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2005年、ローリング・ストーン誌にバンドの写真が掲載されていた。腕を組んだドラマーが地面を見て笑っている。Tシャツ姿のベーシスト。レンズを見つめたキーボード奏者、金髪が額に垂れている。喫茶店の窓に背を預けたギタリスト。中央には歌姫のリタ・ケンパー。全メンバーが揃って写っている有名な写真だった。 |
07年8月、NYのライヴ中にリタは喉を掻き切って自殺。FBIの調査により、女の家の庭から20人を越える惨殺死体が発見される。 |
2009年。解散後もリタ・ケンパー事件を追い続けていた音楽ジャーナリスト、グレゴリーが交通事故で亡くなった。助手席にいた元ベーシストのロバートも死亡。「ありえない」とグレゴリーの妻マリーは首を振る。「夫は免許なんて持っていないのに」…夫のパソコンはハードディスクが空にされていた。誰かが陰で動いていた。「誰?」、女は一人問いかけを重ねながら調査を進めていく。 |
「リタの自殺は偽装だってさ」。疑いが強まっていく。噂が広まっていく。街は魔女狩りの様相を呈していた。 |
マリーは失踪していたキーボード奏者を発見。バンドの最期に何が起こっていたか聞く事が出来た。当時、楽屋裏に頻繁に足を運んでいた男がいた。リタの後見人ジョゼフだった。マリーの手に入れたデジタル映像がリタ、ジョゼフによる連続殺人事件を解き明かしていく… |
2002年9月公刊のセリ・ノワールは女性作家特集(「シェリ・ノワール」)で、四人の新人が腕を競いました。中でもこの『リタ・ケンパーを探して』の冷徹なロマンティスムは際立っていました。処女作でぎこちない展開(特に後半)も見られますが、自己破壊衝動を突き進んでいく勢いが勝っています。 |
不穏な重苦しさ、研ぎ澄まされた視線。ダウナーなゴシック・ノワールのBGMはナイン・インチ・ネイルズで。久しぶりにセリ・ノワールが時代とリンクしたなと嬉しくなりました。 |
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