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アルツ川の溺死体 |
ガブリエル・ヴィネ著 |
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〔初版〕 1998年
リヴェディション社 (ル・ファウエ)
叢書リヴポッシュ 7番 |
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Les Noyés de l'Arz / Gabriel Vinet
-Le Faouët : Liv'édition.
-(Liv'poche; 7).
-223p. -18 × 11cm. -1998. |
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「昔々、あちこちの川に沿って風車があって水が歌っていた…毎日がお祭りでな、ブルターニュの全土を水車が揺らしていたんだ…ライ麦、小麦を砕いてパン作り、大麦で家畜の餌作り、黒麦でビスケット…歯車が回る回る、歌いつづける…」 |
牧歌的な風景。川岸の水車に魅せられた老画家のジュリアンは建物を買い取って住み始める。全ての鍵を取り替え、自分で付け直したはずなのだが…不在中に誰かが入りこんでいる。何kが盗まれた訳ではないのだが…この二週間、香水と思われるエキゾチックな残り香が水車内に漂っていた。 |
水車内の臼が微かに移動していた。何か動かす手があるらしい。試行錯誤を重ねていると車のブレーキ音が聞こえた。トビィ警部だった。「ここから一キロ下流で女性の溺死体が見つかった」とのことだった。老画家と警部の二人三脚、二人は水車の地下に広がった洞窟を発見する… |
ブルターニュ地方の推理小説ブームが最ピークに達していた時期に発表された一作。地方出版社からの新作が「月に7、8冊」となり、文学フェスティヴァルに展示会、講演、サイン会、読書会など様々なイベントが催されています。この熱狂の渦中、職人技といえる高度な犯罪小説を次々と発表していたのがガブリエル・ヴィネでした。 |
生粋のブルトン人ではなく70才を越えてから処女作を公刊。50~70年代フル-ヴ・ノワール社と通じる作風、スパイ/戦争/幻想など幾つかの異ジャンルを交えながら完璧なエンターテイメント作品を構築してみせます。幾つか興味深い作品があるのですが、読んでいる時の面白さはこの『アルツ川』が格別、この後トビィ警部は別作品でも活躍していきます。 |
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