗を滲ませる背中に舌を這わせて内壁を探るように撫で回した。指の付け根まで埋め込んで届く範囲で奥の方を掻いてみるとぴくぴくっと腰が跳ねて腹に擦りつけてくる。気持ちよさ気な反応ではあるが、ネットで読んだ耐え難いほどの快感とは違うように見えた。滑りが悪くなってきた口に追加のローションを指伝いに流し込むと冷たさに身を捩られる。それに意を介さず、塗り広げるように指を回せばまたくぐもった声が発せられた。
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