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南の犬 |
エルヴェ・ジャウアン著 |
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〔初版〕1987年
ドゥノエル社(パリ)
叢書「冷汗(シュウール・フロワッド)」
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Les Chiens du sud / Hervé Jaouen
-Paris : Editions Denoël.
-(Sueurs Froides).
-199p. -21 x 14cm. -1987.
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米南部の小さな町、大通りで停車したバスから白人の青年が下りてくる。フランスからの旅行客。マルボロをくわえたままバーに入っていく。名はアントワーヌ。大学商業科を卒業、マーケティングの資格を取って就職が決まっていた。このアメリカ旅行は最後の自由な時間。食べかけのホットドッグを鞄にしまい、黒人街に足を踏みいれていく。 |
タンゴが流れている。テーブルでラムに口をつける。隣には知り合ったばかりの女カイマン。手を広げて髪を撫でてきた。このままこの場所を離れられなくなるのではないか、そんな自問。音楽がいつの間にか止んでいるのにも気が付かなかった。 |
銃声が棚のグラスを割った。「黒人狩り!」、カイマンが腕の中に飛びこんできた。二人組の白人が空気銃を手にバーに乗り込んできていた。「こんなボロい建物は壊してしまえ!」、トヨタのピックアップトラックが建物の正面に突入してくる。悲鳴がひとつ。踊り子が一人足を潰されていた。 |
アントワーヌは女と一緒に階段の上に身を潜めていた。「旅行者に手を出しはしないだろう」と立ち上がる。勘違いだった。薬物で理性を失った二人組に何を話しても通じなかった。自分がこのまま射殺され、女が生きながらに火あぶりにされるとは思ってもいなかった… |
作品の舞台を初めて海外に据えた一作。敵意に満ちたディープ・サウスを描こうとしているのですが…空回りしています。普段描いているブルターニュの光景が圧倒的生々しさを備えているのに対し、『南の犬』はイメージで描きすぎた印象が強いです(主人公が「観光客」になってしまい世界の読みこみが甘くなっているのです)。全体のインパクトも弱くジャウアン作品としては傍系に留まっています。 |
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