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「お前さん…綺麗なネクタイを持っているか?」、上司から嫌味な質問があった。 |
特捜部に一通の招待状が届いていた。首都アルジェ。政界に強い影響力を持つ富豪マレクの息子が新居を完成させたそうである。命令とあれば仕方ない、ロブ警視は似合わないネクタイを締めてパーティに向かう。「使用人は別の入口だ」、意地悪を言われながらサロンに入ると財政界の大物たち、作家、億万長者が集まっていた。「私の知ってるアルジェリはこれじゃない」、ロブは豪邸を離れていく。 |
数日後マレクからの連絡があった。3週間前に一人娘のサブリヌが失踪。「慎重に」の条件で捜索を依頼された。 |
会員制クラブ「赤い冥府」。白煙で娼婦が蠢いていた。 |
交友関係を調べ上げていく。最後にサブリヌが目撃された時、女衒のアティが隣にいたそうだった。ロブはこの線で調査を進めていく。手錠をかけられ、足首を針金で縛られ、頭を撃ちぬかれた死体が一つ。散らかった脳味噌に蝿がたかっていた。 |
アティの姉は現在名前を変え、クラブ「赤い冥府」のオーナーとなっていた。以前このクラブで発生し、迷宮入りにされた銀行支配人の殺人事件。旧悪が戻ってくる。失踪事件は国家レベルのスキャンダルに発展する火種を孕んでいた。妨害が始まった。ロブの同僚セルジュが首を切られた姿で発見される… |
90年代仏ノワール屈指の傑作。原型となった『巨人マゴグ』は94年に書かれています。元々セリ・ノワールに持ちこまれた原稿は「ヴァイオレントすぎる」の理由で出版を見合わされ、ガリマール社からバレンヌ社に流れていきました。切り詰められた作品は『モリツリ』と改題されこの年の813大賞を獲得。完成度としては次作『白を重ねて』が上ですが、テロの時代が空気感として伝わってくる衝撃度は格別。 |
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