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引出しに一匹のカモノハシが |
パトリック・レナル著 |
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〔初版〕 1996年
ルピオット社 (ル・ムーラン・デュ・ヴィニヨ)
叢書 ゼブル 2番 |
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Un Ornithorynquedans le tiroir / Patrick Raynal.
-Le Moulin du Vigneau: Editions de la Loupiote.
-(Zèbres; 2).
-110p. -20 × 13cm. -1996. |
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皆が泣いている。心だけが冷めていく。トラックと正面衝突だったそうだ。父と母が事故で亡くなっていた。私はアフリカの戦地を離れ、葬式のために戻ってきた。旧友の司祭が責めるような目で見ている。喪服姿の女が近づいてきた。「落としましたよ」、そう言って封筒を渡してきた。指には大きな宝石が光っていた。封筒の中身は…カモノハシを写したポラロイド写真だった。 |
遺言状。全財産を施設に寄付する話になっていた。構わない。金目的で戻ってきたわけではない。アフリカに帰りたい、独り言をいいながら遺品を片付けている。 |
屋敷に「義理の弟」がやってきた。初耳だった。今更とはいえ弟が出来るのは悪くなかった。意気投合、父のジャガーで街を回ったが…誰かが細工していた。ブレーキの故障で大事故になりかけた。 |
狙われたのは私ではなかった。車の持主、父のはずだった。親の過去を洗い出していく。愛憎絡みあった夫婦関係。父親は私生児を生ませる度にカモノハシの人形を渡していたらしい…人形はあと幾つ残っているのか? |
1995年にセリ・ノワールが50周年を迎えます。作家が集まって記念連作長編(『金婚』)を完成させたのですが、第1章を引き受けたのがレナルでした。この短編のアイデアを膨らませて奇妙な題の作品に仕上げてきたのが本作。最後の落ちに若干の泣きが入っています。渋いな。 |
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