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『初心者クエスト:他人のために』




   ≪6≫

 少女に種付けを終えたオクトパストンはその場に座り込んで、満足そうに腹をぼりぼりと掻き毟った。
 女を征服し、余裕たっぷりに構える牡の姿そのものだ。見ているだけで、暴行を受けた少女の胸に屈辱感が湧いてくる。
(くやしい……でも、今のうちに逃げなきゃ……)
 いまだ絶頂の余波で動けないままではあったが、ネネルの頭の片隅に警報が鳴り響く。
 怪物が隙だらけとなった今しか、チャンスはない。
 体を起こそうと、上体を捩る。
「……うっ」
 全身が泥のように重い。それでも彼女は意識をこらして、手足を操ろうとした。
 足を持ち上げた途端に秘所から精液がドロドロと溢れ出す。下半身に力を入れるたびに、逆流した白い汚液が溢れ出てくるのだが、一向に止まる気配がない。その生臭い体液が汚されてしまった証拠となって、ネネルの清純な部分をいたく傷つけるのだった。
「う、うぅ……」
 唇を噛み締めて涙をこらえ、地面に手をつく。
 岩壁の近くに置いた荷物のそばまで、這いずるようにして進む。
(もうちょっと……あと、ちょっとで……)
 ほんのわずかに手を伸ばせば、手が届くところまで迫った。
 だが、その途端、ぐいと足首をつかまれる。
「ブガグー!」
 彼女の動きに気づいたオクトパストンが、腰の鞘から鋭い短刀を抜いた。
「くっ……!」
 ネネルは背をよじって手を伸ばすと、荷物からつき出ている笛を引き抜く。
 短刀が振り下ろされるのと、旋律があたりに響くのは同時だったろうか。
「ガルルッ──!」
 刃が足をかすめた瞬間、召喚されたケルビーがオクトパストンに飛びかかる。
 怪物の手がネネルのほっそりとした足首から離れた。
 その期を逃さず、彼女は荷物を手に取る。中から取り出した一冊の本を開き、記録状態で封じていたペットを実体化させて呼び戻す。少女のすぐ近くで、淡い光とともにコボルトが実体化する。
「ウルラク、ケルビー。そいつをやっつけて!」
 笛をひと吹きすると、二体の従者は果敢にオクトパストンに挑みかかった。
 炎の牙で足元を狙われ、隙が生じたところにコボルトが槍を突き込む。
 たちまち劣勢となった怪物はたじろぐ様子を見せ、じりじりと交替していく。
(あいつだけは許さないっ……)
 激情に身を任せたネネルも、戦いを繰り広げる一団を追って前に出った。
「ガウッ!」
「キエエッ、クキー!」
 吠え猛るケルビーの唸りに、コボルトの雄叫びが重なる。
 二匹の声に応じるように、オクトパストンも唸り声を放つ。ネネルも負けじと、声を枯らしてペットたちを励ました。
「ウルラク、がんばりなさい!」
「クケケーッ!」
 岩壁を背負った怪物の手から武器が落ちる。
 これで勝敗が決したかと思った、まさにその瞬間のことだった。
「あっ──!」
 あたりの洞窟から、黄色い巨体がわらわらと出てきたのだ。
(深追いしすぎた……!)
 すぐさま、きびすを返そうとするネネル。だが、退路にオクトパストンたちが立ちふさがり、逃げることもままならない。
 背後を見れば、主と同じく囲まれてしまった二匹の従者も、怪物に襲われていた。
 全身が傷だらけになったケルビーは、光となって消えていく。おそらく現世での力を失い、精霊の世界に返ったのだろう。一方コボルトは、情けない声を放ちながら一目散に逃げていく。
「そんな……」
 たった一人、怪物の群れの中に残されたネネルは愕然と声を震わせる。
 オクトパストンたちは彼女を包むように取り囲むと、轟くような喝采を放った。
 ほとんどが牡であるらしい。無数の足の間に、何本もの反り返った異形の男根がぶら下がっている。餌食となる少女を前にすでにいきり勃つものもあれば、涎をこぼす獣じみた先走りを穂先から垂らしたものまで、種々様々だ。
「あ、ああ……あ、あ……」
 無力なビーストテイマーは、歯をガチガチと震わせながらその場に立ちつくした。




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