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パリ、ラスパイユ通り。一文無しの三人組が知人のビストロを訪れる。「シャワー貸してくれる?」。冷たく断られた。腹いせにガラスを割り、椅子を粉々にしてしまう。遅れて警官が到着、惨状を前に「世も末だ」と首を振っていた。 |
もう一人の貧乏青年。ルイはフライパンで残り物のコーヒーを温めていた。 |
汚れたジーンズに穴だらけの上着。夜は地下鉄の駅構内で小銭集め。プライドなんて残ってはいなかった。ある日、髪を小綺麗に切りそろえたスーツの男が足を止める。「徴兵だ」。そう言って50ユーロ札を放りこんできた。 |
召集された職無しの四人組。特殊訓練を受けていく。銀行強盗のプロに生まれ変わる。綿密な打ち合わせ。決行当日、三発の銃声で客たちを黙らせる。ここまでは計画通りだったが…背後から銃声。別な男たちが乗りこんできて金を奪っていく。はめられたようだった。「人質」と一緒に銀行に閉じこめられたルイたち。ひとまず脱出を計る… |
…ここまでで最初の1/3くらい。包囲された銀行からの脱出場面が見事で息を呑みました。犯罪者、追跡者、黒幕の思惑が複雑に交錯、予想を次々と裏切っていくミラクルな展開。出版に至るまで監修者のタニア・カプロンが細かくチェックしたようで、原稿を何度も手直しさせられたというエピソードも伝わっています。 |
筋も良いですが人物の描き方も面白いです。不安定なソニアを支えるように黙々と付き従う忠義な野郎二人組がいて、この三人への距離を掴めずに当惑顔のルイがいます。四人の溜息、独白、息遣いが聞こえてきます。「銀行強盗失敗」の紋切型を現代感覚で蘇生させたクリスティアン・ルー処女作。
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