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            | こっそりとアパートに忍び込んだ。金を手に高飛びしたポーランの居所をようやく突き止めたのだ(ミントキャンディのおかげだった)。ポーランは引越の真最中、顔を真っ赤にしながら一人で洗濯機を運んでいた。銃を向けて男を狙う。一発の銃声…ハズレだった。今日は僕のラッキーデーじゃなかった。 | 
          
            | 「おやおや、クロブカ国王。ポーラン様を攻撃ですか?」 「近よるな!」
 「復讐罪、人間が動物と違うのはこれだね」
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            | ミントキャンディをボリボリ噛み砕きながら近づいてくる男。抱きかかえられ、浴槽に顔を押し付けられる。グググ… | 
          
            | 「お前が死んだら遺産を継ぐのは俺。契約ではそうなってたな。今日でお仕舞。悲しい事故が起こって俺様は金持ちになる。クロブカ国王は王衣で転倒、浴槽に転げ落ちて蓋が閉まる。機械が自動的にスタート。なんて劇的なドラマ…。疑う奴などいないはず」 | 
          
            | ここで死ぬのか…諦めかけた時、玄関から「手を離せ!」と叫ぶ声が聞こえた。サーカス界の英雄ゴム男だった。柔軟な体を自在に伸ばして逃道を塞ぐ。ポーランを射殺。助かった、と思ったのも束の間。ゴム男の狙いも(洗濯機に隠されていた)札束だった。またまた命を狙われるはめに。 | 
          
            | 「おっと、うまく筋が繋がった。この家で起こったドラマ。ポーランはうっかり「洗剤君」を呑みこんだ。お前は助けようとした。拳銃で「洗剤君」を吐き出させる。焦って撃ってしまった。ポーランは死んでしまう。絶望とパニック、お前も自殺。よもや警察も疑うまい」 | 
          
            | 今度こそダメだ…そう思った。でも神様は僕を見捨てなかった。「待って」と飛びこんできたのは愛しの鳥女だった… | 
          
            | ルピオット社をやっていたブロート氏の所にある日FAXでこの原稿が届いたそうです。即出版決定。90年代仏ノワール奇譚中の奇譚。ミジオによる笑撃デビュー作。最後まで笑いが止まりませんでした。 | 
          
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