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鏡を前に花嫁がポーズを取っている。田舎風の巻き毛が揺れていた。正装でやってきた父親。「たかが結婚式で面倒な」の本音は隠しておいた。娘の晴れ姿なのだから。半日後、まさかこの子の喪に服すとは思っていなかった。 |
ブルターニュの中心都市カンペール。駅前のカフェで茶を啜るカップル。首都から流れてきた二人組、麻薬ディーラーをだまして逃げてきた途中だった。女の指が伸びてくる。ジッパーを下ろす。ゆっくりとペニスが膨らんでいく。 |
「客がいる。見せてやろう」 |
離れたテーブルに座っていた三人組を挑発していく。大麻を回してやった。気分が良くなってくる。何でも出来そうな気分。ほら、車が一台近づいてきた。新郎新婦を拉致にかかる。 |
悲鳴が上がっている。全てをカメラで記録していった。花嫁を犯していく。茫然とした花婿。男を地面に押し倒す。肛門にペニスを捻りこんでいく。笑い声が響いている。花婿に銃を渡してやった。「ロシアンルーレット。知ってるな。引金を引いてみろ」。 |
1979年、地方銀行の一行員が十日間で完成させたデビュー作。原稿はアレクス・ヴァルーの目に留まり新叢書第1番として発表されました。フランスの文化がパンク/シチュアショニズムの衝撃で揺れていた時期、「ネオ・ポラール」の代表作として以後何度も版を重ねていくことになります。 |
悲劇の構成力、時制の処理、省略の感覚、視点の鋭さ…何をとっても興味深い一作。ポルノ?今は昔、仏ノワールが現実を鷲掴みにした一瞬は夢ではなかったと思います。 |
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